SBSTTA-18 世界植物保全戦略への意見

世界植物保全戦略(Global Strategy for Plant Conservation:略称GSPC)は、愛知ターゲットの陰に隠れていますが、COP10の成果物の一つで、愛知ターゲットよりもっと具体的な目標設定がされている、植物に特化した行動計画です。

世界植物保全戦略のウェブサイト

SBSTTA資料はこちら

 

コメント 

このGSPCの実施状況について、各国から実施状況についてほとんど報告が出されていなかった記憶があるのですが、非常に多くの国から重要性が指摘されました。特に、植物園中心に展開している現状を脱皮し、多様な主体の参加を呼びかけることなどは様々な国が指摘していたところです。

GSPCには目標値があるのですが、それを図る指標、実施状況をチェックする機関が存在しないことから、指標に関する専門家会合で扱ってはどうかという意見と、資金的なこともあってそれは難しいという意見で分かれていたようです。

 

各国からの意見

メキシコ:植物保全戦略は、愛知ターゲットにも貢献するもので、独自の植物保全戦略を作っている。行動計画などもまとめていて、実施委員会には政府や団体や研究機関が入っている。植物保全戦略の目標11(国際取引)などにも取り組んでいる。サンタクルスで、植物委員会(CITESのかな?)を開き、植物保全戦略の重要性などについて文書をまとめた。キュー植物園やIUCNなどが関わった。BGCIのサイドイベントを明日開催予定。絶滅危惧種の保全について、進展がほとんどない。COPでもっとGSPCの実施と経験の共有を!

フランス:植物保全戦略の重要性。キャパビルの重要性。UNESCOによるコロキアム(ネットワーク?)の取り組み紹介。GSPCの国際的、地域的な取り組みの推進に関する意見を提出した。

マレーシア:GSPCの1(植物のオンラインデータベース作り)の進展を歓迎。地域の植物保全の戦略を考える上で非常に重要な進展。ほとんどの目標に進展が無いことから、決議案に賛同したい。

南アフリカ:わが国は植物保全にとって重要な国。低いレベルので実施に対して、いろんな国の実施事例をもっと活用して他の国の行動を呼びかけていくことが重要。いくつかの目標は植物保全のグループを超えている。伝統的知識、外来種、教育など。農業などのセクターが入る必要があるが、これはコミュニケーションで解決するものではなく、多様な主体の参画を呼びかける内容の決議案に入れていきたい。

セネガル:植物保全戦略の実施がすすんでいないといのは、アフリカとしても大きな懸念。会議文書では、なぜ多くの目標が達成しそうにないのかという理由についてもっとフォーカスするべき。ターゲット1(オンラインフローラ)しか達成しそうにないのは残念。

日本:私たちの国では、GSPCだけの戦略は作っていないが、NBSAPの中で対応している。また、100年以内に植物の200〜500種近くが絶滅という研究成果が出された。いくつかの文書に、コメント修正をしたい。

スイス:GSPCについて政府としても対応しているが、維管束植物のレッドリストをみても危機低状況が明らか。多様な主体の協働事業が欠かせない。分類の領域での進展を歓迎。植物保全に関するプラットフォームの重要性。植物園等の活躍に期待。その成果をCOP提言に入れていきたい。IPBESの成果が、GSPCにも貢献することを指摘したい。

タイ:ほとんどの目標について、進展がほとんどない、特に、7、10、15の目標。実施強化について締約国の呼びかけ。そのために愛知ターゲット11と12の重要性を指摘。ユネスコに対して、植物学に関する能力育成の強化を奨励。

ノルウェー:実施のモニタリングと、植物保全戦略の指標が重要であろう。CBDとITPGRとの連携が重要。名古屋議定書の関係者とのワークショップなども有意義であった。ITPGRとCBDでもっているファンドとの活用が大事。

キューバ:GSPCの実施に対する資源動員、資金援助が必要。植物多様性の中心的地域の国を中心に、CBDの関連会合でももっとGSPCを議題に入れていくことが重要。

モルジブ:愛知ターゲットとGSPCの両者の連携が重要である(日本に賛成)。モルジブのように植物の多様性が限られており、開発や住宅開発などの危機がある。保全と開発マインドとのバランスがまだ悪いが、特に、決議の2a,bが重要。資源に関してキューバを支持。

エチオピア:植物保全戦略を実施するための、手法や技術は過去数十年にできたもので、それらの文書等へのアクセスが限定されていたが、オンラインツールキットがBGCIによって作られて大きな進展。

インド:多くの国が、GSPCについてほとんど第5次国別報告書などでも書かれていないことは問題。GSPCの実施方法について、愛知ターゲット達成というおおきな枠組みの中で考えていく必要がある。IPBESの活動との連携

オーストラリア:CITESの植物委員会の記述について微修正したい。

エクアドル:GSPCは国家戦略でカバーされていくことが重要。生物多様性に関する研究所を作り、モニタリング等を実施、森林管理などに役立てている。固有植物のレッドリストを作ったり、植物のマップ等を作って対応している。実施には、多様な主体の参加とキャンペーンも含めた活動が必要。。

エクアドル;植物に関する情報を持っている「その他の機関」の協力が必要、先住民などの参加も重要。

コスタリカ:植物保全の組織や、植物マップなども作っており、森林の拡大なども実施。国家戦略と植物保全戦略(GSPC)の連携の重要性。

コロンビア:2013年に種の保全に関するワークショップなどを実施。GSPCの目標を実施に持っていくのが大きな課題である。資金、協力の呼びかけ、先住民の参加などが重要。

中国:GSPCについては、二つの事業を展開。植物の研究などを実施、2013年に植物のレッドリストを作成。それには、数百人の研究者が数千の植物のリスクを判定。生息域内保全にも着手。絶滅危惧植物について5000の保全地域を指定。GSPCの国の戦略と実施の手法をまとめることが重要。

ブラジル:先住民、GSPCが持続可能な開発にも貢献。GSPCの活動は、環境省下のリオデジャネイロ植物園が音頭。絶滅危惧リスクアセス、保全アクションプランの構築が重要

ギリシャ:固有種が多いため植物保全戦略が重要、6000種の植物種があり、地中海地域でも豊かな地域。重要植物地域(Key Plant Area)の特定や数値目標を打ち立てている。IPBESの成果を活用したい。

UK:モニタリングの改善、GSPCについて各国のレポートを増やす必要がある。指標に関する専門家会合の開催を提案している国があるが、それが資金の制限の中で実施できるかどうか判断する必要がある。

ノルウェー:IPBESの成果物をGSPCに活用することに同意。植物保全戦略は数値目標が明確なので、どんな指標が考えられるか検討した方がよい。ピョンチャンロードマップにも組み込むべき。

スーダン:アフリカ地域に同意。キャパビルの重要性を強調したい。

ベラルーシー:国内の機関で、成果をモニタリングするための取り組みがなされているが、追加的な資金が必要で、名古屋議定書の発効に関心。

東ティモール:国内の生物の情報についてほとんど情報がなく、絶滅危惧種の特定が必要で、そのための技術提供や資金支援が必要である。

セントルシア:小島嶼国にとって植物保全は、社会経済的な視点でも、水のような生態系サービスにとっても重要であり、エコツーリズムセクターの参画も重要。貧困撲滅戦略にも関わってくる。新たにできた持続可能な開発賞の元に、生物多様性に関する法律もつくった。

ILC(IIFB):植物の遺伝的多様性を確保することに役割。伝統的な慣習や知識は先住民や女性に依存している。植物園での既存の教育プログラムでは不十分であり、先住民の重要な役割を認識するプログラムも重要である。

(公財)日本自然保護協会 道家哲平