COVID-19感染拡大による国際会議の延期の動き(3月31日更新)

全世界的に感染拡大しているCOVID-19(新型コロナウィルス)の拡大防止策の観点から、生物多様性関連の国際条約や重要なイベント等が、延期されています。

2021年3月31日時点情報に基づく、現状を整理しました。延期や日程検討、会議オンライン化など様々な工夫が検討されています。同時に、各関係機関のトップは一同にこの危機を乗り越えることの重要性と、それぞれの本来の条約等の活動が、長い目でみてCOVID-19のあるいは人と生物多様性の課題解決につながるものとして、世界全体の連帯の重要性を訴えています。

生物多様性条約関連会合

会合日程について正式に公開されているものはこちら https://www.cbd.int/process/

2020年5月に開催を予定していった科学技術助言補助機関会合や条約の実施に関する作業部会は、9月、12月、2021年2月、3月とオンライン会議の試行も兼ねた特別セッションを実施しました。

その後、COP15は、2021年10月11日から24日と公表されました。https://www.cbd.int/article/new-dates-cop15-october-2021

その準備会合と位置づけられる第24回科学技術助言補助機関会合&第3回条約の実施に関する作業部会(カナダ)、第3回ポスト2020作業部会(ホスト国コロンビア)は、公開されていません

IUCN世界自然保護会議

公式サイト https://www.iucncongress2020.org/
2020年6月11日から19日に開催予定であったIUCN-WCCは、延期が決定し、2021年9月3日から11日と公表されています。なお、4月30日までにリアルでの開催の可否を判断し、困難と判断された場合には、電子投票や、オンラインでの会合実施に切り替えて行われる計画です。

様々なQ&Aが下記から見られます
https://www.iucncongress2020.org/newsroom/coronavirus-disease-covid-19-update

ホスト国フランス政府では、IUCN-WCCやCOP15における意欲的な生物多様性目標の設定を支援するため「One Planet Summit」を2021年1月11日に開催しました。現地とオンラインのハイブリッドでのイベントが実施され、人と自然に関する高い野心連合(High Ambition Coalition for People and Nature)の設立などが宣言されました。

One Planet Summit公式ウェブサイト(英語/フランス語) 

ラムサール条約

公式サイト https://www.ramsar.org/
ラムサール条約採択から50周年という節目となる2021年に第14回締約国会議(COP14)が計画されていました。2019年開催の第57回常設委員会にて、ホスト国については、中国の武漢がホスト市として名乗りを上げていることが報告されていました(常設委員会議事録 英語PDF)。
第58回常設委員会の延期が繰り返されていて、第14回締約国会議の開催日程について、いまだ正式な決定が行われていません。

世界遺産条約第44回世界遺産委員会

公式サイト https://whc.unesco.org/en/sessions/44com/

南西諸島を世界自然遺産に提案(正式名称「奄美大島、徳之島、沖縄島北部(やんばる)及び西表島」世界自然遺産候補地)するプロセスが現在進行中で、その可否を決める世界遺産委員会が、中国福建省福州市で2020年6月29日より開かれることになっていましたが、2021年7月16日にオンラインで開催することが決定しました。https://whc.unesco.org/en/sessions/44COM

世界遺産候補地の一つ。奄美大島のマングローブ林

世界遺産候補地の一つである奄美大島のマングローブ林

延期にあたって、諮問機関であるIUCNの評価についてまとめます。

評価の手順は、世界遺産条約の履行指針(2019 The Operational Guidelines for the Implementation of the World Heritage Convention 英語PDF)に定められています。履行指針168項によると、諮問機関であるIUCNによる現地評価(2019年10月)の後、IUCNは世界遺産パネルという専門家会合を開催。追加質問がある場合は遺産候補地提案国政府に1月31日までに照会を行い、提案国政府は、2月28日までに回答を行うこととされています。諮問機関は2月28日時点の情報に基づいて評価書を作成します。

評価書には、候補地の自然の特徴や管理体制の報告とともに、世界遺産としての可否やその理由・今後の課題や必要とされる取組等をまとめた、世界遺産委員会に対する勧告案が含まれます。この評価書は、世界遺産委員会が開催される6週前に(Six weeks prior to the annual World Heritage Committee session)、世界遺産センターおよび提案国に評価書を提出することが定められています。

規定に基づくと、世界遺産委員会7月16日開催の場合、6月4日(金)の世界環境の日前後が、IUCNによる評価書提出の公表タイミングとなります。

 

記事作成 道家哲平(IUCN-J/NACS-J)