COP12主要決議−持続可能な開発、多国間条約連携

COP12の主要成果であるピョンチャンロードマップは、愛知ターゲット中間評価と実施・支援メカニズム、資源動員、持続可能な開発と生物多様性、多国間条約連携からなるとされています。

持続可能な開発と生物多様性

この議題は、ポスト2015開発アジェンダと持続可能な開発目標(SDGs)へのメッセージ、貧困撲滅のための生物多様性、健康と生物多様性の3テーマが含まれます

SDGsについては、この9月に発表されたSDGsのドラフトに生物多様性関連の目標があることを歓迎し、参加者にこのSDGsの議論に参加すること、事務局に対して、その成果を活用することを求めました。

貧困撲滅のための生物多様性では、貧困撲滅(及び関連するポスト2015年開発アジェンダ)に対して生物多様性が果たせる役割を認識し、貧困撲滅計画に生物多様性を組み込むためのチェンナイ(インドの地名)ガイドラインをまとめ、その適用を締約国に奨励しました。

生物多様性と健康については、WHO(世界保健機関)との連携を歓迎するとともに、関連する事業との連携を奨励することとなりました。One Health approachという取組みが進んでおり、食料(栄養)や安全な暮らしと生物多様性の関係を明らかにすることになります。

また、アフリカ諸国の強い要請により、エボラ出血熱に関する文書も入りました。パラ9(d)で、事務局に対し、生物多様性の損失と病気出現および関連する管理実施の共通原因を含めて、生物多様性とエボラ出血熱といった伝染性病気の発生との相互関係について、および、生物多様性の保全と持続可能な利用、生態系管理が病気出現を減少させる可能性や、人々の健康へのリスクを減らす可能性について手に入る情報をまとめ、この観点での更なる活動ステップについて、特定することを求めました。

他の条約間連携(議題29)

ピョンチャンロードマップの一つとされる条約間連携は、CBDの他の条約との関わりを変える決議となりました。

生物多様性関連条約連絡グループに対する活動の推進を呼びかけることは従来もしてきましたが、それに加え、CBDの下に地域バランスをとった非公式助言組織を各地域代表2カ国、COP運営委員(国)で構成し、この非公式助言組織に、各条約事務局を招いて愛知ターゲット達成のための協働を呼びかけるという合意を行ないました。

通常条約間は対等の関係なので、この非公式助言組織の取り組みが、各条約事務局を拘束するものではないですが、大きな影響を果たすことになります。

愛知ターゲットが、ラムサール条約・ワシントン条約・植物保護条約(新しく生物多様性関連条約に仲間入り)・ボン条約(日本未批准)などの生物多様性関連条約にとって、お題目でなく、事務レベルでも共通の目標にしていくステップを今回決めたことになります(*決議はもっと控えめな表現です)

追加として

多年度計画(MYPOW:Multi Year Program of Work)という議題は、ピョンチャンロードマップの議題には入っていないようですが、今後のCOPで何を中心的に議論するかを定めるという意味では、ロードマップの一環だと個人的に思っています。予定を見る限り、COP13(メキシコで2016年11月)は議題数も多いことが分かります(COP14=2年前大きなこと決めても遅いですからね)

COP13(2016)

-愛知ターゲットの評価

-資源動員戦略の進捗報告

-農業、漁業、林業セクターに関する関連分野に関する生物多様性の主流化と統合を通じた国レベルの実施の強化に対する戦略的行動

-12条(研究とトレーニング)やキャパシティービルディング、GBO4の成果を踏まえた更なる検討

-条約と議定書の統合

-第6次国別報告書の指針

-ポスト2015国連開発アジェンダと持続可能な開発目標の示唆

-GEF第7次増資計画の決定

COP14(2018)

-愛知ターゲットの評価

-2050年ビジョンに向けた長期的戦略方向性

-人と自然の共生に向けたアプローチ

-条約と議定書のプロセスの効果の検討

-生物多様性関連条約間連携

COP15(2020)

-愛知ターゲットの最終評価(IPBESのグローバルアセスメントからのインプットも含む)

-戦略計画2021ー2030 資源動員戦略含む実施手法、2030年までの関連目標

-GEF第8次増資の決定

 

(公財)日本自然保護協会 道家哲平