SBI二日目 戦略的アクションと能力養成
SBI1の二日目は、ABSに関する名古屋議定書、カルタヘナ議定書、主流化を含む実施強化のための戦略的アクション、資源動員、資金メカニズム(GEF)、能力養成と非常に多くの議題に対する意見表明が行なわれました。WGRIからSBIに変わりましたが、会議の進行はさほど変化はないというのが感想です。そのため、会議の雰囲気を少しでも前向きなものにするため、WWF、バードライフインターナショナルなどは、NGOとして政府の動きをしっかり見ているよ、ということを強調しました。ここでは、主流化を含む実施強化のための戦略的アクション、能力養成について出された主な意見を紹介します。
主流化を含む実施強化のための戦略的アクション
−公的部門や民間との協力が重要。自然資本会計は価値ある取り組みである。持続可能な開発目標の達成手段の一部としても、戦略的な行動が重要。(EU、ガーナ、メキシコ、ブラジル、ノルウェー、ボツワナ、マイクロネジア、ペルー)
−SDGs関係の指標と愛知ターゲットの指標とを整合性をはかることで、取り組みの重複を避けるべき。(EU、スイス)
−建設業・鉱工業などの業界に生物多様性に取り組んでもらうのは途上国としては困難を感じる。農林水産業以外の他のセクターをどのように巻き込むかをCOP14の議題にしてはどうか(モルジブ、南アフリカ)
−国家戦略策定にあたってinclusive approachをとることで、主流化を加速できる(ニジェール)
−主流化のための資源は大きくへのファンディングが重要。資源動員と連携(エチオピア、モルジブ、モロッコ、コスタリカ、ウガンダ)
−主流化の分野でどのように行動するかは、生物多様性条約だけでなく他の条約にも影響を及ぼす。「主流化にあたってどんな課題があるのか」ではなく、「どのように主流化を進めるか」について、強いメッセージを出す必要がある。また、地球環境ファシリティー(GEF。*先進国が供出した資金を途上国に配分する基金)がどのような取り組みに資源提供をするか、どのようにそれ意外の自発的な資金提供や投資が行なわれるかという資金的な支援も重要な要素。(カメルーン、ガーナ、南アフリカ、ケニア)
−ジェンダーと先住民、ユースの視点が重要(NZ、グアテマラ、メキシコ、ボリビア、マイクロネジア、ペルー)
−観光業の主流化が重要。持続可能な消費と生産−10FYPの言及(メキシコ、モロッコ)
−生物多様性をビジネス化することに懸念。国が果たすべき責任を、企業に転嫁することについて疑問(ボリビア)いくつもの国で主流化を実施している。地域レベルの活動を特定し、スケールアップすることが重要。社会経済的開発とのリンクが必要、農業や水産業やエネルギーなども巻き込むべきセクターである(NGO)
−社会を構成するすべての構成員が関わることの重要性。生産側だけでなく、消費側の関与も重要。クロスセクタルの具体的な取り組みがないことに懸念。NBSAPの改定等を通じて取り組むべきではないが、セクター毎の取り組みでもっとホリスティックなアプローチが必要ではないか。(GYBN/ユース)
能力養成について
能力養成の議題は、2020年までの短期行動計画、ウェブサイトの戦略《生物多様性条約ウェブサイトの中に関連ウェブサイト(重要海域のウェブサイト、国家戦略のウェブサイトなど)が沢山できたので、対策が求められている》、科学技術協力・技術移転などのテーマがはいっています。主要な提案をは下記のとおりです。
<短期行動計画>
−短期的行動計画には、重複する活動があり、優先度の設定(をCOP13で行なうこと)が重要 (EU、カナダ、NZ、スイス)
他の条約との連携(EU.NZ)
−すべてのアクションプランについて事務局が自ら動くのではなく、その調整役をにない、パートナーの連携を中心に行動計画を実施に移すべき。(EU、スイス)
−短期行動計画の締約国によるレビューが重要(カナダ)
−短期行動計画はアフリカの視点から見ると不十分。また、短期行動計画のための資金の裏付けと、先進国からの支援の重要性 (アフリカ(ガーナ)、カメルーン)
<ウェブ戦略>
−Web strategyの判断を下すのは早い。更なる改善を事務局に依頼(EU)
−科学的技術的協力と能力養成は別。全部を事務局がやるべきかは疑問。オンラインサーベイでは意見が偏るので評価のしかたの再検討 (日本)
−専門家や自然保護の手法などを伝える人材が必要 (ベラルース)
−オンラインコースの歓迎と、数やテーマの拡張などの検討をする(キャパビルの短期行動計画)(ブラジル、セネガル)
−技術移転は技術を必要とする途上国側と、技術を持っている先進国の間を結ぶ中間組織が重要で、BioBridge Initiativeを立ち上げて、支援していきたい。(韓国)
−自治体やステークホルダー、女性やユースの参画が重要。web戦略には、SNSの活用が抜けている。ユースやあらゆる世代の参加を推進するためにもソーシャルメディアを活用するべきではないか。(Youth)
(公財)日本自然保護協会・IUCN-J事務局長 道家哲平