5月16日 SBI3が始まりました

生物多様性条約第3回条約の実施に関する補助機関会合(3rd Subsidiary Body for Implementation)が、2021年5月16日20時(日本時間)に始まりました。5月3日から1週間、SBSTTA関連のオンライン会合が開かれましたが、今週から1週間程度、条約の実施に関する補助機関が行われます。開会にあたり、エジプトのゼダン氏(COP14議長国代表)、エリザベス・ムレマ生物多様性条約事務局長から挨拶が行われました。

エリザベス・ムレマ生物多様性条約事務局長

開会挨拶を述べるエリザベス・ムレマ生物多様性条約事務局長

今回議題は、

・戦略計画の実施レビュー
・カルタヘナ議定書の実施状況評価
・ポスト2020枠組み
・資源動員や資金メカニズム
・能力養成、技術協力、技術移転、知識管理、コミュニケーション
・他の条約との協力
・実施の報告、評価について
・条約や議定書の効果の評価
・生物多様性の主流化
・ABSの仕組み
・ABS(多国間メカニズム)
・予算

など多岐にわたります。SBIも、日本時間夜8時から3時間、または、コンタクトグループを日本時間を午前1時に開催することがシャルロッタSBI議長から説明がありました。

議題3 戦略計画の実施レビュー

すでに、3月の会合で、20カ国以上の意見表明や書面での意見が出されておりましたが、途上国中心に、意見表明が行われました。この議題では、生物多様性国家戦略(NBSAP)の策定(国内目標の設定含む)が、条約の実施や、世界目標(愛知目標やポスト2020枠組み)の実現に重要という意見で一致が見られますが、そのために、能力養成・資源動員・技術移転が不足であり、ポスト2020枠組みの実施でも検討されるべきだという意見が相次ぎました。

先住民地域共同体やNGOは、愛知目標未達は、実施メカニズムではなく、生物多様性に悪影響を及ぼす補助金の撤廃や、NGOや先住民や地域共同体の参画など、重要な目標へのアプローチが足りなく、誤ったレビューは、ポスト2020枠組みの失敗にもつながると警鐘しました。

議題4 カルタヘナ議定書の実施状況評価

カルタヘナ議定書は、遺伝子組み換え生物(通常、Genetically modified organismを使用しますが、生物多様性条約は、1992年当時の用語で、Living modified organism:LMOを使用)に関する条約の実施強化を狙って、コロンビアのカルタヘナで開催された会議で合意された議定書です。議定書は、採択後、各国の批准手続きが必要な条約に準じる合意事項になります。生物多様性条約196カ国のうち、173カ国がカルタヘナ議定書を批准しています。

その実施状況を評価するこの議題でも比較的途上国の発言が多かったように思います。議題3の「条約の実施レビュー」と同様、能力養成や技術移転、普及啓発、国際協力の重要性が指摘されました。また、実施状況に関する各国のレポート数が多くないという問題を指摘する国もありました。条約の実施よりも、より科学技術的要素が大きいことから、経済との連動や、ABS(遺伝資源へのアクセスと、利用から得られる利益の公正衡平な配分)、遵守委員会の運営などのカルタヘナ議定書特有の課題指摘が多くありました。

オブザーバーからは、ジェンダー主流化やIPLCやユースへの完全で十分な参画の重要性などの指摘がありました。また、遺伝子源をめぐる新技術の加速に対して、社会経済的影響も含めたリスク評価や、完全な参加の重要や、名古屋クアラルンプール補足議定書の批准加速が重要という指摘が行われました。

この議題も、CRP文書が作成されて、プレナリーで議論することが重要。

議題5 ポスト2020枠組みについて

5月28日のプレナリーで議論することが宣言されました。

5月17日は、資源動員戦略や資金メカニズムに関する議題を検討することが紹介されました。

 

道家哲平(IUCN-J事務局長/日本自然保護協会)