ポスト2020プロセスの合意
ポスト2020に向けたプロセスについてまとまりました。この議題は、第1作業部会にも第2作業部会にもふることなく、COP14議長のヤスミン環境大臣が仕切るプレナリーにて検討されました(采配が非常にうまい方と評判です)。
決定までの道のりと決定の特徴
途中、コンタクトグループを4回重ね、4回目は、午後2時半から翌午前1時くらいまで議論を続けまとまったと思ったら、最終日前日になって「自発的コミットメント検討の合意は、“意見がまだ対立している”DSI(遺伝資源のデジタル情報)の利益配分の検討の合意と取引だ」ということとなり、最終日まで結論が持ち越されることとなりました。最終日前日(水曜日)のDSIの交渉は1時に及び、合意に至ったため、ポスト2020も無事の合意に至るという、長い長い交渉の末の合意です。
これから始まるプロセスを支援するため、イギリス政府は、追加的な支出を行うこともアナウンスされました。
愛知目標を作る時と異なるプロセスが、いくつもあります。
1. 検討のための専門の作業部会の設立、2.政府・民間双方に求められた「生物多様性コミットメント」、3.プロセスそのものを普及啓発するためのハイレベルパネルの設置要請。です。
自発的コミットメントについては、過去の記事「ポスト愛知の行方」を参照
今後、具体的にどう進めていくのかはこれから詳細が決まっていきますが、国際社会を大きく盛り上げる流れが期待されます。早速、年明けの1月には、アジア地域の地域検討会合が、日本の愛知県名古屋市で開かれる予定です。
決定内容
SBI(事前準備会合)にはなかったアイディアである、「公開の暫定の作業部会」を設置し、作業部会の共同議長にカナダのMr. Basile VanHavre、ウガンダのMr. Francis Ogwalを指名しました。
事務局の支援をうけた共同議長は、検討プロセスを管理して、作業部会からCOP15にドラフトを提出することとなりました。「SBSTTAやSBI、8(J)作業部会に対して、ポスト2020の検討プロセスに貢献するように要請する」という記述はあるものの、ほかのことも議論しなければならないSBSTTAなどの場とは別に、ポスト2020のことを専門に交渉する場を設定したということで、それだけ重要で、それだけ交渉が難航するだろうとの見方が共有されたと言えるでしょう。
ポスト2020のプロセスそのものの普及啓発を行い、あらゆるステークホルダーの参画を促進するために、(こちらもSBIの提案になかった)ハイレベルパネルを設置することを、事務局に対して、要請しました。
政府ならびにあらゆる関係者にポスト2020の検討プロセスに積極的に参加するよう求めるとともに、それぞれで対話の機会を設定し、対話の結果をクリアリングハウスメカニズムで共有することを呼びかけました。生物多様性関係のイベントを実施するときに、ポスト2020について検討する機会を設けることも求めています。
ポスト2020は、インスピレ―ションと動機付けを与えるようなミッションを持ち、自然との共生をうたう2050年ビジョンのステップになるものと位置付けました。
さまざまな検討のための会合開催には追加的な資金が必要なことから、このプロセスへの資金提供を締約国や関係諸機関に求める内容も入っています。
締約国、その他の国に対して、単独または共同で、自発ベースで、生物多様性条約、愛知ターゲットそして、ポスト2020枠組みに貢献する、生物多様性コミットメント(Biodiversity Commitment)を求めることを決定しました。
また、先住民地域共同体、あらゆる団体、利害関係者に対しても、COP15の前に、ポスト2020枠組みに貢献する、生物多様性コミットメントをSharm El-Sheikh to Beijing Action Agenda for Nature and Peopleへの貢献として行うことを求める決定もしました
その他、国連総会でのハイレベル会合の実施を国連総会に求めるなど、政治的に注目が集まる提案を行っています。
ポスト2020のためのプロセスについてもかなり手が加わりました。SBIでの議論が不十分であったのか、大幅に文章を書き替えました。
詳細なプロセス
「ポスト2020生物多様性地球枠組みの準備プロセス(PREPARATORY PROCESS FOR THE POST-2020 GLOBAL BIODIVERSITY FRAMEWORK)」と題された付属書が採択されました。
プロセスの基本原則
プロセスの基本原則と以下の原則を確認しました。*それぞれの原則に説明文がついています。
「参加Participatory」「包摂Inclusive」「変革的Transformative」「包括的Comprehensive」「触媒となるCatalytic」「知識ベース(Knowledge based)」「反復的Iterative」「効率性Efficiency」というSBIで合意された原則に加え、「ジェンダー配慮Gender Responsive」「視認性の高いVisible」「柔軟性Flexibility」という原則が加わりました。
準備プロセスの構造
本体決定にも書かれましたが、ポスト2020のための専門作業部会の役割が明記されています。専門作業部会は、少なくとも2回開催するものとして、必要におうじて追加的な議論をすること、会議の開催時期などはCOPビューロの助言やその他の会議のタイミングとあわせて専門作業部会の共同議長が決定することとし、常にアップデートされることになどの記述が書かれています。
また、ポスト2020は、SDGsやパリ協定、その他の環境条約とも関係性を持ちながら検討されるべきことも記されています
協議プロセス
協議プロセスは、地球・地域・国レベルあるいはテーマレベルの様々な協議を通じて行われるべきとし、あらゆる過程に、オブザーバーや、先住民地域共同体、NGOsその他の関係者の参画が必要であると定めています
検討文書
検討文書(2019年1月までに作成)に含むべき内容として、ポスト2020の構造や範囲、SMARTな指標、実施モニタリングの仕組み、実施の強化手法、自発的コミットメントの在り方、科学的な発見、主流化、他の条約の連携、ジェンダー配慮など多岐にわたる要素を特定しました。
主要な情報源
国別報告書、生物多様性国家戦略、名古屋議定書やカルタヘナ議定書の評価、GBO5、IPBESのビジョン2050のシナリオを含む、様々な報告書などの公的なもののほかにも、COP14のサイドイベントの成果などが指摘されています。
コミュニケーション・アウトリーチ
この検討プロセスそのものへの高い政治レベルでの参加を求めるコミュニケーションが重要であるとし、コミュニケーション戦略(COP14別決定)を活用して、プロセスの透明性と参加性と、恒常的な情報更新・公開を重要としています。
そして、ハイレベルパネルを設置し、この検討プロセスに国際社会の注目を集め、このプロセスそのものをより良いものにするための資金獲得にも期待する、広報活動を行うこととしています。
この節そのものも、COP14の交渉期間中に新設されたもので、プロセスそのもの視認性や注目度を高めることの重要性が締約国で共有されたものと思います。
また、ロジや資源について、CBD事務局が予算関連決定のもと、運営を担うことが書かれています。
(公財) 日本自然保護協会・IUCN日本委員会事務局 道家哲平