SBSTTA3日目レポート スイス製時計は高性能
SBSTTA3日目は、IPBESの成果、気候変動、野生生物の持続可能な利用、保護地域と生態系復元がテーマとなりました。順調のように見えて、実は半日ほど進行が遅れていて、会場では最後駆け足での議論になるのではないかと心配する声が出始めていました。3日目午前のセッションは会議が延びて、通訳がつかない中で強引に英語だけで意見表明をするという異例の進行もあって、険悪な雰囲気もありました。
そんな折りスイス出身の議長(SBSTTA運営委員の一人)が午後のセッションを仕切ると様子は一変!「僕のスイス製の時計で3分経ったら「時間だよ」って教えるからね、短く要点をまとめた発言してね。スイスの時計は正確だから(笑)」と進行し、すいすいと議題をこなしていきました。スイスの時計が高性能というのはほぼ世界中の人が持つイメージのようですが、ここまで高性能とは驚きました。
気候変動
気候変動(Climate change)は三日目のテーマとなりました。生物多様性からみた気候変動の課題です。パリ協定の合意を踏まえ、気候変動の課題に生物多様性から生態系をベースとした適応(Ecosystem based Adaptation)や、多発する自然災害への備えとして生物多様性を活かした防災や減災(ECO-DRR)を訴えていくという流れの中で、議論が展開されました。例えば、森林以外の生態系(例えば、泥炭地peatland)もしっかり重視する、といったものです。
初めて来た人は分からないかもしれませんが、今回このテーマは大分生産的な議論がされています。と、偉そうに言ってしまうのも、これまでは、パリ協定(かつてはポスト京都枠組み)の交渉が難航している時期で、その交渉が終わるまでは、生物多様性条約など他所の条約は余計なことを提案してくれるなという立場の国がいくつもあり、手続や細かい交渉の表現などに大きく時間を割いていました。
もう一つ注目したのは、パリ協定の中で各国が出さなければならないNDC(Nationally Determined Contribution、貢献のための約束草案)において、ヨーロッパを中心に、生物多様性保全による貢献を組み込むよう呼びかけようと、提案していたことに関してです。約束草案は、CO2排出量抑制の目標だけかと思っていたので、これは日本の約束草案※1でも同様の動きができると良いのではないかと思います。
※1 日本の約束草案 平成27年度7月決定
内容はこちらから(環境省HP:http://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg/2020.html)
(公財)日本自然保護協会・IUCN-J事務局長 道家哲平