【サイド】よく聞くキーワード
さて、2日目の会議の様子をお伝えします。
【メイン】の内容とは異なるテーマで!ということで、今回は、1日のプログラムを通してよく聞いたキーワードとその解説をお送りします。
◆ボンチャレンジ
昨日の午前と午後は、IUCNのスリーフレームワークに基づき、3つの柱に関する各国での取り組み事例紹介がされました。その中でも、「1.自然の価値を高め、守っていくValuing and Conserving Nature」の項目中でよく耳にした単語です。
ボンチャレンジとは、2011年にドイツ政府とIUCNによって設立された植林に関する世界的なプログラムで、劣化し樹木を失った森林を、2020年までに1億5千万ヘクタール復元することを目指しています。気候変動枠組条約におけるREDD+の仕組みや、生物多様性条約の愛知ターゲット15番などへの貢献が期待されています。既に、11か国によって6千ヘクタールの森林再生がされることが宣言されています。
http://www.bonnchallenge.org/
今回のARCFでは、森林保全に関する企業の役割についてプレゼンをされたAPPインドネシア(インドネシアの製紙会社)の方からの発表の中で登場したり※、マングローブ林再生の話で話題となるような形で、話題に上っていたキーワードです。
※「企業が生物多様性のプログラムに参加する理由」のひとつとして、「ボンチャレンジや、ニューヨークの気候サミット等、世界的な枠組みに参画しているから」という文脈で紹介されていました。
◆Eco-DRR
IUCNのスリーフレームワークの中の3番目である「Nature based solution」の文脈でよく聞かれるキーワードです。Eco-DRR(生態系を活用した防災・減災)に関しては、近年日本が積極的に打ち出している概念でもあります。
夜に行われたEco-DRRの分科会では、植物を活用した土壌流亡の防止(ネパール)、湿地を活用した水害防止(スリランカ)、保護地域を活用した災害対策(日本)などが発表されました。
スリランカのコロンボでは、地形的な理由から水害が起こりやすく、2010年に発生した深刻な洪水をきっかけに、湿地を活用した防災が進められました。ゴミの不法投棄や埋め立てなどの問題から、水を保持する能力の約30%を失っていた湿地を再生することで、急激な降雨の際に雨を吸収できる場とすることで災害防止につとめており、現在では湿地自体のレクリエーションや景観としての価値も高まっているとの事でした。
日本からは、コンサベーション・インターナショナル・ジャパンの日比保史さんが三陸復興国立公園の事例や、コンサベーション・インターナショナルにおける活動の事例を紹介され、「防災・減災におけるグレーインフラ(津波軽減のためのコンクリート製防潮堤など、人工物を使った防災・減災)は、ひとつの目的にしか使うことが出来ない上維持管理費が必要となるが、グリーンインフラ(津波軽減のためのマングローブ林や水害防止のための湿地利用など、生態系を活用した防災・減災)は、ひとつの目的だけではなく、生物多様性の保全・気候変動への適用・景観の向上など様々な目的に使用することが出来る」とされ、「グリーンインフラとグレーインフラを組み合わせたアプローチが必要である」と発表されていました。
その他よく耳にしたキーワードとしては、「Mangrove for the Future(プロジェクト名:IUCNとUNDPによってリードされ、たくさんの機関の協力で進められている、持続可能な開発につながる海岸線保全のためのプロジェクト)」「Wise use(概念:ラムサール条約で提唱されている「保全するだけではなく賢明に利用する」という概念)」などでした。
(公財)日本自然保護協会・IUCN日本委員会事務局 佐藤真耶