国際会議もオンラインへ?SBSTTA/SBI特別バーチャルセッション開催

新型コロナウィルス感染拡大を受けて、生物多様性条約関連会合が軒並み開催の延期を余儀なくされています。COP15にむけて準備会合、科学技術助言補助機関会合は、本来、2020年5月開催予定でしたが、2021年第1四半期へと延期されています。

そのような事態を受けて、生物多様性条約では、代替の手法も含めた模索が行われています。2020年9月15日から18日にかけて、毎日(日本時間では、毎晩(夜8時から10時の開催でした))開かれたのが、タイトルの特別バーチャルセッションでした。

愛知アライアンス(自治体ネットワーク)から発表する愛知県

愛知アライアンス(自治体ネットワーク)から発表する愛知県

9月15日には、愛知目標達成状況の評価報告書「地球規模生物多様性概況第5版」の発表が行われ、16日には、条約の実施のレビューに関する作業部会の議題である、生物多様性国家戦略のピアレビューの仕組み強化と、資源動員戦略について2時間のセッションが行われ、最終日9月18日には、ポスト2020枠組みに関するセッションが開かれました。

ここでは、概要と、考察を紹介します。

SBSTTA/SBI合同セッション GBO5の発表

GBO5が発表されました詳しくはこちら。【愛知目標の最終評価文書、地球規模生物多様性概況第5版(GBO5)の発表

このほかにも、ローカル生物多様性概況第2版の紹介や、改定植物保全戦略の進行状況の報告などが行われました。

各国からは、構成要素を全部満たして達成した目標は一つもないことに強い懸念を表明し、結果の幅広い共有と、次期枠組みを達成させるための政治の巻き込み、資源動員の強化を含む能力向上、生物多様性国家戦略の仕組みの強化の重要性などを指摘しました。

ステートメントは、国だけでなく、NGO(CBDアライアンス)、自治体(愛知アライアンス)、女性、先住民地域共同体、ユースなどが発言できました。

植物保全戦略の評価状況

植物保全戦略の評価状況

*発言できなかった国や地域グループからは不満の声も上がったり、発言許可をうけても、うまく発言できなかったりなど、混乱は見られました。

SBIセッション 生物多様性国家戦略(NBSAP)の相互評価メカニズムの強化

生物多様性条約第6条に定める最も重要な条約の仕組みが、各国に生物多様性に関する「国家(=環境省ではなく)戦略と行動計画」を義務付ける規定があります。愛知ターゲット策定後、168か国が愛知目標に呼応するNBSAPを策定しています。ただ、このNBSAPには、GBO5でも掲げられた課題が多いことから、その実施メカニズムの強化が強調されています。

今回のセッションでは、そのNBSAPの仕組み強化の試行として、手を挙げた5か国に、NBSAPを説明してもらい、各国からコメントや質問を寄せて、評価を行う「ピアレビュー」を試してみるというセッションでした。

私が、非常に良いなと感じたのは、ポーランドのNBSAP評価方法です。NBSAPのなかで重要とされた105の行動計画に対して、実施状況、生物多様性の傾向、資金配分、目標、影響、他の実施への影響度などを可視化して、評価している仕組みです

ポーランドの評価ツール

ポーランドの評価ツール

SBIセッション 資源動員戦略

生物多様性保全や持続可能な利用に関する重要な仕組みの一つが、実施のための資金や人材、技術をどう高めていくかという議論です。COP10やCOP12等で検討された「資源動員戦略」については専門家パネルが設けられ、長年検討を続けてきた成果が報告されました。

報告は、3つのテーマに分かれていました。資源動員の成果について、ポスト2020枠組みの実施に必要な資源、次期資源動員戦略で検討すべき要素について説明が行われました。

*前日から継続審議となっていたNSAPレビューの時間が長く、プレゼンと地域グループからの意見表明で終わってしまいました。

SBSTTA/SBI 合同セッション ポスト2020枠組み

ゼダンCOP14議長(エジプト)、カルロス地球環境ファシリティーCEOの挨拶の後、フランシス・オグワルポスト2020共同議長によるプロセスについての説明が行われました。ポスト2020枠組みは、第2回作業部会の結果(にじゅうまるプロジェクトイベント報告)を受けて、更新版ゼロドラフト(英語サイト)が作成されています。

セッションでは、地域グループからの声明やメジャーグループからの発言が行われました。

愛知目標未達に対する懸念の表明と、ポスト2020枠組みへの高い期待をほぼすべてのスピーカーが述べました。

途上国からは、遺伝資源へのアクセスと公正な配分、生物安全保障、海洋保全などのテーマで表現が弱いことに懸念を示すとともに、資源動員や能力開発に関する明確な目標設定の必要性を指摘しました。

EUからは、ポスト2020枠組みが、Nature Positive経済の実現や、社会変革を引き起こすような動きや、高い政治レベルのコミットメントの重要性を指摘しました。また、全セクターの参加、全省庁の参画の重要性も指摘しました。ユニークなところでは、各国の生物多様性の取組や計画が、交代することなく上がり続ける仕組み(ラチェットアップメカニズム)を確保することを指摘しました。

太平洋経済諸国(ジャスカンズ)は、再びオンラインディスカッションを行うことを希望し、また、特定内容について少数の国での検討の場を設けるというアイディアについて検討してほしいと提案しました。

バーチャルセッションの評価

ここで、バーチャルセッションの評価をまとめたいと思います。最初のトライアルとして非常に面白い試みだったと思います。全員が慣れない中での取り組みでした。

参加者:参加者リストは分かりませんが、900名近く参加者が見られました。通常のSBSTTAは500名程度の参加でしたの、参加者数は増えていると思います。

交渉:条約会合は、ドラフトに対して、ステートメントを呼び上げ、会議用文書(CRP:Conference Room Paper)を作成し、そこから交渉を行い、細かい表現などについて内容を精査します。このCRPを作るところまでは、このプロセスで可能かもしれないと感じました。

ロビーイングのできないNGOの作戦は?

通常、各国の主張を聞いたところで、NGOは様々な国にアプローチし、NGOの意見を聞いてもらって、合意形成に影響を与えていきます。オンライン会議には、ロビーが存在しないので、面と向かっての政策提言活動(ロビーイング)がないため、多くのNGOは、手法に懸念を持ったことと思います。

 

国際自然保護連合日本委員会 道家哲平(日本自然保護協会)