絶滅危惧種のための日本企業の活動:トヨタ自動車株式会社の例(ユースレポート)
COP4日目の夜、日本企業のトヨタ自動車株式会社とIUCNの共催による絶滅危惧種のための活動に関するサイドイベントに出席しました。
冒頭では、ジェーン氏(IUCN世界生物多様グループ部長)によるIUCNレッドリストに関する簡単なプレゼンがなされ、生物の名前を入力すると名称・写真・生息地域・その他の情報が検索することのできるWEBサイトの紹介をされていました。サイドイベント中にも実際にどのようなページになっているのかについての説明がありました。
種名を検索すると詳細情報が得られる
続く饗庭氏(トヨタ自動車株式会社)のプレゼンでは、会社概要を説明した後、車をはじめとする製品を「TOYOTA ENVIRONMENTAL CHALLENGE 2050(トヨタ環境チャレンジ2050)」のもと製造しているという紹介がありました。トヨタは社会に貢献しており、この取り組みでは、CO2の排出を0にすることや環境汚染物質を出さないなどの環境に配慮した6つの「挑戦」を行っています。中でも6つめの取り組みである「自然と調和した未来社会の設立」では、IUCNや環境NGOと協働し、人々の生物多様性への気づきを上昇させるための活動を第6回IUCN-WCCやCOP13などの国際会議や、気づきを強調したタイでの生物多様性のイベントにて実施したとのことでした。
トヨタの取り組みの紹介
その後はタイ環境省のウィジャルン氏によるビデオメッセージと関連する動画を流し、生物多様性保全の重要性が述べられました。タイでは、IUCNおよびトヨタからの援助のもと「B-DNA(Bio-Diversity Network Alliance)」という政府・NGO・学者などから構成されたプラットフォームを構築したとのことでした。また、エジプト環境省のシマ氏からは、エジプトが環境に関するデータや知識を多く持っていることが言及されました。バードライフインターナショナルのメラニエ氏、コンサベーションインターナショナルのリナ氏は、両者ともにプレゼンおよびビデオを用いて保護地域や種の保全の重要性について訴えていました。また、最後のプレゼンターであったCBD事務局のアレキサンダー氏からはトヨタのように企業などのビジネスセクターが参画(engagement)していく重要性について語られました。
各プレゼン終了後、ジェーン氏の進行のもとパネルディスカッションが行われ、聴衆からの質問も受け付けつけるなど、活発な議論が展開されました。ポスト2020目標に向けてどのようにスケールアップをしていくのか、という質問では饗庭氏が「トヨタは多くの成功体験があり、経団連自然保護協議会などとその成功体験を共有することが可能である」との回答をしていました。また、饗庭氏とアレキサンダー氏はサプライチェーンも自然全体のことを考える必要があると言及しました。フロアのカメルーンの方からは自分たちもトヨタと協働できないかと質問しており、すぐに決めることはできないものの概ね前向きな回答が饗庭氏からなされていました。また、なぜトヨタが自然環境保全に関する活動の支援を行っているのか問われた際には、トヨタには、より多くの科学的なデータがあり、これらのデータの力は保全などをする地域において重要であるためだという回答がなされていました。
最後にはプレゼンターや参加者がともに写真撮影を行うなどし、和気藹々とした様子で幕を閉じました。
生物多様性わかものネットワーク/IUCN-J 矢動丸琴子
(千葉大学大学院/園芸学研究科/環境健康学領域/博士後期1年)