IUCN会員総会で話し合うこと
IUCN会員総会の話し合いの中では、IUCNの会議や組織運営に関る事務的な議論もあれば、自然保護の今後のあり方といった大局的な話もあります。IUCNらしさが発揮されたのは、世界自然保護会議の運営に必要な各種組織委員会(運営、決議、資格確認、財務、ガバナンス、プログラム)の承認についての議論です。
例えば、生物多様性条約であれば、事務局が用意した候補リストを淡々と承認していくだけなのですが、「今回ユース団体が非常に活躍している。この会議がどう運営されているのかをみるのも非常に大事だし、ジェンダーや地域バランスだけでなく、世代バランスも考えよう」と呼びかけると、すぐに「私はこの若者を〇〇委員会に推薦したい、私はXXさんを推薦したい。先住民の声も代表してくれる若者だ」と30近い声が上がり、メールでの提案受領も含め50以上の推薦が数時間の間に行なわれました。最終的には、各委員会の決定を午後に後回しとし、1名ずつの若者を委員会に追加することになりました。
IUCN事務局長の活動レポート
事務局長による活動報告(=事務局を中心に取りまとめたIUCNの活動報告)には、会員数の増加や専門委員会の増加。事業上の成果などが詳しく報告され、それに対する外部第三者機関の評価や詳細なデータものっています。
大きなマイルストーンとして事務局長が挙げたのは下記のことです。
・持続可能な開発目標(SDGs)の合意。そこに”生物多様性”の要素が単独の目標だけでなく、他の目標にも組み込まれたこと。IUCNの構成員が協力し、愛知ターゲット始め、単独の目標だけでなく、あらゆる部分に自然の要素を入れることが出来た。2015年やその交渉過程のSDGsのイベントでも、自然の重要性を強調した成果である。
・厳しい審査をへた後、地球環境ファシリティーの実施団体になった。これによってIUCNが窓口となって地球環境ファシリティーから資金を調達し、途上国に配分するなどの取り組みが出来るようになった。
・新しいモーションの提案・討議・投票システムを含む、ユニオンポータルの整備、インターネットベースの仕組みが構築できた。この世界自然保護フォーラムの間にも新しい成果が生まれたとして、Key Biodiversity Areaのネットワークの設立、#NatureForAllのキャンペーンに100団体以上が名乗りを上げた。等を紹介しました。
今回のフォーラムには、ジャーナリストも多く参加し、5000のメディアをカバー。#IUCNのハッシュタグは、全ツイッターのトップ10に入った。また、900人のユースが参加したことも”成功”の一つと紹介しました。
予算については、国連・国際機関おしなべて、国からの使途の拘束されない資金(IUCNではこれをコアファンドと呼んでいます)の供出が減る傾向がありIUCNも同様の傾向にあること、今後は、事業に対して提供される資金を確保する計画であることが発表されました。この4年間の間に、地球環境ファシリティーや気候変動アクション基金の実施機関にIUCNがなったことから、より世界目標に合致する形でIUCNの取り組みを実施することが求められます。
インガー事務局長
「新しい環境の時代に、私たちも重要な役割を果たさなければならない。”環境”は主流化された。環境の課題を教えない学校は無いし、環境を扱う省庁が無い国もほぼない。しかしこれだけでは十分ではない。この5日間で多様な主体が参画し、IUCNがもたらすデータを必要とし、良い意思が集まったことを目にしていると思う。これらを、IUCNの力に変えなければいけないし、IUCNの力に変えることが会員の役割です。」
「気候変動や貧困の撲滅、このフォーラムで注目された海を守るための大きな声、生物多様性がもたらす健康を求める声を世界各地に届けなければならない。2年後にIUCNは生誕70年となる。これからの4年間は、世界がIUCNに求める以上のことを、IUCNとして取り組むことを証明しなければならない。」と締めくくりました。
このような報告に対して会員からは、新しい資金調達方法の重要性、本部(スイス)と地方事務所のバランスと連携、国内委員会や地域委員会の活性化等の意見が出されました。
(公財)日本自然保護協会経営企画部副部長
国際自然保護連合日本委員会副会長・事務局長
道家哲平