違法・持続不可能な採取によりアワビが絶滅危惧種
12月9日にIUCN(国際自然保護連合)が発行するレッドリスト(絶滅危惧種リスト)の更新が発表されました(写真1)。今回の更新で、IUCNレッドリストで評価されている生物種(150,388種)のうち、約30%に当たる42,108種が絶滅危惧種に指定されることとなりました。
今回の更新のハイライトは、人間活動の影響による海棲生物の絶滅危惧種指定です。
その中でも、Haliotisアワビ属 54種を評価したうちが20種が絶滅の危機にあると評価されました。違法・持続不可能な採取、疾病、汚染、気候変動により個体群が激減したためだそうで、南アフリカのアワビ(Haliotis midae)については、犯罪組織の関与も言及していました。
国際的な野生生物取引の経済効果は凄まじく、年間数千億〜2兆円にのぼるとの推定がされています1。このことから麻薬・武器取引や人身売買と並ぶ、大規模な違法な国際取引となっています2。
愛知目標に次ぐ2020年〜2030年の国際目標の中に、種の採取・取引・利用を合法および持続可能にする目標5が含まれています。これまで、野生生物の違法な国際取引における日本の犯罪組織の関与も国際的に問題視されていることから3、この目標が今回のCoP 15で採択され、日本国内の目標もしっかりと策定されることが期待されます。
(JWCS 野生生物保全論研究会 安家叶子)
【引用文献】
1: Barber-Meyer, Shannon M. 2010. “Dealing with the Clandestine Nature of Wildlife-Trade Market Surveys.” Conservation Biology 24(4): 918–23.
2: Justice, Commission on Crime Prevention and Criminal. 2003. “Illicit Trafficking in Protected Species of Wild Flora and Fauna and Illicit Access to Genetic Resources.” Economic and Social Council.
3: Report of the U.N. Secretary-General (2002), p. 6; Report of the U.N. Secretary-General (2003), pp. 9-12. See also Jonathan Kazmar, “The International Illegal Plant and Wildlife Trade: Biological Suicide,” U.C. Davis Journal of International Law and Policy, vol. 6, no. 105 (Winter 2000).