あなたと自然とのつながりは?:#nature for allサイドイベント(ユースレポート)

COPの6日目にあたる11月22日のお昼にIUCN-CECが主催するサイドイベント「We need to better connect people with nature to inspire enhanced action on biodiversity conservation(私たちは生物多様性保全のアクションを強調するために人と自然がより良くつながる必要がある)」に出席しました。CECはCommission on Education and Communicationの略で、IUCNのコミュニケーションと教育を担当する委員会となっています。

サイドイベントはショーン氏(IUCN-CEC)による“When did you fall in love nature?(あなたが自然に恋に落ちたのはいつ?)”というおなじみの問いかけから幕を開けました。ショーン氏の問いかけに対し、近くの人と数分間自分の経験について話した後、何例かのエピソードを全員に共有します。たとえば、ダイビングやシュノーケリングで自然に恋に落ちた人、都市では近くに山はないが動物園や水族館などの自然への入り口があることなど人によって様々な経験が共有されます。

 

CIMG2357参加者に問いかけるショーン氏

 

参加者同士の経験共有後は、シンプルなメッセージ入りの短いプロモーションビデオが流されます。個人的には“To connect people with the nature, because nature is everywhere(人と自然がつながること、なぜなら自然はどこにでもあるから)”という部分が印象的です。なお、このビデオは、日本語を含む、25カ国語に翻訳されているそうです。

続いて、カレン氏(IUCN-CEC)による「nature for all」の紹介後、シェリー氏(Children & Nature Network)のエビデンス(証拠)の概説に関するプレゼンが始まります。まず、自然体験や自然とつながることによる健康や幸福、子供に対する影響などのエビデンスをまとめた文書の紹介がされ、記載内容が簡単に紹介されました。要旨がまとめられた冊子は会場にて配布されており、要旨だけでなく全文が掲載されている文書はnature for allのwebサイトからダウンロードができるそうなのでご興味のある方はぜひご覧ください(全文英語のみになります)。
要旨はこちらから/全文はこちらから

プレゼンの中でシェリー氏は、自然の中での社会体験を家族とともに行い、その経験を共有することの重要性を述べ、「知識は大事だがそれだけでは十分ではなく、他人とその情報を共有することが大切」だと複数回強調していました。

また、プレゼンの中では、ポスト2020への推奨事項が7つ紹介されていました。
1.生物多様性保全:すべての人々が公平かつ包括的に自然とのつながりの多様な恩恵を受けるようにセクター間で働く
2.教育と子供のケア:幼児期や生涯を通して、自然界の自然体験や体験学習を可能にする
3.健康と年輩者(elder)のケア:すべての年齢のすべての人々に身体的および精神的健康の利益を提供するためのメカニズムとして自然とのつながりを抱く
4.コミュニティの計画と都市開発:人々や自然の利益のために公園や保護区域を含む自然豊かな都市を創造する
5.公園、外でのレクリエーション、観光:家族の自由な体験、解釈プログラム、野外自然に基づいた経験的な教育を奨励する
6.芸術と文化:文化と自然の融合を促進して自然との一体感を醸成し、つながりと癒しの話を祝う(celebrating)。
7.民間セクター(private sector): 環境と持続可能なプログラミング、インフラ、そして人と自然をつなぐ革新的な解決策に投資する

特に私が注目したのは、健康に関する言及の、身体的な健康だけでなく精神的な健康についても明記されていた点です。作業部会で議論が行われていた生物多様性の主流化の議題に含まれる「生物多様性と健康」の文書には精神面の健康への言及はなく、身体的なものが多いためです。エビデンスに基づいた自然環境の利用から人々の精神面に与える影響への言及が必要だと考えているため、この部分に注目しました。

最後にモロッコのブラヒム氏(IUCN-CEC)によるプレゼンが英語、フランス語、アラビア語を織り交ぜたスライドを使用して行われました。「自然保護=資源の持続可能性と自然との共生の中でのより良い生活の質」というキーメッセージが印象的でした。

7月に開催されたSBSTTA22/SBI2でも同団体が主催するサイドイベントに出席していたので、ショーン氏とシェリー氏が私のことを覚えていて話しかけてくださったことがとても嬉しかったです。また、比較的参加型であり、身近な話題を扱っているので、楽しいサイドイベントだと思っています。また、ショーン氏からは来日したいので協力してくれないかと相談をいただきました。

 

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ショーン氏との1枚

生物多様性わかものネットワーク/IUCN-J 矢動丸琴子
(千葉大学大学院/園芸学研究科/環境健康学領域/博士後期1年)