【報告レポート】第1回ポスト2020作業部会(通称:1st OEWG)の報告会を開催しました
2019年9月20日(金)に中央区立環境情報センターにて、第1回ポスト2020作業部会(通称:1st OEWG)の報告会を開催しました。
主催:国際自然保護連合日本委員会
共催:日本自然保護協会、生物多様性わかものネットワーク、国立環境研究所
協力:環境省
当日はNGO、ユース、研究者、行政機関等の多様なセクター40名程度の参加となりました。
報告会の概要
まず、IUCN-J事務局長・道家氏から、第1回ポスト2020作業部会の概要を報告しました。今回の会合では、明確な合意が得られなかったものの、各項目の要素の検討が進みました。概要報告は、要素やその解説に重点を置いたものでした。現在の愛知目標の内容と比較することで、今回のポスト愛知目標ではどのような要素が重視されているのかを分かりやすく解説しました。
次に、環境省・中澤氏、生物多様性わかものネットワーク・島田氏/矢動丸、国連生物多様性の10年市民ネットワーク・宮本氏、国立環境研所・石田氏/亀山氏と、各セクターの立場からの報告が実施されました。
各発表後には、質疑応答および、「transformative changeとはどのようなことだと思うか」という意見交換を行いました。
質疑応答では以下のやりとりがありました。(●=質疑、〇=応答、として記載しています)
●ユースの報告が興味深かった。企業とその他を対立的にというパフォーマンスを会場内のアクションとして実施していたようだが、企業はこうあるべき、という議論は
ユースの中でしていたか。
〇世代間公平や、女性、ユース、IPLC等の参画に関する議論は活発だったが、企業については特にしていなかった。
●6週間前に議長から出される「ゼロドラフト」はどのようなものが出てくるのか。
〇現時点の情報では、どのようなものが出てくるのかまったくわからない。変更も含めた文案が出てくるのではと予想しており、テーマ別議論が進んでいるので、そこで
の内容も入ってくるはずと予想している。
〇ゴールとターゲットに関する共同議長によるゼロドラフト(たたき台)になる。地域WSで出された意見をベースに作成されると聞いている。プロセス自体にもやもやして
いる人がいるのも事実
●利益配分がSDGsに貢献しているという話で、SDGsのターゲット10や14にも貢献しそうだが、そのような議論はあったのか。
〇CBDが公式に出していたものをそのまま載せただけなので、発表資料に掲載している以上のことはわからない。
●ポスト2020の要素として、主に保全に偏っている、という話が合ったが、客観的に見て当然だと思う。条約の目的の他2つ(持続可能な利用/ABS)にてこ入れする雰囲気
なのか、
〇バランスに関しては、先進国と途上国の間で、野生動物の持続可能な管理での対立が多い。持続可能な利用への能力養成に対するターゲット設定等はまだ可能性がある
と思う。
〇途上国を中心にABSにはかなり焦点があてられつつある。保全よりも持続可能な利用に疑問をもっている人も多い。そこをしっかりとしないといけない。IPBESレポー
トは、保全より持続可能な利用の側面の改善点などが主張されていると理解している。
●生物多様性の世界目標がどのように構想されているか。(どのような方向に進んでいるのか。)
〇2010年に策定した2050ビジョン「2050年に自然との共生を目指しましょう」という方向を向いている。いろいろ模索しながら、それも含めて考えている。個人的に
は、トップダウンで決めた目標の限界があるのではないか、だからこそ、“透明性のある実施(評価できたりする)”を求める議論など、実施面への改善点が多くあげられ
ていると感じている。国によるトップダウンでは限界がある、という方向の中でいかに他セクターが関わっていくのか、が重要というのは、見過ごせない大きな流れだ
と思う。
●生物多様性は地域と関係あると思うが、世界地図を使用したり、という話はないのか
〇国ごとの背景に合わせた施策を打ち出すことが重要なのではないか、という議論がIUCNから提案されている。ランドスケープ的アプローチが必要な国、連続性が必要な
国、保護地域面積を増やすことが必要な国等、どれが一概に良い/悪いではなく、その国にあった目標の見極めが重要である。
●愛知目標は10年間だったが、ポスト2020は30年かける必要があるために2050年までという設定なのか。
〇いまのところ2030年までの戦略計画として考えられている。2050ビジョンはそのままで、バックキャスティング的な発想が必要なのではないか、と議論されている。
●サイエンスベースドターゲットについて、二酸化炭素の排出量等は企業なども含めて実行されており、効果的だと思う。生物多様性では、数値化の部分で具体的なもの
は出てきているのか。また、IUCNの提案している絶滅危惧種などの考えは、企業などの多様な主体を巻き込んでいけるのか
〇絶滅危惧種などの指標についてはIUCN-WCC(2020年6月開催)に向けてまだ議論中。社寺林などに代表される人と自然の共生圏(OECM)などは、社有地にも充分適用可
能で、民間保護地域というアプローチは、企業を巻き込むツールの一つになる。
また、意見交換「transformative changeとはどのようなことだと思うか」では、以下のような意見が出されました。
●(transformative changeは)生物多様性から出てくるというよりは、気候変動の影響が避けられないものだと思う。良いものなのかどうかはわからないが、なにかしら
大きな変化はあると思う。
●気候変動の分野と分けて考えるのではなく、まとめて考えていかないといけない
●IUCN内の議論で、「Don’t wait government(政府を待つな)」というキーワードが出されたことがある。この意味合いとしては、法律の枠内で活動を行っている人に
社会変革を主導させるのは難しいのではないか、ということ。NGOも企業も、持続可能な社会ってどんなものなのか、という意見を出し合ったことをもとに、調整機能を
行政が果たし、ふさわしい目標設定やtransformative changeにつながるのではないか、といわれている。
プログラムと当日の発表資料
<概要報告>
●国際自然保護連合日本委員会・道家 哲平
「生物多様性の世界目標は、どのように構想されているか」(PDF)
<各テーマの注目・解説および各セクターの活動報告>
●環境省 自然環境局生物多様性戦略推進室・中澤圭一
「ポスト2020目標の検討状況について」(PDF)
●生物多様性わかものネットワーク・島田ゆり子/矢動丸琴子
「第1回ポスト2020作業部会でのユースの活動」(PDF)
●国連生物多様性の10年市民ネットワーク・宮本育昌
「NGOと企業の視点からの報告」(PDF)
●国立環境研究所・石田孝英
「ABSワークショップに関する報告」(PDF)
●国立環境研究所・亀山哲
「カルタヘナ議定書ワークショップに関する報告」(PDF)
*この報告会は、地球環境基金の助成を受けて開催いたしました。
IUCN-J事務局 矢動丸琴子