8月26日 第3回ポスト2020枠組み作業部会 CG2

8月26日20時(日本時間)から、コンタクトグループ2が開かれ、行動目標の1-8(生物多様性損失を食い止める)について議論が行われました。3時間半(4日目にして延長するようになりました)の議論時間のうち、ターゲット1だけで2時間近くの時間を使ってしまいました 。アプローチとしては、ファーストドラフトと、2日目や3日目にプレナリーで出された意見を集約した文案(Consolidated text)が示され、集約文案に各国の提案したい要素を加えつつ、締約国が用意した代替案全文もをいったん共有するという作業を画面を見ながら行うという手法です。各国の意見への賛否の表明はあまり行われませんが、時々チャット上で議論が交わされることもあります。予定では、第9月1日に第2回めのCG2が開かれます。

第2回ポスト2020作業部会(2020年2月イタリア、ローマ)の様子(

第2回ポスト2020作業部会(2020年2月イタリア、ローマ)の様子(

ファーストドラフト 行動目標1 の議論

Ensure that all land and sea areas globally are under integrated biodiversity-inclusive spatial planning addressing land- and sea-use change, retaining existing intact and wilderness areas.

地球上のすべての陸地と海域が、生物多様性を包括した統合的な空間計画の下に置かれ、土地・海洋利用の変化に対応するとともに、既存の手つかずの原生地域を維持する。

議論の焦点となったのは、①「すべての(=100%)」または、50%(ゼロドラフト)にするか、②維持すべき対象を原生地域(Semi-natural)に対して高い原生性を持った生態系(highly intact ecosystems)、半自然(semi-natural)や脆弱な地域などのキーワードを入れるアイディア、連結性(Connectivity)のコンセプトを入れるアイディアなどが出ました。

また、land and seaの表現では、淡水が入らないのではないかという指摘やland and sea をterristrial and marine area(or ecosystem)という議論もあり、area(地域)とecosystemとする場合の違いなどは、発言者が描いている定義が見えないと、違いの趣旨がつかめない議論もあります。日本にいるとなかなか気づかない視点ですが、先住民地域共同体が関わる土地と、中央政府による土地利用計画がコンフリクトを起こさぬよう、先住民地域共同体への配慮などを求める声も多くの国から上がりました。

昨日と同じく、たくさんの意見が出て、原案に修正案が加わって5行以上に渡る一文ができたところ、分かりやすく具体的な目標に指標という意見が出て、振り出しに近いところに戻るという進行が続いています。

ファーストドラフト 行動目標2 の議論

Ensure that at least 20 per cent of degraded freshwater, marine and terrestrial ecosystems are under restoration, ensuring connectivity among them and focusing on priority ecosystems.

連結性を確保し、優先すべき生態系に焦点を当てながら、劣化した淡水、海洋、陸地の生態系の少なくとも20%が回復活動の対象となる

ここでは、数値目標の設定の仕方として、%で表現する場合と、x億ヘクタールという面積の絶対値で表現する場合の意見がありました。割合の目標を設定する場合は、回復すべき劣化した生態系という母数を設定の上、20%の回復を目指すことになるため、時間がかかるという意見がある一方、面積は困難が多いとして、否定的な意見も出ました。表現として、回復されるのか回復の措置(回復するかどうかは不明)が取られているのかという、成果(Output)か対策(Input)かという視点も検討すべきポイントのようです。劣化した生態系にさらに形容詞をかけて(つまり再生すべき地域をより絞る形で)劣化した重要生物多様性地域(KBA)とするアイディアや、産業化移行に劣化した生態系という言い方でベースラインを目標設定に書き込む意見などもでました。

具体的な表現は出ていませんが、過去に劣化した地域の再生はわかりやすいですが、将来新たに劣化した地域の再生を、数的目標設定のなかでどう扱うかというのも今後のまとめ方では課題になるかもしれません。劣化した地域の再生と、再生させた地域同士やすでにある健全な生態系との連結性をどう確保するかという検討も課題のように思いました。

 

 道家哲平(IUCN-J事務局長/日本自然保護協会)