COP12決議紹介−特徴的な決議
いくつかポイントとなる決議を紹介します。
伝統的知識の保護に関する8(J)と慣習的利用に関する10(c) (議題19)
8(J)については作業計画の進捗を確認し、慣習的利用に関する行動計画をまとめました。また、8(j)に関する作業部会の開催も決定しました。注目は、1993年以降から続いていた長い交渉の末、”ingigenous and local community” という表現が、”indigenous peoples and local communities”という国連先住民宣言などでも使われている世界スタンダードの表現に変わることが決まりました。変更によって条約上の義務関連が変更することはありません。この用語の問題は、1992年の生物多様性条約交渉時にまだ正式な表記が決まっていなかったことに起因しますが、20年以上かけて、合意されたものです。カナダが、国内法の関連で、用語の使い方によって扱いが変わることから、”唯一”頑に変更を拒否していたのですが、先住民地域共同体グループの説得もあり、ついに実現したものです。
合成生物学(新規の緊急課題)(議題24)
非常に難しい議論で、事前の準備会合でもほとんどまとまらず、海外NGOの関心も高かった合成生物学(synthetic Biology)については、無事に合意に至りました。各国に効果的なリスクアセスメントと管理手続の確立や予防原則の適用を求めるとともに、専門家会合を開催することとなりました。また、フィールドトライアルは適切なリスクアセスメントを行なった後のみ承認するよう求めました。
生態系保全と回復 (議題26)
生態系の保全と回復については、GBO4でも関連する目標の14、15の進展が見られないことかに懸念を表明し、復元におけるエコシステムアプローチの採用、公的セクターや民間セクターや市民との共同を含めた包括的な保全や復元の枠組みを締約国に奨励しています。民間(市民や企業)によって守られている地域の保全や回復の取組みを認識し(これまでこのような言及はほとんどなかった)、活動の継続を奨励しました。また、沿岸湿地が極めて重要ということを強調し、政府に沿岸湿地の保全と復元に注意を払うことを求めています。
ユニークなこととして、2月27日を世界国立公園・保護地域の日にすることを国連総会に提案することも決まりました。
(公財)日本自然保護協会 道家哲平