COP14 決定事項ーパート1 

COP14第1週目の午後に開かれた本会議で採択された決定(11月22日採択分)は下記の通りです。

・地球規模生物多様性概況第5版 *

・次回COPの開催地について *

・健康と生物多様性 *

・愛知ターゲットの現状 *

・ジェンダー行動計画 *

・遵守メカニズム(名古屋議定書)

・議定書のレビューとアセスメント(名古屋議定書)

*    は、以下で、決定内容を簡単に紹介します。

 

地球規模生物多様性概況

(SBIと変更がありません)

GBOが愛知ターゲットをフォローアップする基礎の文書であるという認識を再確認し、2020年までのタイムスケジュールなどを意識しつつ、

事務局に対して、

‐政策決定者向けサマリーもふくめてGBO5を準備すること、

‐タイムテーブルを主要な関係者と共有すること、

‐準備にあたってIPBESやFAOなどの国際団体との協働を継続すること

の重要性を強調しました。

締約国に対しては、

‐オープンで、透明性のある形で、生物多様性のトレンドや今後の予測、危機、主流化を含む実施状況について、信頼できるデータやデータのアップデートを行うこと、

‐GBO5やローカル生物多様性概況第2版も含めて、作成のための資金提供を呼びかけました。

 

GBO5の詳細な作成スケジュールもまとまりました。

簡単に紹介すると、2018年12月までに各国がナショナルレポートを提出、2019年5月19日のIPBESの評価書を踏まえながら、2019年5月から8月にかけてゼロドラフトを作成、レビュー、改定を続け、2020年5月のSBSTTA24-SBI3で発表。その結果を受けた締約国の対応をCOP15の決定としてまとめる、というスケジュールとなっています。

 

次回COPの開催地

(SBIと変更がありません)

COP15は2020年中国、COP16は2022年の第4四半期(10月から12月の間)トルコでの開催を確認しました。

また、COP17のホストを東中央ヨーロッパ諸国に呼びかけること、COP17以降のCOPの開き方(開催間隔も含む)についても、準備会合(SBI)で検討することとしています。

 

生物多様性と健康

(SBIの結果とほとんど変更がありません)

生物多様性の損失を止め、生物多様性戦略計画と愛知目標の達成、持続可能な開発のための2030アジェンダとSDGsを含む様々な他国協定と国際的プロセスの目標を達成することを強調しました。
生物多様性の損失を止め、生物多様性戦略計画と愛知目標の達成、持続可能な開発のための2030アジェンダとSDGsを含む様々な他国協定と国際的プロセスの目標を達成することを強調しました。

また、健康分野で実施される持続可能な消費と生産に関する優良事例を促進し強化することとし、CBDと世界保健機関(WHO)の共同作業プログラムに基づく活動の進展に関する定期的な報告メカニズムの確立を検討することとしました。

それらに加え、生物多様性の保全・持続可能な利用に対する政策やツールについて生物多様性を主流化する機会があることを認識し、第71回世界保健機関総会による人の健康と生物多様性の相互関係の考察を歓迎しました。

締約国に対しては
・SDGsに沿う形で、生物多様性の主流化と、生物多様性を組み込んだワンヘルスアプローチや他の全体的な(Holistic)アプローチ、計画、プログラムの開発を視野に、生物多様性の保全や持続可能な利用の公衆衛生上の価値についてのコミュニケーション・普及・啓発ツールの開発を奨励すること、
・健康セクターへの主流化を促進する効果的なインセンティブの提供や優良事例の促進を奨励すること、を呼びかけました。
WHOに対しても引続きCBDと協力した共同事業の推進を呼びかけました。

CBD事務局に対しては、
・生物多様性と健康に関する統合された科学ベースの指標および進捗度測定ツールの開発
・健康セクターの生物多様性の主流化に関するメッセージング・アプローチの開発
・生物多様性と健康の主流化において締約国をさらに支援するために国家政策、戦略、プログラム、One Healthアプローチや他の全体的な(Holistic)アプローチへの配慮を向上する
等を要請し、また、
COP15の前のSBSTTA23とSBIで進捗を報告することを事務局に要請しました。

 

愛知ターゲットの現状と実施推進のための選択肢

愛知ターゲットをもとに各国が目標をつくったことを認識しつつ、各国がそれぞれの国家戦略等で設定した目標をした結果、ほとんどの愛知目標について、進展が限定的であり、いくつかは全く進展がない、また、わずかな国しか国家戦略を政府全体の目標にしていない(日本はそのわずかな国と一つ)、わずかな国しか資源動員戦略やコミュニケーション・普及啓発戦略あるいは能力養成戦略を持っていない、わずかな国しか国家戦略が主流化され、横断的な政策や計画、貧困撲滅計画を持っていないことに注目すべきであるとしました。

締約国に対して、
戦略計画実施のための取り組みを大きく加速させ、実施と目標とのギャップを埋める事を強く求める
実施のために先住民地域共同体、市民団体、女性グループや他のステークホルダーとの協力を強化することを奨励する
愛知ターゲット達成のためのパートナーシップやアライアンス組織に参画したり、貢献すること
地域アセスメント、科学的な情報、愛知ターゲットの指標などを活用すること
生態系サービス・機能の評価を行うこと
などを求めました。

 

2020年の愛知ターゲットのために緊急の行動をとることを強く呼びかけることとしました。

ターゲット1:持続可能な消費のための態度変容の促進手法としての教育や普及啓発の戦略の開発
ターゲット3:生物多様性の劣化につながる負の誘導措置の撤廃、改善や正の効果をもつ誘導措置の
ターゲット5:森林全体の年間減少率は半減したものの、地域レベルの森林伐採や劣化への取り組み強化、または、他の生態系の劣化にさらに取り組む
ターゲット6:世界の漁業の持続可能性の減少を反転させるための取り組み強化
ターゲット7:土壌の生物多様性の保全と持続可能な利用、持続可能な森林管理や木材貿易の持続可能性の改善強化とモニタリングの促進
ターゲット8:汚染の削減のための行動の強化
ターゲット9:外来生物の拡大防止とすでに定着した種の撲滅
ターゲット10:生きたサンゴの世界的な減少取り組み強化
ターゲット11と12:保護地域が全生態系をカバーできていないことに注目し、保護地域の管理効果評価の加速、、生物多様性の重要な場所(AZEなど)の保護区化やOECMによる保全と管理強化
ターゲット13:保全された食料や農業に関する植物遺伝資源の数が増加していることに注目しつつ、遺伝的多様性の減少の回避のための行動強化、遺伝的多様性の高い地域での生息域内保全の推進
ターゲット14,15:レジリエンス増大のための汎アフリカ生態系復元アクションアジェンダに注目しつつ、生態系復元のための短期行動計画の実施、
ターゲット18:伝統的知識の保護と尊重に関する取り組み強化、とりわけ、慣習的利用の保護と尊重
ターゲット19:生物多様性に関するデータや情報へのオープンアクセスのさらなる推進・促進
などの行動が呼びかけました。

付属書として、IPBES地域アセスメントから特定された必要な取り組み事例が列記されており、その活用が締約国や関係諸機関に呼びかけました。

 

ジェンダーアクションプラン

ジェンダーアクションプラン(2015-2020)の中間チェックが行われ、行動計画の進展を歓迎しつつも、ジェンダーの視点をポスト2020枠組みでも検討すること、ジェンダーアクションプランの成果を第5版地球規模生物多様性概況や第2版地域生物多様性概況などの作成時も見直すことを求めました。

 

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会場入り口の風景

道家哲平(日本自然保護協会/IUCN-J事務局長)

*今回の情報収集は、環境再生保全機構地球環境基金の助成を受けて実施します。