便利な言葉「その他」、これが結構曲者なんです。
早速SBSTTA1日目が始まりました。本日の主な議題に関してはこちら(→SBSTTA初日 保護地域に関するIUCNへの強い期待)をお読みいただくとして、本日参加した「その他の効果的手法:Other Effective Area Based Conservation Measures」という「保護地域」に関するイベントの記事をお送りします。
みなさんの頭の中で、「保護地域」といえばどんな場所が思い浮かぶでしょうか。国立公園・国定公園・世界遺産地域などでしょうか。本日のイベントで取り上げられていたのは、自然公園や国立公園といった従来型の保護区ではなく、「その他の効果的手法」で守られている保護区です。
なぜこんな中途半端な語群(その他の効果的手法)が話題になるのかというと、この語群は、愛知ターゲット11番(保護地域)中に登場するからです。愛知ターゲット11番では、平たく言ってしまえば「陸域17%、海域10%を守りましょうね、(略)守る手段は(いわゆる)保護地域システムや、その他の効果的な方法がいいですね」という文言が組み込まれていますが、実は今まで「その他の効果的な方法」についてはっきりと定められていませんでした。これでは、陸域17%分、海域10%分、何を基準としてどうやって測ったらよいのかわかりません。(「おにぎりと、それっぽいやつ10個買ってきて」と言われた際に、「それっぽいやつって何だろう…」と途方に暮れる状態を思い浮かべればわかりやすいかもしれません。)
そのため、現在IUCNでは、2015年からタスクフォースを立ち上げ、「その他の効果的手法」の定義や基準作りを行っており、本日のイベントでは現状共有として、4つの定義が共有されました。ちなみに、IUCNでは、「保護地域」を”生物多様性及び自然資源や関連した文化的資源の保護を目的として、法的に、もしくはその他の効果的手法により管理される、陸域または海域”と定義しています。(詳細はこちら:http://www.iucn.jp/park.html)
共有された4つの定義
1.「保護地域」の定義に当てはまるが、関連している政府組織に認められていない地域
重要野鳥生息地(IBA)※1/絶滅ゼロ同盟の指定保護サイト(AZE)/生物多様性の保全の鍵になる重要な地域(KBA)※2/生態学的・生物学的に重要な海域(EBSA)※3など、NGOや政府によって重要な地域だとリストアップされている場所。または、民間保護地域など、オフィシャルな保護地域の対象からは外れる場所。
2.「保護地域」の定義に当てはまるが、管理主体がそのエリアを「保護地域」として認めたくない場合
保護地域として法律で縛ることで、そのエリアに設定したくないルールが持ち込まれてしまう場合/民間保護地域・先住民族が管理している地域や聖域などで、管理主体がその場所を「保護地域」として縛られたくない場合
3.「保護地域」の定義に当てはまらないが、二次的な保全が行われている地域
農業遺産選定地域など、農業を行っている地域
4.「保護地域」の定義に当てはまらないが、補助的な保全が行われている地域
自然の聖地として、「保全」が主目的とはされていないが、結果としてその場所が保全されている場合/農林漁業等でマネジメントされている場合/石油やダム等の施設があることによって人が暮らさず、インフラとして保全されている場合
今後タスクフォースでは、更なる検討を重ね、この語群の定義づけなどを行っていく予定とのことでした。「その他」や「○○等」という言葉はよく使用しますが、ひとたび条文に登場すると、このような形で科学的裏付けがなされていく必要性があるのだな、と実感した一場面でした。
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※1 具体的事業例:公益財団法人 日本野鳥の会
重要野鳥生息地(IBA)の保全(http://bd20.jp/dantai/detail.php?id=15)
※2 具体的事業例:コンサベーション・インターナショナル・ジャパン
KBA選定・普及・活用・更新事業(http://bd20.jp/dantai/detail.php?id=13)
※3 参考サイト
生物多様性の観点から重要度の高い海域(http://www.env.go.jp/nature/biodic/kaiyo-hozen/kaiiki/index.html)
生物多様性の観点から重要度の高い湿地(http://www.env.go.jp/nature/wetland/index.html)
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(公財) 日本自然保護協会・IUCN日本委員会事務局 佐藤真耶