ジオエンジニアリング(地球工学)

地球温暖化等によって変容していく地球上の生態系に対し、人為的な技術で生態系システムに介入し、大規模に地球環境を改変し地球温暖化の対抗措置としよういうジオエンジニアリングについても、今回のSBSTTA19では議論がなされました。

ジオエンジニアリングの実施や研究については2010年に名古屋で開かれたCOP10の際にモラトリアムが作成されています。今回のSBSTTA19にて、各国が今後ジオエンジニアリングについてどのような立場をとる方針でいるのかについて注目していましたが、特に目立ってジオエンジニアリングの推進を要求する声はありませんでした。

今回のSBSTTAでは主に以下のような内容が決められました。

・ IPCCの第5次報告書の内容が、気候工学が生物多様性やエコシステムに与える影響について言及していない
・ 国家は予防原則や、国家の一般原則である管轄権内での権力の行使などのような一般義務を遵守する必要があり、この点はジオエンジニアリングの実行することとも関連することをCOPは留意する必要がある
・ 締約国に対し、エコシステムベースで気候変動に対応することを促すこと
・ ジオエンジニアリングについては国境を越えたより一層な調査が必要であり、科学的知見を各国でシェアしていくことが重要である

またジオエンジニアリングについて議論がなされた際には、Youthを代表した意見表明もなされました。以下にその概要を紹介します。

次世代からの地球工学に向けてのメッセージ

“私たちYouthはジオエンジニアリングの技術が今後より増大することを恐れており、特にIPCCの最新の報告書ではBECCS技術を気候変動緩和の解決策の1つとして考慮している点について強く懸念しています。

私たちの暮らす地球は決して機械ではありません。気候変動に対してはBECCSや海洋肥沃を初めとした技術に頼るのではなく、エネルギーの転換や無駄のある生活を見直すなど、私たちの暮らし方を根本的に変化させていくことで対応していくべきです。

私たちは海を泡まみれにしたり、雲にスプレーをしたりする技術に脅威を感じています。予防原則や気候変動に対するエコシステムベースの対応の重要性を今一度思い出すべきです。

ジオエンジニアリングに対する事実上のモラトリアムには正当性があり、今後もジオエンジニアリングの問題についてはCBDが主導権を握っていくべきであるし、永久的にこのモラトリアムは確立されている必要があると考えます。”

地球の平均気温上昇を2度以内に抑制することが難しいと言われている限り、ジオエンジニアリングは技術大国としてはビジネスチャンスともなり得るので全面的にその可能性をゼロにしたくないというような考え方があるのは理解できますが、その安全性が実証されていない以上、それを実施に移すのは決して懸命な判断ではないのだろうと思います。

Youth同士の会話の中では、「いくら実験という理由でジオエンジニアリングを行っても、雲にスプレーをしておかしなことになったらどうするの?雲は風に流されていってしまう。かき集めてきれいな雲に戻すことはできないのに」というような声もあがりました。

新しい技術を利用して、地球の気温を下げることに成功したとしても、また別の場所で深刻な問題が発生したのでは意味がありません。今回のSBSTTAで言及された通り、ジオエンジニアリングのより一層な研究は欠かせません。しかし、私たちを始めとした全ての生物がエコシステムというフィールドで同じ立場で生きているということを深く再認識し、謙虚な姿勢で私たちの生活を見つめ直すことが何よりも重要なことなのだと思います。

生物多様性わかものネットワーク 宮崎桃子