ポスト愛知の検討プロセス案合意! SBI決定の紹介

1週間にわたって開かれたSBI2が終わりました。

SBSTTAよりも条約のプロセスや条約と議定書の連携など技術的な議論もあれば、生物多様性の主流化など生物多様性以外の分野との連携、そして、ポスト2020枠組みに向けたプロセスの話など、多岐(採択したのは21文書)にわたる議題をこなしました。サイドイベントでは、ポスト2020枠組みに向けた議論のスタートを感じさせるイベントや非公式な会合も開かれました。

COP10(2010)年の時に寄せられたメッセージ:2020年に2010年よりもっと良い地球にするためまで2年間あります!

COP10(2010)年の時に寄せられたメッセージ:2020年に2010年よりもっと良い地球にするためまで2年間あります!

ポスト2020枠組みについては、特に、IUCNの会員団体(WWFなど)やIUCN専門委員会(教育コミュニケーション委員会、世界保護地域委員会、種の保存委員会)によって程度の差はあれ、検討が進んでいることが分かりました(多分、日本のIUCN関係者のうちほんのわずかな方しか関われていない状況です)

ポスト2020枠組みに向けたプロセス

<解説>
ポスト2020枠組みについては、ポスト2020枠組みは政府がリードする形で作るとしつつ、参加、透明性、反復(*意見を何度も交わしながら合意と当事者意識を作る)などの原則に基づいたプロセスの重要性を各国で確認しました(日本政府も含まれます)。

ただ、おそらく待っているだけでは、市民や企業や自治体、ユースが期待するプロセスは生まれませんので、政府(環境省)に積極的に提案していくことが重要と思います。

今回の目玉といえる決定なので、詳しく紹介します。

<SBI決定パート>

これまでのプロセスに関する検討や、変革的変化やトランジションマネジメントなどの新しい視点の情報も留意しつつ、事務局長に対して、(パラ5)8月15日までにポスト2020枠組みに関する準備プロセスに対する更なる意見、ポスト2020枠組みの範囲や中身などについて、締約国や先住民地域共同体、市民団体、民間セクター、他のセクター等に意見募集をすること、とりわけ、実施の強化やコミットメントの促進、政治的盛り上がり(自発的コミットメントのありかた(Modality)も含む)について意見募集をすることを指示しました。

また、事務局長に対して、COP15に向けたイベント、政治的な盛り上がりを高めるための工夫(ハイレベルなパネルなど)について、また、事務局をサポートするための非公式助言グループを立ち上げ、ポスト2020枠組みのプロセスを助言することの可能性も探求することを求めました。

<COP14決定案>

- ポスト2020枠組みの作成のための参加型プロセスを採択すること(パラ1)

- ポスト2020枠組みはインスピレーションを与え、モチベーションを与えるような2030ミッションと、2050年ビジョンのステップとなるようなものを伴うものとすること(パラ2)

- 国、地域、ローカルレベルでプロセスを作り、対話を促進し、その結果をクリアリングハウスメカニズムで共有するよう、国や他の政府、先住民地域共同体、国際団体、市民団体、女性やユース団体、民間や財政セクターや他のセクターに強く求める事(パラ3)

- 参加型プロセスへの資金提供を求めること(パラ8)

- 締約国、先住民地域共同体、民間団体を含むステークホルダーに対して、自発ベースでポスト2020枠組みと2050年ビジョンに貢献する生物多様性コミットメントを、COP15の開催される前に、生物多様性条約事務局に提出することを奨励(パラ9)

- 国連総会に対して、2020年の首脳級生物多様性サミットの開催を奨励すること(パラ10)、

- 会議文書に書かれた原則(SBI/2/17のセクションVのA)「参加」「インクルッシブ」「包括」「変革的」「触発的(Catalytic)」「知識ベース」「透明性」「反復的(何度も意見を往復させながら合意と当事者意識を作り上げる意味)」を、ポスト2020枠組みのプロセスで重視すること

- COP14以降のSBSTTA23,24、SBI3でポスト2020枠組みを検討することと、特に、SBSTTA23で、ポスト2020枠組みの科学的技術的妥当性を作るための準備を事務局に指示する決定案をまとめました。

付属書:ポスト2020枠組み作りの考慮事項には下記のようなことが列挙されています。

- ポスト2020枠組みは政府がリードする形で作ること

- 2050年ビジョン達成に必要な変革的変化を達成するための課題に応えること

-早い段階で文書作成を行うことが必要なこと、

-意欲的で、測定可能で、現実的で、締め切りが設定された目標を含む、選択肢が早い段階から検討されることが必要なこと、既存の指標やBIPが特定した指標、SDGsの指標などをもとに、ポスト2020枠組みの指標が同時に必要なこと

- 議定書や他の条約、他の国連機関との相乗・オーナシップのための規程が必要なこと

- 普及啓発や効果的な参画を促進するために、一貫性があって包括的なコミュニケーション・アウトリーチ戦略が必要なこと(その観点から、参画を呼び起こす人気が出る名前を付けること)

- 参加型プロセスと能力養成の戦略枠組みや長期的な主流化アプローチとの一貫性や調整が必要なこと

- 参加プロセスを促進するための能力養成のための規定が必要なこと

-ポスト2020枠組みの策定状況について定期的な情報提供が必要なこと

国別報告書

<決定案>

生物多様性条約とそのもとにあるカルタヘナ議定書・名古屋議定書の報告タイミングをそろえて2023年に実施する事を決定する案をまとめました。

また、事務局長に対して、その場合のコストや、過去の国別報告書の報告・まとめ作業の教訓、他の生物多様性に関係する国際条約間との連携の可能性を模索すること、オンラインレポートなど(生物多様性条約に限らず)国際報告の事務作業を軽減する方法を模索するよう支持する案をまとめました。

実施レビューを促進するメカニズム

<決定案>
締約国間同士で評価するピアレビューメカニズムの設立を決める事案をまとめ、事務局に対し、その仕組みのさらなる検討と、各国に試行をおこなうよう求める案などを求めました。

条約および戦略計画2011-2020の進展

<決定案>

愛知ターゲットをもとに各国が目標をつくったことを認識しつつ、各国がそれぞれの国家戦略等で設定した目標を今回精査すると、ほとんどの愛知目標が進展が限られてており、いくつかは全く進展がない、わずかな国しか国家戦略を政府全体の目標にしていない(日本はそのわずかな国と一つ)、わずかな国しか資源動員戦略やコミュニケーション・普及啓発戦略あるいは能力養成戦略を持っていない、わずかな国しか国家戦略が主流化され、横断的な政策や計画、貧困撲滅計画を持っていないことに注目すべきであるとしました。

(残り2年ですが)戦略計画実施のための取り組みを大きく加速させ、実施と目標とのギャップを埋める事を強く求めるとともに、実施のために先住民地域共同体、市民団体、女性グループや他のステークホルダーと協力することを奨励する文章をまとめました。

今回ジェンダーアクションプラン(2015-2020)の中間チェックが行われましたが、進展を歓迎しつつも、ジェンダーの視点をポスト2020枠組みでも検討すること、ジェンダーアクションプランの成果を第5版地球規模生物多様性概況や第2版地域生物多様性概況などの作成時も見直すことを求める決定案をまとめました。

多国間協定

<決定案>

様々な多国間協定、国際機関、国際的なイニシアティブの連携を歓迎し、締約国にその成果活用を促し、事務局に引き続き協力を進め、相乗効果を高めることを求める決定案が採択されました。ポスト2020枠組みの検討に際してもこの国際協定等との連携を重要視することも書かれました。
主に事務局に対して多くの要求事項が含まれています。

従来から連携を深めてきた生物多様性関連条約(ラムサール条約、ワシントン条約(CITES)、ボン条約(移動性動物の保護に関する条約)、植物遺伝資源保護条約)、リオ三条約(生物多様性条約、気候変動枠組み条約、砂漠化防止条約)、国連森林プログラムなどです。これに追加して、Caring for Coasts Initiative(CBD、バードライフ、東アジアオーストラリアフライウェーなどが参画)という沿岸の保全と再生に関する事業との連携も確認されました。

道家哲平(日本自然保護協会/IUCN-J事務局長)
*今回の情報収集は、環境再生保全機構地球環境基金の助成を受けて実施します