私たちは未開発の金鉱だ! 9月1日

IUCNは、2年後の2018年に70周年を迎える組織です。その組織構成の中心である、会員団体・事務局・専門委員会も、基本的には変化していない長い歴史を持つ存在です。そんなIUCNにあって、20年前に出来た未だ発展途上にある仕組みが、にじゅうまるプロジェクトを運営するIUCN日本委員会のような「IUCNの国内委員会(National Committee)」です。

世界各地の多様な意見が交差する会議

世界各地の多様な意見が交差する会議

 

ジャンIUCN会長は、この仕組みを「IUCNの背骨」「会員が生み出す栄養をIUCNという巨樹の隅々にまで行き渡らせる幹」そしてこの記事のタイトルになっている「どれほどの可能性があるかわかっていない金鉱」と表現しています。国内委員会は、各国のIUCN会員団体が自分たちの国とIUCNとの連携を進めるために作る組織で、理事官の承認を必要とする仕組みです。

 

日本では、一番古いIUCN会員である日本自然保護協会が現在事務局を務めるIUCN日本委員会(Japan Committee for IUCN)は、1980年から活動しています。また、地域委員会(Regional Committee)は、主に、国内委員会の代表が参加する形で、アジアとは西ヨーロッパといった大きな単位で協働を進める組織となっています。IUCN日本委員会も、アジア地域委員会の1メンバーとなっています。

 

前置きが長くなりましたが、世界自然保護会議開会日の午後をつかって、この国内委員会や地域委員会の代表者が集まり、各国各地域でどのような国内・地域委員会が活躍しているかという理解促進、経験共有のための会合が開かれました。国内委員会がこのように集まるのは、10年ぶりくらいとなります。

 

会議は、イギリス国内委員会のクリス・マホン氏とデンマークのアン−カトリン・ガーン女史の進行で行なわれました。ちなみに事前の電子投票で、この国内・地域委員会の活動を活性化し、情報交換や経験の交流などを促進することと、このような国内・地域委員会同士の会合の開催を支援するようIUCNに求める決議が採択されました。そのため、この会合はその決議を実施するためにも、現状の地域委員会や国内委員会の活動の共有が行なわれました。

 

結論からいえば、非常に考え方や活動の差に多様性がありすぎるということを認識する一方、IUCNとして新たな可能性を生み出す仕組みであることを理解し合いました。

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例えば、東・南アフリカ地域委員会は、ボツワナ、モザンビーク、ケニア、南ア、マラウィ、ウガンダ、ジンバブエなどがメンバーとなり、地域委員会としての事業はないのですが、年5回以上も集まる機会を作って、IUCNの事業展開を進めています。中央アメリカやカリブ地域(メキシコやカリブ海島嶼国は、規約上同じ地域区分にですが、別々に地域委員会が作られている)では、IUCNの地域での展開事業計画の素案作りに関わっていることが報告されました。

 

EUという土台もあってか、地域委員会という名称ではないですが、西ヨーロッパでは「国内・地域委員会の活発化に向けた作業部会」を立ち上げ、国内・地域委員会活性化についての提案の起草や、この会合の運営をリードしていました。

 

IUCN日本委員会もメンバーである、アジア地域委員会はマケピン(中国)委員長からは、事前の準備会合の成果としてまとめた提言が発表されました。要旨としては、
1.専門委員会と事務局に比べ、会員と専門委員会や会員と事務局との連携が低く、WCCやWCC後もその関係を強化する必要がある。
2.会員の活動をもっと見える化する必要がある。会員による行動の活性化や、決議のフォローアップの強化、科学ベースの保全を地域や国レベルでもっと進めていくべきだ。
という提案です。

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休憩後の議論では、国内・地域委員会の機能強化のために何が必要かを話し合いました。資金や能力構築が必要という意見もあれば、コモングランド(共通の達成したい思い・願い・理解)さえあれば工夫できるという意見など様々な意見が出されました。

 

会合の調整役であるイギリス委員会のクリス・マホン事務局長は、共通の目標として愛知ターゲットやSDGs、なによりIUCNとしてのプログラムがあるので、この目標達成のためのメカニズムに集中しようという意見と、すべてに適用できる手法はないから、それぞれが展開する多様な仕組み・アイディア・工夫から学び合うことが重要だとまとめられました。

 

これから、どのような運営の工夫(会員の参加、会員団体−事務局−専門委員会との関係構築、運営や事業の進めかた、予算確保の工夫)を皆がしているかを共有していくことの重要性を話し合いました。

 

にじゅうまるプロジェクトという世界でも例を見ない事業を展開するIUCN日本委員会としても、その取り組みや取り組みを支える運営の工夫について積極的に発信することで、IUCN国内委員会という仕組みが持つ可能性をさらに高めていきたいと思っています。

 

(公財)日本自然保護協会経営企画部副部長
国際自然保護連合日本委員会副会長・事務局長
道家哲平