【メイン】IUCNの4年間(2012−2016)の成果(2日目前編)

日本の事例発表を行なう堀江IUCN理事

日本の事例発表を行なう堀江IUCN理事

IUCN第6回アジア地域フォーラム二日目の報告です

二日目(8月11日)は朝の9時から夜の10時まで続くプログラムで、最後のサイドイベントでは、「私たちにとって大変サステナブルでないスケジュールですが」と司会がふって笑いがおこる(まだ元気はある?)場面も見られました。

2日目は、今後も継続される見込みのIUCN4カ年事業計画のスリーフレームワークごとに、アジア地域でどのような成果が見られたか、課題が見られたかを議論するセッション、来年9月に開催されるIUCN第6回世界自然保護会議(IUCN 6th World Conservation Congress)の準備について話し合うセッション、6つの専門委員会の活動報告などが行なわれ、最後にはサイドイベントなども行なわれました。IUCNの組織改革に関する議論もあり、内容を消化するのに時間がかかりそうです。

スリーフレームワークの1つ目「1.自然の価値を高め、守っていくValuing and Conserving Nature」というセッションでは、APPインドネシアという世界最大の森林面積を保有する製紙会社による環境保全への取組が発表されました。APPインドネシア単体の取組のみならず、企業がなぜ生物多様性に取り組むのか、どういう企業ツール(企業ビジョン、保全への貢献、技術)や関係性(CSR、CRM、パートナーシップ、直接支援)、きっかけ(消費者から、NGOから、社員から、トップの関心から)で生物多様性に関係するのかなど、企業と生物多様性についての体系的な説明も行なわれたところです。APPの事業としては、HCV(保全上の高い価値のある場所)の特定や生物多様性認証の拡大を通じ、全体として、森林伐採ゼロ(製紙事業によるマイナスと復元や管理によるプラスで相殺)をめざしているとのこと。東南アジアという土地柄、泥炭地管理なども行なっているそうです。
その他には、タイ国立公園課長から複合保護林(Forest Complex、国立公園や森林保護区などを複合して広く保護地域を確保する制度)による森林保全や密猟・違法侵入・違法伐採のための国際協力の事例、RECOFTCの事務局長からコミュニティーフォレスト(地域社会による協働保全・利用の森林管理)の事例などが紹介されました。ディスカッションでは、IUCNはボンチャレンジの推進役となるべきとか、地域社会の信頼構築には中立の第三者の存在が必要で正しい情報の提供、正しい議論ができるプラットフォームを提供する役割としてのIUCNの重要性が指摘されました。

2つ目の「自然の利用は、効果的で公平な決め方に変えていくEffective and equitable governance of nature’s use」のセッションでは、良いガバナンスにつながる基本概念の整理の後、バングラデシュの自然資源研究センターによる協働型管理の類型や考え方の紹介、スリランカに置ける小規模漁業者によるマングローブ保全の取り組みの紹介、タイ環境計画部によるラムサール条約登録湿地の拡大にあたり、候補湿地の地元からの提案制度を通じた当事者意識や地域の取組をの向上させた事例などが議論されました。ディスカッションでは、地域社会組織(Community Based Organization:CBO)の推進を歓迎しつつ、その場合の地域NGOの役割の変化や、IUCNと地域社会組織との関係作り、ICTの活用などについて意見交換がされました。

3つ目の気候、食料、開発という地球課題に対して自然に基づいた解決策を模索するDeploying nature-based solutions to global challenges in climate, food and developmentのセッションは、非常に多岐に渡る要素が組み込まれるため、今回は世界的にも問題ですが特にアジア地域で大きな課題になりつつある自然災害に対して生物多様性を活用した防止・緩和・早期復興の事例発表や生物多様性を活用した沿岸管理・利用の事例発表が行なわれました。
進行および日本の事例発表は、IUCN理事(アジア地域代表として選出)の堀江理事が行ないました。事例としては4月に大地震に見舞われたネパールと日本、沿岸管理の事例としてオーガニックエビ養殖場の事例がベトナムから、沿岸管理に関する新法の報告がタイから、ブルーエコノミー(沿岸・流域・海洋などに関わる経済的活動をすべて海に影響を与えぬようにする経済に変えていこうというコンセプト)というキーワードでの地域協力の事例をバングラデシュから行なわれました。ブルーエコノミーは、水源地帯であるネパールやブータンからも賛同表明があり、国際流域管理はアジアでとても関心の高いテーマであることが伺えました。

(公財)日本自然保護協会・IUCN日本委員会事務局長 道家哲平