SBSTTA初日 保護地域に関するIUCNへの強い期待

初日は、愛知ターゲットの目標11(保護地域)目標12(絶滅危惧種)、生物多様性の主流化に関して各国の政府、国際機関、NGOなど多様な組織からの意見表明が行なわれました。IUCNへの強い期待が各国から出され、この分野でのIUCNの影響の強さを感じた一日でした。

愛知ターゲットの進捗評価

会議文書(PDF:https://goo.gl/3V4DXe)では、愛知ターゲットの目標11(保護地域)目標12(絶滅危惧種)についての実施状況がまとめられ、次にどのような行動をとるべきかという議論がなされました。保護地域と絶滅危惧種はまさしくIUCNの専門性が最も発揮される領域です。多くの国からIUCNの取り組みへの期待、特に、自然公園や国立公園といった従来の保護区ではなく、その他の効果的に保全する手法(Other Effective Conservation Measure。頭文字をとってOECM)についてその定義や基準作りの進め方への意見が多数出されました。IUCN-Jでも取り組んでいる民間保護地域もこのOECMの中に含まれると思っているので注目しています。また、ラムサール条約登録湿地やユネスコエコパークとの連携についても指摘する声がありました。

 

その他の論点としては、管理効果の評価、公正(equitable)な管理の考え方、保護地域に関する情報提供と生物多様性条約への報告をうまく調整する方法、絶滅危惧種の回復計画、固有種の保全のための保護地域拡充の重要性などについて各国から意見が出されました。IUCNは、重要生物多様性地域Key Biodiversity Areasのリスト作りや、IUCNグリーンリスト(保護地域管理の国際認証)の仕組みがこの課題に大きく貢献することを強調しました。

生物多様性について話し合われる本会議場の様子

本会議場の様子

 

生物多様性の主流化にについて

ほぼすべての国がこの取り組みの重要性に賛同しつつ、主流化のための法制度上の措置の重要性、民間部門(企業)の関与の増進などについて意見が集中しました。また会議資料が、農業水産業・林業の視点で書かれているため、調達、認証や消費者教育など需要サイドの取り組みの重要性を指摘する声もあります。ツールとして活用できると指摘されたのは持続可能な開発目標(SDGs:http://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/15775/)です。生物多様性を含む持続可能な社会に向けた17の大目標があるので、この国連共通目標をスタートラインに主流化についても進めていけるのではないかという意見が出されていました。

 

今回、農林水産業に関する主流化についてはSBSTTAで取り扱い、観光業やその他のセクターでの主流化はSBIで扱うという整理だでしたが、鉱工業(Mining)やインフラ、エネルギー産業のことについての主流化にも言及する国が何カ国かありました。

(公財)日本自然保護協会・IUCN-J事務局長 道家哲平