SBSTTA19決議その2 森林、健康、IPBES

生物多様性条約第19回科学技術助言補助機関会合の成果をご紹介します。

*本内容は、文法・法律上の精査を受ける前の会議で用いられたL(Limited Circulation)文書をもとに要約しました。表現の強弱については厳密さを欠いている点ご留意ください。

その2では、生物多様性戦略計画以外のテーマについて議論されまとめたものをご紹介します。

SBSTTA決定は、大まかに言うと、「SBSTTAとしての決定」と、「COP13で採択(検討)すべき事項の提案」という大きく二つのパートからなり、それぞれ一般的な事項、締約国への奨励事項、事務局への要請事項という構成になっています。

4.1 生物多様性と健康

COP13の決議案として

生物多様性条約と世界保険機関(WHO)との覚え書きと「Connecting Global Priorities: Biodiversity and Human Health, a State of Knowledge Review」(以下SoK)を留意し、生物多様性と人の健康の様々な相互関係(生物多様性の直接的な健康への恵、感染症など)について認識し、「ワンヘルス」アプローチの価値を再度強調し、
SoKの主要メッセージを留意すること、締約国に生物多様性と健康に関する理解を深めること、付属の情報を活用すること、

- 締約国に対し、(a)生物多様性と健康に関するセクター間の対話の推進、(b)生物多様性と健康のリンクを検討する、(c)国レベルのモニタリング能力やデータ収集を強化すること、(d)環境影響評価での検討と生物多様性の関係を考慮すること、(e)生物多様性の干渉の負の影響に取り組むこと、(f)健全なライフスタイルと持続可能な消費の推進に関する機会を特定すること、(g)分野横断型の教育やトレーニング、研究プログラムの開発、(h)健康と環境の能力強化の需要について検討すること、(i)生物多様性の関係を国の健康政策に組み込む、といった活動を求めること

- 締約国に対して、生物多様性を健康戦略に組み込むための分析や評価やモニタリングのための指標やツールを開発すること、SDGsの実施の文脈で生物多様性と健康の互恵関係を強化し普及啓発するためのツールキットを作ることを奨励すること、生物多様性と健康の関係に関する研究(生物多様性と生態系の劣化と疾病の発生や感染の関係性、食の多様性と健康と穀物・家畜の多様性の相互関係、体内の細菌の多様性と環境の多様性との相互作用、保護地域が果たす健康への役割など)を促進し、支援することを締約国に求めること
生物多様性と健康の総合関係をポスト愛知ターゲットで考慮するよう決定すること

事務局長に対して、
SoKの普及やツールキットの開発、優良実践ガイド、能力要請などでWHOと協力を行なうこと、決議実施にあたって受け取った情報をまとめ分析すること、COP14の前のSBSTTAに報告を提出することを要請する文章をまとめました。

「付属書 生物多様性と健康のつながりについての理解を促進するためのトピック」には、水の供給と衛生、農業生産、食料と栄養、人々の居住、生態系管理と感染症、精神的健康と福祉、伝統的薬、バイオメディアカル発見、薬の原材料生産の影響、種と生態系の保全、生態系復元、気候変動と災害リスク削減のテーマで情報がまとまっています。

4.3 森林生物多様性

森林に関係のある愛知ターゲット達成に向けた関連国際機関の役割や、森林に関する協働パートナーシップ(collaborative partnership on forest)による貢献を歓迎し、事務局に対し森林に関する協働パートナーシップと協働し、森林に関する国際的枠組み(internaitonal arrangement for forest)の戦略計画2017−2030に貢献することを要請しました。

COP13の決議案として

- 森林関連の国際的動き(IAFの活動継続、SDGSにおいて森林関連の目標が設定されたこと)を歓迎し、
森林に関する協働パートナーシップに対して、パートーナーシップメンバー個々の活動あるいは全体としての活動において、愛知ターゲットへの貢献を強化する手法(経験や情報の共有、締約国を支援するツールについて検討すること、協働を深めるために各パートナー団体の役割を検証すること、モニタリングや報告の改善、知識管理の改善)を検討することを呼びかけること
- 締約国に対して、森林政策の開発や実施に際して農業を含む他の土地利用、気候変動野緩和や適応、自然災害リスク緩和を考慮することを奨励すること

- 事務局に対して、森林に関する協働パートナーシップのメンバーとの協働を継続し、その進捗をCOP14の前のSBSTTAあるいはSBIに提出すること
という案をまとめました。

5  IPBESとSBSTTAとSBIの活動について

事務局に対して、第6次国別報告書のガイダンス(案)を作成する際に、(a)タイミングや形式や内容について技術的な配慮を検討すること、(b)戦略計画の実施にとられた特定の手法の効果を評価するツール利用についての締約国の経験や、多様なセクターに生物多様性の主流化について組み込むこと(c)コメントのためにその提案を
回覧すること、また、オンライン報告ツールの活用促進を行なうこと、IPBESの次期プログラムへのインプット案をCOP14の採択を視野に作ることを要請しました。

COP13の決議案として

GBO5の内容について決定すべき事項の案をまとめました。
GBO5は、具体的な戦略計画の実施について最終報告を提供すること、次期戦略計画の基礎を提供すること、ターゲット毎の進展と持続可能な開発目標への貢献についての分析を含むこと、第6次国別報告書・グローバル指標からの情報・IPBESのテーマ/地域/世界評価・生物多様性関連条約や機関からの情報、先住民協働体からの情報を用いること、などです。
事務局長に対しては、GBO5の準備に向けた作業計画を準備すること、生物多様性関連条約やプラットフォームの事務局と協働のコミュニケーション戦略を準備すること、などを要請する案をまとめました。

(公財)日本自然保護協会国際担当/IUCN-J事務局長 道家哲平