COP15-10日目(12月16日)の進行

19日の会期終了が近づいてきた16日。外は降雪警報がでてあっという間に10センチ近く雪が積もりました。17日までに技術的交渉を終えるようにとの議長指示のもと、急ピッチでの交渉会議が行われました。

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サイドイベントにも、閣僚級の参加が見られるようになりました。生物多様性クレジットに関するイベントで開会挨拶をするスウェーデン気候環境相のロミーナ氏

第1作業部会は、引き続き全体部会を開けずに、資金メカニズム、立案・報告・レビュー、モニタリング枠組み、DSI、そして、GBFのコンタクトグループが開かれました。GBFは、未明まで続いていました。GBFは、一応、議論を終えた形です。

第2作業部会は、合成生物学(Synthetic biology)、気候変動(Climate change )、健康Health、多年度作業計画(Programme of work、名古屋議定書4条4項特別措置(Specialized ABS instruments)、名古屋議定書多国間利益配分メカニズム(NP 16 Nagoya Protocol Article 10)をまとめました(一部留保あり)

合成生物学は、バランスの良い結果との分析を聞きました。新規の緊急課題になる、ならないの決断は特にしめさず、専門家会合と、ホリゾンタルスキャニングの検討が書かれています。

資源動員は、議長提案文書が回覧され、意見交換がされたとの情報がありますが、引き続き、GEFに信託基金を作り、独立の基金構築の準備を行う2ステップや、HAC for Nature and People加盟国が、その加盟国のなかでの資金メカニズムを考えるというアイディアも出てくるなど、予断を許さない交渉が展開されているようです。

立案・報告・レビューでは、いつNBSAPを更新して、その情報を、補助機関で議論するかCOP16で議論するのか(開催時期が異なるので、いずれも提出タイミングに影響)などを5時間議論したようです。

GBFの指標枠組みは、ほぼ作業を終えました。引き続き、精査進める指標とされ、専門家会合の設立などについて内容を詰めました。

GBFについては、午後に行った行動目標以降の章、I、J、Kその他、行動目標16、17、13は、ゴールB、Cは多くのブラケットのままとなりました。

4年の交渉の末

GBFは、17日までの実務者協議を終える議長指示の元、会合が開かれていましたが、行動目標17(バイオテクノロジー)は「あらゆる国において、生物多様性条約8条(g)項や19条の実施のための科学的措置の実施に関する能力強化を確立する。Establish strengthen capacity for and implement science-based measures in all country for the implementation of Article 8(G) [and Article 19 of the Convention」といった意欲的とも思えない着地を見せるなど、多くの交渉担当者ががっかりするような帰着を迎えたものもあります。(注:あくまでも実務者協議の成果であって、正式決定はまだです)

遺伝子組み換え技術の推進側と慎重側との双方の意見の隔たりがあるので、何が理想だったかはその立場にもよります。以下個人的な意見ですが、今後も研究開発が進むこの領域の2030年の目標としては、もっと具体的に、リスク評価や、技術そのものも多角的評価(ホリゾンタルスキャニング)の充実、環境だけではない社会経済的な影響評価や適切なコミュニケーションや理解の推進等が入っていた方が良かったと考えています。

後半になって、ロジカルと思えない対立も鮮明化しています。気候変動もまとまったとしたものの、「自然に根差した解決策(Nature-based Solutions」を入れるなら「共通の差異ある責任原則(CBDR)」を入れないと同意しないという対立軸が最後まで解決できないまま、次回のSBSTTAにまで先送りしようというとなりました(こちらもWG2判断です。プレナリーでの決定はまだです。この言葉をめぐる争いは、GBFにもあるので引き続き展開を見ておく必要があります)。

また、IPBESとIPCCの合同レポートも、それぞれプラットフォームの総会で承認した文書でないことから、言及しないままの文書になったようです。

同様の先送りは、名古屋議定書第4条4項関係も次回NP-MOPで検討することが決まりました。

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16日からの降雪で、モントリオールは全く異なる風景に。2030年という未来も、発信も見通せない状況になりませんように

 

 国際自然保護連合日本委員会 事務局長 道家哲平(日本自然保護協会)