海洋関連3議題について
一つ前の記事にて、海洋に関する課題や現状を一通り紹介しました。次に、SBSTTAで扱われていた。3つの議題についてそれぞれどんな意見が出されたかを報告します。
<生物学的生態学的に重要な地域(EBSA、重要海域)について>
EBSAですが、Workshopの報告書をendorse(裏書き、正当なものと認める)するという表現に何カ国が異議を申し立て、take noteにしてほしいという意見がでました。科学者を中心とした、透明性の高い情報に基づいて特定された「生態学的、または、生物学的に重要な海域」について、あくまでもスタートポイントであり、確定されたものではない(重要な海域と特定する主体はCBDではないのでないか)、同じくそのワークショップで作られたEBSAのリスト(repository)もあくまでもドラフトであることを強調する意見が多いです。あくまでも練習・訓練(exercise)であるという立場を主張する国がありました。
EBSAに関して、ドイツが大事な指摘をしていました。EBSAの特定も大事だが、ネットワーク化(連続性を確保したりや多様な海の生態系をバランスよく守ること)を検討する方も忘れずに進めようという発言。どの国も指摘していないことです。
・伝統的知識の取り扱いについての意見も出ました。EBSA特定の際に、伝統的知識が役に立つことは同意するが、伝統的な知識に基づく社会的文化的基準が、EBSAを拡大指定(生物学的、生態学的に特定された地域に「追加される」)することは違うというカナダの指摘に対し、IUCNは、伝統的知識や文化的に重要な地域は補完的な基準として重要であると発言。
最後に、EBSAの議論についてはコンタクトグループを作ることが宣言されました。
<海洋沿岸生物多様性に悪影響を持つ人間活動の負の影響に取組む>
・海洋沿岸に悪影響を持つ人間活動への対処:海中騒音についてモニタリングやその手法の指針の必要性が指摘されるほか、持続可能な漁業をどのように進めるかについて多様な意見。漁業管理団体にたいして生物多様性の観点からの懸念をちゃんと伝えてはどうかという意見。
・NGOからは、先住民や地域共同体の参加の重要性、環境影響評価を採択すべきという意見、海洋への危機として遺伝子組み換え魚類(ティラピアやマス)にも対処するべきという意見が出されました。
<海洋沿岸の空間計画、環境影響評価>
この議題は、海洋沿岸生物多様性に関する環境影響評価ガイドラインについてが大きな焦点となりました。
・voluntary guidelineと書いているにもかかわらず、endorseではなく、welcomeと表現したいという意見。また、公海(area beyond national jurisdiction)に関する記述を削除したいという意見がでました。
・国連総会特別作業部会で、公海に関する保護区制度、公海に関する環境影響評価制度についてさらに検討することになっているようです。この活動と重複しない形でCBDがなにをするか(何ができるか)がポイントのようです。
・IUCNは、CBD第4条(b)を持ち出し、CBDで環境影響評価ガイドラインを採択するのはおかしくないという提案をしました。
*条約の範囲は、自国の領域あるいは権限の及ばない領域で行なわれるものでも、各国が規制できる行為(漁業)であれば、条約でカバーするとされている
報告者 (財)日本自然保護協会 IUCN-J担当 道家哲平