第2回ポスト2020作業部会の個人的な所感
第2回ポスト2020作業部会終了から3週間以上が経ってしまいましたが、今回の会議に参加した感想や所感をまとめたいと思います。
第2回ポスト2020作業部会全体の所感
はじめて参加した2018年のSBSTTA22/SBI2から起算して、今回で4度目の生物多様性条約関連会合への参加でしたが、回を増すごとにどんどんスケジュールがきつくなっていっている気がしています。夜遅くまでポスト2020枠組の議論を展開することは、今回に限ったことではありませんが、第2回ポスト2020作業部会は初めからイブニングセッション(といっても19:30~終了時刻未定)がスケジュールに組み込まれており、正直驚きました。
私は、(コロナウイルスではありませんが)もともとあまり良くなかった体調の関係で全日・全時間帯に出席することはできませんでした。
変化しているのは過酷なスケジュールのみではなく、オブザーバーの扱いもだと感じています。特に、先住民地域共同体、女性グループ、ユースの参画の重要性に加え、権利に基づくアプローチの強調など、「みんなで作ってみんなでやるんだ」というオブザーバーの主張が、回を重ねるごとに強まっていっている印象を受けています。そしてそれを締約国も受け入れつつあり、少しずつ、でも確実にこれまでから変化してきている部分だと思っています。
さて、今回の第2回ポスト2020作業部会では、1月13日に共同議長から発表された「ゼロドラフト」を基に、4つのコンタクトグループにて、それぞれのターゲットに対する意見出しを行うという方式がとられました。これまでの経験から、コンタクトグループは(場合によってはプレナリーと)複数同時に開催し、関心の高い締約国同士や、もめている部分について集中的に話し合うための作業部会だと理解していたのですが、今回のコンタクトグループは1つも同時開催はせず、締約国もほとんどの国が参加していたため、進行者と翻訳者不在以外、プレナリーと何が違うのか正直よくわかっていませんでした。一緒に参加していたNGOの方から、プレナリーと異なり、(正式な手続きをふまないため)議事録に残らず非公式に発言ができる、という要素も大きいのではないかという見解をお聞きしました。他条約では、コンタクトグループにオブザーバーの参加は認められないことも多いそうで、コンタクトグループ内でオブザーバーに発言権も与えるという方式は、CBDの特徴的な部分の1つなのだと理解しました。
多くの意見を聞くことは重要、意見出しの段階、まだ交渉のフェーズではないことは理解していますが、10月に控えたCOP15まであと半年強という期間の中で、このままの進捗でポスト2020目標が無事に決まるのか少し心配な部分があります。たとえば、指標の中身についてはSBSTTAで、実施についてはSBIで、といろいろ提起する会議体に送って(言い方を変えれば先延ばし)いるにもかかわらず、特別作業部会の時間もぎりぎりまで使って議論をしている現状。また、テーマ別WSは結果報告をする議題はあるけれども、(次回の文書に組み込まれるとしても)テーマ別WSの結果が現在の意見出しでどこまで考慮されているのかもあまりよくわからない、最終的にどうまとめていくのか、と私が心配する必要ないかもしれないですが、いろいろと気になるところがあるのも事実です。
ユース関連の内容
上述した通り、ユース参画の歓迎度はどんどん上がってきているように感じました。GYBNがこれまでの10年間で積み上げてきた努力の成果なのだと思いますが、CBDの会議体の中では、ユースはいて当たり前の存在になっているのだと、感じています。となると、「ユースの参画を認めてください」というフェーズはもう終わっており、どうしたいのか、何を主張したいのか、ユースとしてのプライオリティはなんなのか、を示していくフェーズになってきています。最近では現状も変化してきていますが、日本国内では「ユースの参画を認めてください」のフェーズだと感じることも多いです。そんな姿勢ではだめなことを、大人やユースなど関係なく、あらゆる立場のすべての年代の人が理解しなければ、日本が国際社会から遅れをとる要因の1つにもなるのではないかと感じてしまいました。
GYBNはポジションペーパーをリーフレットにまとめ、配布し、ポジションを示していました。IUCNのミーティングの際に、そのリーフレットをIUCNの生物多様性保全グループ局長のジェーン氏にもお渡ししたところ、「これはとてもよくできている」とほめてくださっていました。また、GYBNの優先項目の1つである「Transformative Education(変革的な教育)」については、コンタクトグループでのGYBNの提言内容をほぼほぼ採用した内容(GYBNの提案と同内容)をメキシコが発言していました(ロビーイングもしたようでしたが)。メキシコの発言を聞いて、特に提言文を読み上げたシンガポールのユースはとても喜んでいました。
ユースの提言内容については、既に記事にまとめていますので、そちらをご覧ください。
個人的な関心事項・印象的だった内容
私はコミュニケーションの分野への関心がとても高いのですが、そこに少し関連して、コンタクトグループ内で個人的に印象的な場面がありました。
ポスト2020枠組の内容の議論とは直接関係がないかもしれませんが、コンタクトグループ1の際に発言を許可されたカメルーンの方がフランス語で発言を読み上げ、英語で話すように注意を受けました。先にも述べたとおり、コンタクトグループには翻訳者(通訳)がいないためです。カメルーンの方は、「できるかわかりませんが英語で頑張ります」と英語で発言をはじめ、無事に最後まで読み上げることができました。
その後、ガボンの方が、「英語が第一言語でない人もいるにもかかわらず、英語のみで議論していては、(自分の第一言語で議論しなければ)フェアな議論ができない。CBDで用いている言語以外の人の参加を強化するのであれば、言語についても考慮すべきである」と発言をしました。この発言に対して、他のアフリカ地域の方(マラウィ?)が「1つの言語でトランスフォーメーションをするのはとても難しい」と言い切り、会場は拍手に包まれました。ちょうどそのときの共同リードは、ニュージーランド出身で、英語が第一言語の方だったため、「わたしは幸運にも英語が第一言語でしたが、そのような懸念があるのはもっともなので、この課題についてはプレナリーに戻しましょう」と理解を示してくれていました。
SBSTTAやCOPでも英語とフランス語の間で単語の意味が変わってしまっている、という場面も多々見てきました。言語の壁については、私自身も常日頃から感じていることであり、海外の友人に対して、日本語だったらもっと自分の考えや気持ちが伝えられるのに、ともどかしい思いをすることも何度もありました(もちろん今でもあります)。言語は1つのツールでしかない、といっても意見出しや交渉・議論となった場合は非常に重要な役目を果たすものです。たしかに言語力によって発言力に差が出てしまい、議論がフェアでなくなってしまうことは容易に理解できます。しかしそれはポスト2020枠組内の議論だけではないように思えるし、一方でアウトリーチという観点から考えれば、できあがった「ポスト2020目標」そのものだけをわかりやすい・理解しやすい言語に、という姿勢だけでは不十分なのかもしれないし、と個人的にも頭を悩ませる課題となりました。
コミュニケーションやアウトリーチに関しては、今回「にじゅうまるチャンネル 国際鍵リアルタイムレポート」と称して、事務局長の道家がリアルタイムで現地からレポートを行う1分半程度の動画を作成し、Facebook上で公開するということを試みました。リーチ数がのびず(Facebook上での拡散方法の問題だと思いますが)、正直なところどうだったのかはわかりませんが、「イメージで留まっている国際会議のリアル」を日本国内の方に届ける・伝えるにはどうしていったらよいのかをこれからも試行錯誤していきたいと思っています。
まとめとこれから
今回のポスト2020作業部会の内容を整理・分析し、日本ユースとしての優先事項や主張は何なのか、をまとめていかなければならないと思っています。また、国際動向をふまえつつ、生物多様性国家戦略等に対しても、意見をまとめ発信していく必要があります。それと同時に、コミュニケーション・アウトリーチにも、IUCN-J、CONDどちらの立場としても力を入れて取り組むべきものだと考えているため、そのための戦略等についても考えていけたらと思っています。
矢動丸琴子(IUCN-J/ Change Our Next Decade)