公平性の担保と「ウォッシュ」

国連生物多様性条約には、生物多様性の保全や持続可能な利用だけでなく、環境正義という概念から、公平な利益配分についても扱われます。

「環境正義(Environmental Justice)とは、肌の色や出身国、所得の多さにかかわらず、誰もが公正に扱われ、安全な環境で暮らせるようにと提言すること。」
(引用:https://ideasforgood.jp/glossary/environmental-justice/

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ポスト愛知目標では、目標22を筆頭に、いくつかの目標の文言の中で「女性」や「若者」、「先住民地域共同体(Indigenous people and local communities)」が入ることが議論されており、生物多様性条約の交渉過程における参画が保証されています。

例えば、ポスト愛知目標の目標11では、災害や異常気象と援助の公平性が言及されています。

[非公式グループが整理した交渉文書(IGテキスト)]

Restore, maintain and enhance nature’s contributions to people, including ecosystem functions and services, such as regulation of air, water, [and climate], [soil health], and pollination, as well as protection from natural hazards and disasters, through [nature-based solutions and ecosystem-based approaches], [through payment for environmental services] for the benefit of all peoples and nature.

ここで”all people”が入るということは、“all”と言及しなければならない課題であるからです。

ニュース配信サイトであるBusiness Insider Japanで、興味深い記事を発見しました。
https://www.businessinsider.jp/post-197813

この記事では、
1)世界各地で起こる自然災害時に女性の死亡者数が男性の死亡者数に比べ極めて高いこと
2)その差は男女の生物学的な特徴の違いによるものではなく、社会的・経済的な立場の不平等と密接に関係すること
が指摘されています。

また、今年3月に開かれたジュネーブ会合の国際会議レポート「“Stop the killing” – CBD Allianceアクション」においても、環境保護の活動を行った多くの先住民族が殺害されたことに対するアクションが書かれています。一読ください。

COP15に参加してみて気づいたことの一つとして、女性や若者、先住民地域共同体がこの条約に果たす役割は大きいということです。COP15でも活発なロビー活動やイベント開催が行われていました。

一方で、語尾に「ウォッシュ」がつくような(例えばユースウォッシング)、見てくれだけの支援や公平性を目指す活動が多く出てきているようです。

ユースウォッシングは、特に気候変動で活発となったユースの活動や参画の文脈で使われることが多いようですが、日本語で「ユースウォッシング」と調べてもあまり出てきませんでした。

以下の英語記事では、「多くの若手専門家は、公式な交渉に直接参加したり、独自の視点で評価されたりするのではなく、単なるチェックボックスにチェックを入れる作業として利用されている(仮訳)」と指摘しています。

(原文:And rather than directly being involved in official negotiations or valued for their unique perspective, many young experts believe they are instead being used simply as a box-ticking exercise.)

https://www.euronews.com/green/2021/12/23/what-is-youthwashing-and-is-it-dangerous-for-the-climate-movement

発言する機会や参画する機会が与えられたとしても、それが今後の政策や条約に反映されなければ意味がないと、インタビューに答えるユースの声が上記記事に書かれていました。

“大人たち”のPRやマーケティングのためだけに、ユースが利用されることは決して許されないことですが、対立関係と捉え妥協するのではなく、コミュニケーションを通じた歩み寄りが大事ですね。

COP15も後半に差し掛かったところで、ポスト2020生物多様性枠組みの交渉においても、各締約国が歩み寄っている場面が多く見られてきました。さて、予定通り19日に終わるのでしょうか。

(JWCS 安家叶子)