9つの分科会で議論が白熱した にじゅうまるCOP3(終了しました)
にじゅうまるCOP3の2日目は、分科会が開催されました。
2018年2月18日の午前9時30分に國學院大學常磐松ホールに集合した参加者たちは、9つの分科会のコーディネーター団体から、各分科会のテーマや内容についての説明を受けました。その後、それぞれの部屋に移動し、昼休みをはさんで午後4時30分まで分科会に参加、そして午後5時からふたたび常磐松ホールに集合して、それぞれの分科会での議論を共有しました。
それでは各分科会での議論を紹介しましょう。
第1分科会:豊かな食の未来の実現に向けた生物多様性(「いただきますの日」普及推進委員会)
この分科会では「いただきます みそをつくるこどもたち」というドキュメンタリー映画の上映後、映画監督を交えて、自分たちの未来の食を考えるワークショップを開催しました。
参加者からは、食にまつわる課題として、「情報が多く、何が正しいのかわからない」、「グローバル企業の食に囲まれている」、「忙しく、食に時間をかけることがむずかしい」などの意見が出されました。そして、参加者20名のうち、「生物多様性を知っている」人は8名、「COP10]を知っている人は0人でしたが、ワークショップ終了後に、「生物多様性が大事だと思う」と答えた人は20人になりました。
また、グローバルとローカルのバランスを取ることの必要性が確認され、「和食に切り替える」「情報を鵜呑みにせずに、自分の体にフィットする食事を試す」「地元のものを食べるように心がける」「感謝して食事をとる」ことなどのアクション宣言を共有しました。
第2分科会:ひと・生きものがつなぐ田んぼ〜川〜干潟〜世界(ラムサール・ネットワーク日本)
この分科会は、第1部「田んぼ10年プロジェクトの課題を解決し、2020年以降の活動に活かすために」、第2部「水のつながり、命のつながり。湿地のグリーンウェイブ」、第3部「日韓NGO湿地フォーラム」と、3つの話題から、湿地が人びとのくらしや生物多様性にどのようにかかわっているのかを掘り下げていきました。
まず第1部では、「生きもの調査と次のステップ」「都市住民は田んぼにどう関わるのか」という2つの課題が示され、その解決策として、誰もが関わることができる田んぼの評価法の確立や、専門家と市民をつなぐ必要性、そして都市の身近なところに田んぼを取りもどす必要性が共有されました。
第2部では、ラムサール・ネットワーク日本が毎年開催しているキャンペーン「湿地のグリーンウェイブ」の事例をもとに、「湿地の保全・賢明な利用」の主流化をはかるためのキーワードを考えるワークショップが行われ、「テンション上がる」「不思議な人気」「地域の人に参加してもらう」「空間の共有」「全域連携」「時間の連続」「全国に広げる」などのキーワードが選択されました。
第3部では、2007年にはじまった「日韓NGO湿地フォーラム」とその活動を紹介し、地域の個別の湿地の課題を根底に、国を超えた協力によって国際的な取り組みの成果を、地域へと還元する方法が共有されました。
なお、この分科会では昼の休憩時間を利用して、「カフェ田んぼ」を開催。石川県産の「生きもの元気米」でつくったおむすびをはじめ、有明海の海苔(福岡県)、田んぼの雑草を有効利用したコナギクッキー(宮城県)など、各地の食べものがふるまわれ、この時間帯はほかの分科会からの参加者も集まって賑わいました。
第3分科会:ビジネスと自然資本(コンサベーション・インターナショナル・ジャパン)
この分科会は、NGO・企業・行政・学会関係者など16名が参加して、午前中だけセッションが行われました。
まず、LCA(ライフサイクルアセスメント)、CSR、そして世界アンケートの3つの観点からの話題提供があり、自然資本プロトコルに生物多様性的視点を組み込むにはどうすればよいか話し合われました。
課題としては、企業にとって生物多様性の優先度が低く、また統一見解が共有されていないことなどが挙げられました。さらに、企業に求められていることが、事業を行うための「判断材料」としてなのか、「情報開示」なのか分からないなどという意見もありました。
それを解決する方法として、わかりやすい計測手段が必要であり、世界の主流に近づけることが必要であることが共有されました。
第4分科会:生物多様性地域戦略から考える地域の持続的な未来〜生物多様性をSDGs目標から読みとく〜(農と生きもの研究所)
この分科会では、都市近郊の地域の持続性を、生物多様性の視点で考え、国際目標SDGsで読み解くことが行われました。
話題提供として、生物多様性地域戦略や地域診断ツールの事例、地域と大学との取り組み、さらに主婦目線から見た街の未来などの情報が共有されました。
その後、「みんなが考える2050年はどんな街か」を、いくつかのキーワードをもとにワークショップ形式で検討しました。
子ども時代に豊かな感性を育てることが重要で、都市部と田舎では入り口は異なるものの、同じ方法に向かっているのではないかとの意見が共有されました。そのためにも、生物多様性に理解のある政治家を支援する必要があることが確認されました。
第5分科会:農と河川水辺の生物多様性向上活動の推進(オリザネット)
この分科会では、すでにある制度や法令をどのように活用すればよいのか、事例を報告し、農家、漁協関係者、行政関係者、都市改良区の関係者など、ふだんは同時にかかわることの少ない立場の人たちが情報を共有しました。
同じ地域で、距離的には1日で回れるほどのところであっても、縦割りの仕組みでつながることが少ない場合が多く、それをどのように乗り越えるかが課題であるが、しかし、その方法は確実にあることが共有されました。
第6分科会:身近な”コト”から生物多様性を主流化するには(生物多様性わかものネットワーク)
この分科会では、オリンピック・パラリンピックを切り口とした、生物多様性の主流化について議論しました。
オリンピック・パラリンピックでは、持続可能性を重視した調達が求められていますが、東京オリンピック・パラリンピックがはたしてどの程度持続可能性に配慮されているのか、議論を重ねました。そして、東京オリンピック・パラリンピックに関するパブリックコメントにも意見が出せるほどに議論が深まりました。
また、身近な生活から生物多様性を考えるために、パームオイルを例に自分たちの生活のあり方を考え、ワークショップでは、先住民や行政関係者の立場に立って思考するロールプレイを通じて、持続可能性について検討しました。
参加者はほぼ20歳代で、元気にあふれ、今後につなげることができた内容となりました。
第7分科会:SDGs×生物多様性×協働でつくる持続可能な地域(SDGs市民社会ネットワーク)
この分科会ではSDGsと生物多様性の関係性について、さらには協働についての考察が行われました。
まず話題提供としてSDGsの概要とその必要性や、SDGsがつくられた経緯や各セクターの取り組み、市民社会が果たすべき役割について、情報が共有されました。さらに、企業による持続可能性へのアプローチに事例や、生物多様性や環境課題に向けた活動が協働を意識した場合にどのようなステークホルダーに広がりが見られたか、事例報告がありました。
その後ワークショップを通じて、SDGsをツールとして使うことで自分たちの活動を見直すことができること、また、協働は手段であって目的ではなく、どのようなステークホルダーとつながることが効果的であるのかなどについて考察が深められました。
第8分科会:サンゴ礁〜海の生物多様性保全〜(日本自然保護協会)
目標10「サンゴ礁など、環境の変化にとくに弱い生態系を守ろう」は、20の愛知ターゲットのなかでも2015年を目標年に設定された数少ないものです。この分科会では、すでに期限を過ぎていながら、いまだ達成できていないこの問題について話し合われました。
まずは、日本の海の現状がほとんど知られていないことを確認。そしてサンゴ礁の特徴や私たちのくらしとの関係などの基礎知識を共有しました。また、気候変動の研究最前線についても情報が提供されました。
これらの情報共有を通じて、参加者たちは砂浜の重要性を再認識し、いまから何ができるのかを考えました。たとえばサンゴの移植事業が行われていますが、移植先の環境を整えずに行ってもほとんど効果がなく、経費の無駄遣いであることがわかりました。
では、私たちに何ができるのか。個人レベルでは、まずは海を汚さない生活をすること、また「間違った善意」を気づかせるためにもメディアの役割の重要性が確認されました。
第9分科会:教育的視点でみる「農と食」〜若者を活動にどのように繋げていくか〜(田んぼの生きもの調査フォーラム)
この分科会では、田んぼの生きもの調査の意義と、持続可能な農のあり方について議論をしました。
まずは、田んぼの生きもの調査の意義とこれまでについて、つぎに学生の農業へのかかわり方についての事例報告が行われました。さらに、田んぼの生きもの調査の現状とこれからについても話題が提供されました。
その後、持続可能な農業のための教育とそのあり方を考えるワークショップが行われました。
田んぼの生きもの調査を通じて、食育や地域交流、消費力アップ、地域愛の向上などが期待できること、そのためにも楽しいイベントとしての田んぼの生きもの調査の方法を確立し、それを各地へ広めることの意義が確認されました。
全体ミーティングで分科会の成果を共有
各分科会終了後、参加者たちはふたたび常磐松ホールへ集合し、それぞれの分科会での議論を共有しました。
そのなかで、子ども時代の教育がその人のベースとなる価値観を育むこと、さまざまなセクターがかかわっているにじゅうまるパートナーズのつながりを強化する意義などが確認されました。また、さまざまな問題点を横断的に考えるためにも、世代や立場を越えたつながりの必要性が効果的であるとの意見も出されました。
最後に、IUCN日本委員会会長の渡邉綱男さんから、2日間にわたって開催されたにじゅうまるCOP3の参加者が200名を超えていたことが報告され、生物多様性とSDGsとパリ協定をつなげるためにも、ポストにじゅうまるとして2030年までの「さんじゅうまる」を視野に入れた活動をすすめていきたいと、さらなる前進を促す言葉で閉会となりました。
(報告:原野好正@バイオダイバーシティ・インフォメーション・ボックス(にじゅうまるプロジェクトメンバー))