解説 ポスト2020作業部会(OEWG)とは

ここでは、ポスト2020作業部会の位置づけについて解説します。

OEWG

作業部会の名称と位置づけ

この会合は、Open-ended Working Group on the Post-2020 Global Biodiversity Frameworkの略で、「ポスト2020生物多様性世界枠組みに関する公開作業部会」が直訳となります。Iここでは「ポスト2020作業部会」と略しています。2019年8月(ナイロビ)、2020年2月(昆明)、7月(ボゴタ)の3回を予定しています。
そもそも、生物多様性条約における作業部会(Working Group)とは、非常設の会議体で、COPの決定に基づいてその都度、目的や参加者、成果物を明確化して開催される会合をさします。類似のものは、先住民の知識に関する8(J)作業部会などがあります。

 

OEWGの役割

COP14決定として定められたOEWGの役割は「ポスト2020決議=前文および、ポスト2020の具体的な構造(目次)・言葉/目標、実施方法などを協議し、COP15に提案すること、そのための必要なプロセスを検証し提案すること」です

このような作業部会は、愛知ターゲットを検討したとき(2008-2010)には、作られませんでした。まったく新しい仕組みといえますが、SDGsを作った際のプロセスを意識しているそうです。
なぜ、このような新しいプロセスで作ることに挑戦したのか?答えは、ポスト愛知が重要で、そのための必要な協議時間を十分に確保することが大事であった(既存の会議の一部として扱うのは無理がある)ことが、設置が合意された理由と考えられます(詳しくは、COP14の報告を参照)。

繰り返しますが、OEWGは、交渉の進め方(ポスト2020の議論の進め方)と、ポスト2020の内容(本文)の両方を検討していくことが役割となっています。また、OEWGの交渉の進め方には、別の会議体(科学技術助言補助機関、条約の実施に関する補助機関、その他の会議体)に、検討をお願いすること、なども含んでいます。

OEWG以外のプロセス

大事なこととして、OEWGは、“いろいろな素材のもとに、交渉し、少しずつ合意を積み重ねる”場面であり、材料をそろえたり、検討プロセスに相互に影響を与えあう物事があります。主要なもとをまとめると下記のものがあります。

・コメント募集(Submission)―COPやOEWGの要請に基づいて、CBD事務局が、意見照会を実施。関係者は、書面での意見を提出する
・地域コンサルテーションーアジア太平洋、西ヨーロッパなどの地域ブロックごとの協議
・テーマ別コンサルテーション:里山、海洋など、テーマごとに企画される協議。CBD事務局が主催したり、国連大学が主催するなど様々
・その他の国際条約、国際会議や国連会合からのインプット:国際機関/国際NGO等が行うワークショップや、シンポジウムなど。この中でも、IUCN世界自然保護会議2020(2020年6月、フランス・マルセーユ)や、2020年9月に国連総会で開催が検討されている生物多様性首脳会合の動向が注目されています。
・報告書:IPBESのグローバルアセスメントレポート(2019年5月発表)や、地球規模生物多様性概況第5版(2020年5月発行予定)などの、報告書もポスト2020を検討する上での情報ソースと考えられています。

第1回OEWGに至るまでのフェーズの意味(2019年8月、OEWG前段階)

COP14におけるポスト2020枠組みに関する決定からこれまでは、意見表明の段階でした。例えば、愛知枠組みの課題や教訓=活かすべき反省点、ポスト2020枠組みで大切な考え方、注意するべきこと、工夫、大事な原則、他の条約・SDGsとの関係、生物多様性条約の原則、目標の実現方法を意識した注意点、などをポスト2020の要素(Element)と呼んで、多様な関係者から意見を聴取しました。

これは、共同議長によって、総意に近い意見があるか、意見の幅の広さなどを把握したり、新しい意見・アイディアなどを探る段階といえます。第1回OEWGまでの成果は議長テキスト(議長が提案するnon-paperとして2種類の文章)として、検討資料作成につながりました。

今後の予想される展開
第1回OEWGでさらに検討が進むと思いますが、下記のような展開が予想されます。

第1回OEWG(ナイロビ)-【プロセス中心】
地域会合や他の会合の成果を集約。集約された意見を元にした意見交換。ポスト2020のスコープや構造(目次)について大まかな合意を得る。さらに、今後の進め方などを決める。

第2回OEWG(昆明)-【要素の具体化】
第1回OEWG以降の会合(テーマ別、先住民地域共同体に関する作業部会、科学技術助言機関の成果)やコメントを集約。要素について具体的な文言も検討する。

第3回OEWG(ボゴタ)-【ポスト2020の8割確定】
具体的な文言を協議し、(継続審議事項含め)COP15に、ポスト2020枠組みの文書案を提案する。

道家哲平(日本自然保護協会/IUCN-J事務局長)

*今回の情報収集は、環境再生保全機構地球環境基金の助成を受けて実施します。