健康のCRP文書採択、所要時間20分

ジュネーブ会合も終わりにさしかかってきました。現在提示されているスケジュール通りであれば、28日ですべての会合が終わる予定になっています。(が、ほとんどがスケジュール通りに進行していないため、現在提示されているスケジュールも変更される可能性が高いと思っています)

思っていた以上に「議論の進め方」についての議論に時間を要することが多く、ほとんど中身の議論までたどり着けていません。

実際に現地時間25日の午前は、SBSTTAの本会議が予定されており、海洋・ポスト2020枠組・健康、と予定していましたが、前半の時間(海洋の議題の議論をする予定だった時間)のほとんどを海洋の議題の“進め方”の議論に費やし、最終的に十分な議論をしないまま、ポスト2020枠組の議題に移りました。

3時間半程度の時間で3つの議題を扱う予定を組むこと自体がそもそも難しいのではないかとは思いますが、この時間帯で予定されていた「生物多様性と健康」の議題はわずか20分で強引にCRP文書を採択しました。

前回の記事でも紹介したとおり、既にコンタクトグループが3回開かれており、さらに昨日24日のお昼には Friends of SBSTTA Chairが開かれました(Friends of Chair会合は合計2回開かれたそうです)。

公開されたCRP文書は、採択を目指していた附属書「生物多様性と健康の世界的行動計画(GLOBAL ACTION PLAN FOR BIODIVERSITY AND HEALTH)」がすべて消え、わずか2ページ半となっていました。

海洋、ポスト2020枠組と議論を進め、午前の残り時間が20分程度ではありましたが、たくさん議論も重ね、文書自体も短いため、すぐに終わると期待したSBSTTA議長がCRP文書の採択を目指し、議論を開始しました。

コンタクトグループの共同進行役からの報告では、Friends of chair会合にて一部ブラケットが残っているものの、現在のCRP文書についてだいたい合意ができたこと、世界的行動計画についても前向きに検討することができたとの報告がありました。

しかしこれに対してベルギーが、世界的行動計画に関するドラフト案が成果として出てこなかったためにCOP15で議論できないことに対して厳しい見方を示し、十分な成果だとは言えないと発言しました。

それとは別の観点で、非締約国として参加しているアメリカから第4パラグラフにマイナーチェンジ(少しだけ文言を加筆修正する)を提案すると、ニュージーランドがこれを支持しました。

しかし、この後からはだんだん話がまとまらなくなり、中国が、Friends of chair会合で合意した内容をいま変えるべきではない、と発言し、メキシコがこれをサポート。メキシコはブラケットを残さないようにする方向を勧めました。議長は様々な状況を勘案し、元の文書のままにする方向にもっていこうとしましたが、ニュージーランドはこれを受け入れずに代替案を提案しました。このパラグラフは最終的に、オーストラリアの提案もあって、ブラケットとして扱うことに落ち着きました。

度々進め方について議論する進行陣

度々進め方について議論する進行陣

海洋の議題の時から進め方について不満が多かったスイスが、お昼休憩前にブラケット部分を検討し、文書を綺麗にしていく方向性を示した矢先、ブラジルがこれまでとは別のパラグラフ5(主に今後の進め方に関する内容が記載)をFriends of chair会合に参加できず、十分に検討できていないためブラケットにしたい、と発言しました。

議論が混乱していく中、UKがアメリカからの提案部分の話をはっきりさせた方が良い、とブラケットを残す提案をし、Friends of chair会合での文言に戻そうとしていた議長もそれを諦め、時間的にも議論を終えようとしました。

しかし、ブラジルと同じく昨日のFriends of chair会合に出席が叶わなかった日本とナミビアが新たな文言追加をしたいと発言。これを聞いていたエジプトが、時間が限られているから、新しいアイディアはメールで送って、Lドキュメントの準備をした方が良いと発言しました。最終的に、Friends of chair会合で残されたブラケットは議論されないまま、新たなブラケット部分が増え、時間切れとなり、すべてLドキュメントにするときに含めることとして、ブラケットのまま強引にCRP文書を採択しました。(時間を理由にオブザーバーからの発言機会はありませんでした)

短時間で終わると考えていた議長の思惑からは程遠く、また検討部分が多く残る文書となりました。これまで何度か生物多様性条約の会合には参加していますが、こんなに強引な進行は初めて見たように思います。

Friends of chair会合はオブザーバーが傍聴することができないため、なぜ世界的行動計画の附属書がなくなってしまったのか私には経緯がわからないですが、CGでの議論の際にほとんどがブラケットとなっていたため、多くの部分で合意ができず、時間的にも実務的にもやめた(諦めた?)のではないかと推測しています。

生物多様性と健康の議題にかかわらず、進め方そのものに対する不満や混乱は他の議題でも生じており、各国交渉官の方の疲労度の高まりも見受けられるため、全体的に混迷しているように思います。少しずつ前進はしつつも、個人的にはまだいまのところ今回の会合の成果を掴みづらい印象です。

矢動丸琴子
一般社団法人Change Our Next Decade