プラスチック汚染の削減に向けて
国際社会におけるプラスチック汚染対策の現状
近年、使い捨てプラスチック等の廃止に代表されるプラスチックゴミの抑制が世界的に進んでいます。OEWG2が開催されているローマ(イタリア)は、この取り組みを最も強力に進めているEUの一部です。EUは2018年に「欧州プラスチック戦略」を発表しており、その中でプラスチックごみの削減を進めていくことをうたっています。
現在検討されているPost-2020年目標の中でも、目標4「2030年までに、過剰栄養、殺生物剤、プラスチック廃棄物及びその他の起源からの汚染を少なくとも[50%]削減する。(仮訳)」として議論がなされています。生物多様性条約におけるプラスチック汚染は、主に「海洋ゴミ(marine debris)」への対処として議論がなされてきました。関連する技術シリーズも「No.67 生物多様性への海洋ゴミの影響 (IMPACTS OF MARINE DEBRIS ON BIODIVERSITY) 2012」「No.83 海洋ゴミ:海洋・沿岸生物多様性への負の影響の理解・防止および緩和(MARINE DEBRIS: UNDERSTANDING, PREVENTING AND MITIGATING THE SIGNIFICANT ADVERSE IMPACTS ON MARINE AND COASTAL BIODIVERSITY) 2016」と2冊発刊されており、古くて新しい問題といえると思います。
ローマでのプラスチックゴミ対策
それでは、実際にローマで確認できた対策についてご紹介します。
1) 生分解性プラスチック製のレジ袋
パンを買った時に「袋は入りません」と言いそびれてレジ袋に入れられてしまったのですが、「OK compost」のマークがあり、生分解性プラスチックを使っていることが分かりました。
2) 頑強な廃棄物収集ステーション
街中のところどころに設置されている廃棄物収集ステーションはしっかりしたつくりで、カラスなどが荒らすことができないようになっていました。
3) ポイ捨てを防ぐゴミ箱
観光地にはこのようなゴミ箱(ゴミ袋)が沢山設置してあり、ポイ捨てしないように配慮されています。
生分解性プラスチック
ゴミ箱
ローマでのプラスチックゴミ問題
上記のような対策がある一方、問題もありました。
1) タバコのポイ捨て
ローマは街中で喫煙可であり、道にはタバコの吸い殻が沢山捨てられています。
2) むき出しのゴミ
廃棄物収集ステーションが近くに無いのか、むき出しで集積されているゴミ袋がありました。別の日にこのようなゴミ袋をカモメの仲間が食い破り、ごみを散らかしているのを見ました。
3) ゴミ捨てのマナー違反
廃棄物収集ステーションからはみ出すようにゴミを突っ込んでいたり、道端にポイ捨てされているのも見かけました。
凱旋門とタバコ
プラスチックゴミ問題の解決に向けて
プラスチックゴミ問題への対処は、まだ緒に就いたばかりです。世界中で様々な規制が次々に生まれていますが、上記のように必ずしもうまくいっていないところもあります。ゴミは「発生させない」ことが一番大切です。皆で日々の中で何ができるか考え、行動し、生物多様性を守っていきましょう。
宮本育昌(国連生物多様性の10年市民ネットワーク)