WGRI2日目 ユースも活躍中
NGOの朝の会合
資源動員を巡って議論しました。資源動員手法も手法毎に現実性が異なること、規制に対する各国の態度の変化、補助金改革の有効性と難しさなど。ざっくりいうと、すべてを解決できるミラクルな手法は無く、効果的な手法ほど、課題が大きい。小さい成果では大きな変化は望めないという状況の中で取り組まなければいけない課題。
昨日の議論で最も厳しい見方(冷静な見方?)は、各国とも、愛知ターゲットが達成しない言い訳を表明しているようなものだ。互いを批判する材料ばかり集まっている、というものでした。
2日目午前 二つのパネルディスカッション
2日目午前は、持続可能な開発目標(SDGs)に関するパネルディスカッションと、資源動員に関するパネルディスカッションを行いました。
SDGは、ゼロドラフトが議論されており、2015年の春くらいに合意をめざし、9月の国連総会出の承認をめざすというプロセスになっています。生物多様性もテーマになっていて、海洋が独立のテーマになっているそうです。ニホンウナギに限らず漁業資源全体が世界的な課題ということでしょうか。
IUCNからは昨日のサイドイベントの報告がありました。SDGsの構築のための基本原則として提示しているのは、①目標の相互関連性への認識、②自然が社会や文化の基盤であること、③愛知ターゲットを基盤にしたものであるべき、④SDGsの構築は科学的ベースのもとに考えていかなければならない、という④原則。サイドイベントでは、生物多様性国家戦略がSDGsに相互に関わりがあり、国家戦略の達成が、SDGsの達成にも貢献することを示したものであったそうです。スイスやコロンビアの事例、漁業のはえ縄漁とアホウドリ保全の両立を図った事例などが報告されました。
SDGsについて、生物多様性に関わるコミュニティーの役割として、最低限としては「目標に生物多様性というテーマが入っているのを落とされないようにすること」。その上で、社会や経済の根幹にあるものとしての自然の重要性をさまざまなテーマの中で示すこと。実施のための協働体制を作ること。
SDGsの議論に関わる人とこういう話をしたとき、愛知ターゲットはまとまっているものなので、うまくいっているから、むしろ、交渉項目を極力減らしたいので、あまり重視していない雰囲気がした経験がある。
Global Youth Biodiversity Networkユースの発言もありました。生物多様性の強調はもっとあってよい。また、ゼロドラフトの生物多様性のテーマ以外にも生物多様性の重要性をいれていくべき。例えば、教育の項目など。科学技術の発展も重要であり、目標達成のための教育の役割も重要ではないか。
愛知目標の達成は、SDGsの達成に相互に有効でありかつ補完的であるという点はもっと強調されるべきである。私たちや次世代が住める地球を保っていくことの重要という発言で、会場からも大きな拍手がありました。
インドの環境教育NGOによる、教育の重要性を指摘するとともに、他の目標に生物多様性の要素を入れていくべきという指摘もありました。
先住民グループ:マザーアースという視点。経済的、社会的な重要性だけでなく、生物多様性と文化や精神的な豊かさというhuman rightsの関わりの視点も重要。生物多様性の重要性を指摘する共に、透明性や参加性の確保が重要。
ブラウリオ事務局長:経済の扱い方への疑問。持続可能(sustainable)な発展という文脈で、“持続的”(continuous)な経済発展を求めていることについてどう理解すれば良いか。
SDGSについては、何らかの合意がなされた後には、その目標や指標を各国が自国の状況に合わせて行動に翻訳するという動きになる。その中で、生物多様性の様々なやるべきことをちゃんと実現できるかということもこれから考えていかなければいけない。SDGsがもたらす予算への影響は大きい。そのため価値ある目標が組み込まれるべきという意見がありました。
メキシコ:時には、現実的にならなければいけない。文書だけ議論していると、世界はユートピアに見えてくるが、地球も資源も有限であり、産業も経済も有限の中で動いていく。多くの活動や立場をふまえて、政府として柔軟に動いていく必要がある。ILCからの発言を歓迎。
ILC(ルーシーさん)の発言は、先住民も広い意味で市民社会のなかにあること、市民の取り組みの重要性とともに、企業ももっとこの動きに入ってくるべきであるという指摘でした。
ILC:Working Togetherが一番大事でいいたいこと。ユースの視点も非常に重要で、彼らが大きくなったときに、きれいな水、空気が無ければ何にもならない。
IUCN:ゼロドラフトを見ると、まだ、生物多様性や生態系サービスの重要性を指摘すべき場所(テーマ10や15)があり、その組み込む作業は終わっていないと思っている。政府の人々にはこの作業が大事だと思う。
次は、2つ目のパネルディスカッションで、資源動員をテーマとするものです。昨日のカルロスさんなどが出演していました。
カルロスさんからの発言:先進国からのODAだけで資源動員をかんがえるのは現実的でない。コスタリカでは、生態系支払いとして3億4600万ドルを作り出し、森林保全、再生などに取り組んだ。農業に関する悪影響を及ぼす補助金の改善にも取り組んだ。1980年代のこと。コスタリカ元環境大臣で、政治や政策的なプロセス、国家予算などにも詳しく、かつ、NGOのことも詳しいという希有な人です。IUCN-Jでイベントやって話した時も、軍隊がミサイル・ロケットを数本買う予算で、保全の金作れるでしょと言っていて確かにね。と思いました。
キトーでひらかれた資源動員に関するワークショップの共同議長: ODAの1%が生物多様性保全関連の予算。それで私たちの社会の根幹である自然と生態系サービスを守ろうという。これで良いと思う?という問いかけ。
国内に置ける資金的需要の評価という大きな仕事に、途上国はガイドが少なく取り組めてない。ただ、保全のコストは、保全によって確保される生態系サービスがもたらすベネフィットに比べれば、大した額ではないと考えるべき。今、多様な手法が考えられているが、その現実性も含めて検討すべきだろう。
OECDの事務局:生物多様性の経済的視点について研究と分析を続け、昨年報告書をだした。報告書では愛知ターゲットが社会にもたらすメリットについてもっと強調するべきとまとめた。
そのためのメカニズムと適用可能性、どれだけの金額がスケールアップしうるかなどの論点を設けて調査分析を実施。また、経済的手法のメリットを受ける層はどこかなども調べた。
UNDPのキャロラインさん:愛知目標達成のための資金と、現在どれだけの投資がされているかというギャップ分析を実施し、CBDの判断の基礎資料にもなった。
フロアーからの意見に移ります。まずはILCから「コレクティブアクションの重要性。非市場ベースの手法についてもっと研究と事例を深めるべき。鳥や魚、私たちの家、そして子ども、すべてに対して自分は責任を持っているし、自分たちの国についても責任がある。自然の価値について協働をすすめるべき。
バードライフやCI、TNC、WWFなどによる発表。生物多様性の保全の確保。1.9兆ドルが化石燃料の推進に、1.7兆ドルが軍事予算に使われている。世界のお金の使い方について疑問を提示。
エチオピア:経験の共有にもっと力を入れたい。生物多様性保全に力を入れている。生物多様性への投資は、国内での資源動員も重要である。グローバルな取り組みよりも、国内での投資拡大の方が注目が高いのではないか。政治家を生物多様性の分野に入ってもらい、考えてもらうことが重要ではないか。
どのように、政治家、政治のレベルに、生物多様性の価値を理解してもらうかという取り組みが重要で、ハイレベルパネルでもそういうことができないか検討してもらいたい。
The global Biodiversity Finance Initiative (BIOFIN) というのがUNDPで運営されている。
資源動員に関しては、課題(その背景にある社会構造)と解決策と、この場にいるプレイヤーとがちぐはぐな感じ。一方で、過去と比べると、何が手法で、その際に配慮すべきこと(safeguard)、具体事例などはずっと精緻になってきている気がします。
ディアス事務局長は、パネルディスカッションの締めとして、ハンプシャー大学の歴史家の漁業史の本を紹介していました。漁業資源崩壊に際して、過去の政府の取り組みは残念なことに常に一緒。船を買ったり、新しい技術を導入して「もっと魚を捕れるようにし」、資源崩壊に拍車をかける。これに学んで新しい道を模索する必要とのこと。私たちには愛知ターゲットがあり、SDGsというあたらな目標を作る動きがあり、資源動員について話し合うという役割がある。これをポジティブに捉えていく必要があるというメッセージでした。
午後の議題 議題8 貧困撲滅と持続可能な開発のための生物多様性
デラデューン・チェンナイ勧告と、貧困撲滅の取り組みに生物多様性を組み込むためのガイダンスをまとめたので、それについての検討するものです。
日本:持続可能な開発と貧困撲滅に生物多様性に寄与。東日本の地震と津波によって森林が自然災害の低減につながったことも理解している。デラデュン宣言に関しては、アクターが明確でないので、採択(endorse)ではなく考慮(take note)がいいのでは。食料の持続可能性についても書かれており、SATOYAMAイニシアティブへの言及を入れたい、持続可能な利用やSATOYAMAイニシアティブ国際ネットワークが沢山の優良事例を提供している。
EU:議題の重要性や韓国の取り組みに謝意。SDGsに愛知ターゲットが含まれるべきであり、生物多様性の損失に取り組まなければならない。レビューの不要な仕方で採択されるべき。一つの手法だけに限ることはふさわしくないので、バランスの良い記述が必要。
ノルウェー:デラデューン宣言。Post2015ゴールの検討は、生物多様性を持続可能な開発のアジェンダに入れていく良い機会である。SDGsにCBD事務局が関わり続けてほしい。
タイ:SATOYAMAイニシアティブを入れることに賛成。持続可能な利用に関する多くの知見が蓄積されている活動であるので。
多くの国が、この議題の重要性から、決議やその内容を歓迎しつつ、コメントを結構入れたいという感じです(細かい修正内容は、直接事務局に渡されているので不明)。複数の国や機関(UNU-IAS)がSATOYAMAイニシアティブについてこの文書の中で言及することを提案していました。
IIFBの参加者が3名スピーチ(英語やスペイン語、フランス語だったりで面白い)。それぞれ違う視点からの視点。先住民による保護地域や、持続可能な利用、伝統的知識、先住民の参加の観点で。最後の人は、考慮ではなく採択(できるように文章を直して)をめざそうという意見。
午後の二つ目の議題は、会議(COPと二つの議定書の会合)の持ちかたや運営改善
名古屋議定書の発効が現実味を帯びる中で、会議期間を現在の2週間超えてさらにのばすのは非現実的で、どうするのが良いかという議題
一つは、議定書会合をやめて、COPに集約。COPの中で作業部会に分けて検討するもの。二つ目は、COPと二つのMOPを別々に(=3種類)開催する。3つ目は、議定書会合で二つの議定書を同時に議論し、COPを持つという方法。
その他にも、オンライン報告の仕組みや、WGRIを条約の実施に関する補助機関(Subsidiary Body)に変えることなど、国家戦略に関するピアレビューの導入の試行、地域準備会合の開催などが案として上るほか、各国に他の環境条約との連携を図る組織の設立を奨励する内容が提案に盛り込まれています。
夜には、資源動員戦略についてのコンタクトグループが始まります(日本のNGOでこのテーマを追っている方もいるので、私は不参加)。
((公財)日本自然保護協会 道家哲平)