8月25日 第3回ポスト2020作業部会 本会議とコンタクトグループ1

8月25日20時(日本時間)より、第3回ポスト2020作業部会の本会議と、コンタクトグループ1がオンラインで行われました。

2019年1月に開催されたポスト2020枠組みアジア太平洋地域会合(名古屋国際会議場)。ポスト2020の検討は、愛知から始まりました

2019年1月に開催されたポスト2020枠組みアジア太平洋地域会合(名古屋国際会議場)。ポスト2020の検討は、愛知から始まりました

本会議は、昨日に続き、加盟国の発言が行われ、非加盟国(米国)、オブザーバーと移りましたが、最後はほとんど時間がなく、先住民、ユース、女性グループの発言のみで、残りは声明を公開するだけとなりました。発言終了後、下記の範疇を扱う4つのコンタクトグループを設立ことが宣言され、コンタクトグループ1が速やかに開催されることが説明され、本会議(プレナリー)は終了となりました。今後、毎晩、コンタクトグループが開かれていきます。

・CG1:ゴール・マイルストーン・全体構造・セクションA-E
・CG2:ターゲット1-8
・CG3:ターゲット9-13
・CG4:ターゲット14-21とセクションH-K

 

 

コンタクトグループ1 全体構造など

コンタクトグループは9時45分から11時45分(日本時間)にかけて行われました。進行の仕方としては、ゴールに対する意見を出し合ったあと、マイルストーンを議論し、その他の文章などについて議論するとの指針が進行役(Co-lead)より、示されました。進行役の意図とはおそらく異なり、ゴールAだけでも非常に多様な意見が出され、多くの時間(2時間のうち1時間50分)を割きました。

ファーストドラフトのゴールA

The integrity of all ecosystems is enhanced, with an increase of at least 15 per cent in the area, connectivity and integrity of natural ecosystems, supporting healthy and resilient populations of all species, the rate of extinctions has been reduced at least tenfold, and the risk of species extinctions across all taxonomic and functional groups, is halved, and genetic diversity of wild and domesticated species is safeguarded, with at least 90 per cent of genetic diversity within all species maintained.

自然生態系の面積、連結性、健全性を少なくとも15%増加させると共に、すべての種の健全で回復力のある個体群を支えるすべての生態系の完全性が強化され、絶滅割合が少なくとも10倍減少し、すべての分類学上および機能上のグループにおける種の絶滅のリスクが半減し、すべての種における遺伝的多様性の少なくとも90%が維持されることで、野生種および家畜種の遺伝的多様性が保護される。(仮訳)

議論

この文案に対して、チャットも含めて、さまざまな修正案などが、政府やNGOや研究機関によって投稿されたり、説明されました。議論としては、このゴールが含む「生態系」「種」「遺伝的多様性」ごとにどのような2050年の状態になっていたいかという議論ですが、意見としては、具体的な数字の増加にふれる意見や、実施可能性やベースラインの明確さから要素を限定(優先度を明確化)する意見、シンプルさやコミュニケーションのし易さからの修正の意見、他国のアイディアに賛否を示しつつ、重ねた提案を行うものなど、追いきれない意見も多々ありました。

例えば、「種の絶滅リスク」を「固有種の絶滅リスク」という案が出たり、「人為由来の絶滅をなくす」とか、すべての種のではなく「よく知られた種」の遺伝的多様性という表現が提案されたりしました。言葉の難しさでもありますが、15%増加(increase)という単語を、15%回復(restore)と変えると、回復は、「劣化したものを戻す用語」なので、目標の意欲度が下がるといった解釈を共有し合う場面もありました(口頭であったり、チャット上であったり)。英語ネイティブの国や交渉経験豊富な国は、セッション中に新しい提案を行ったりする場面も見られました。生態系の完全性は測れるのか?という口頭での発言が国から出されたのに対し、チャット上で、科学コミュニティの参加者が、科学的な妥当性をコメントするなどもあり、議論のライブ感は対面よりも活発ですが、フォローするのにはなれが必要とも感じます。

COP10のときもそうでしたが、シンプルにしたい(保全上重要なコンセプトが省略される)、実施可能性を考えて優先度や限定的な表現にしたい(形容詞を足していくので文章は長くなる。意欲度が下がる)、包括的な単語にしたい(学術的な定義がある言葉でなくなるので曖昧さが生じたり、進捗把握ができなくなる)など、今日の時点ではまとまる気配が見られなかったように思います。

ゴールBについても議論が及びましたが、終了まで10分の時間を使っての意見交換のため、次回のレポートで論点などはまとめたいと思います。

道家哲平(IUCN-J事務局長/日本自然保護協会)