外来種決定内容
侵略的外来種
〈解説〉
この議題は、COP12にて外来種の導入に関連するリスクに対処するための対策の策定および実施に関する自主ガイダンスの要請、そのなかでも、COP13にて「ヒッチハイカー」や汚染物質を通じた侵略的外来種の意図しない導入を補完する補足ガイダンス作成の要請にこたえるものでした。非意図的導入を防ぐための自主的ガイダンスの必要性・各国のこれまでの対策や取り組みについての進捗報告強化も課題となっていました。また、生きた生物の電子商取引(外来種の貿易)に対するリスクなども重要な焦点の一つとなっています。
各国の政策提言では、侵入経路ガイドラインの作成や更なる専門家グループの設置(メキシコ)、それに関連して侵略的外来種のリスク分析を推奨することや能力構築を支援すること(モロッコ)が提言され、かかるコストや得られる利益に対する言及(スウェーデン)などもありました。自主的な補足ガイダンスを歓迎する国は多かったものの、拡大管理の難しさやコストの問題などから1つの国で行うことの難しさを主張し技術や経験をシェアする必要があることの重要性を訴えている国もいました(韓国)。
L文書の採択時にはメキシコが「live species(生きている種)」という表現を「live organisms(生きている生物)」と変更する提言を行い、採択されました。「種」という単位で管理するのではなく、既にある生態系に外来「生物」が入ることが問題であり、そのような表現の方が適切だと判断されたためです。
関連する愛知ターゲット:目標9
「2020年までに、侵略的外来種及びその定着経路が特定され、優先順位付けられ、優先度の高い種が制御又は根絶される。また、侵略的外来種の導入又は定着を防止するために、定着経路を管理するための対策が講じられる。」
侵略的外来種への対策は、(1)侵入の防止、(2)侵入の初期段階での発見と対応、(3)定着した外来種の駆除・管理の3段階あります。
〈決定〉
SBSTTA決定では、COP14に向けてCBD事務局に対して、IUCN-SSC外来種専門家グループ協働しつつ、リスク評価・管理の基準と水生環境を含む侵略的外来種に対する生物学的防除剤の使用について報告することを指示しました。
COP14決定案として、愛知目標達成のための助言を行う専門家グループの設置が提案されています。また、専門家グループの結果についてオンラインディスカッションフォーラムを通じて検討を深める事、さらに、国家および地域レベルでの国境管理、衛生植物検疫措置の実施を強く求める文案も提案されました。
また、侵略的外来種に対する電子商取引の発達と関連するリスクを最小限に抑えるために締約国間の連携の必要性や脆弱な生態系に対する侵略的外来種の不利な影響を認識すること、生きた種の貿易に関連する侵略的外来種の意図しない導入を避けるための補足的な自主的指針を歓迎することなどがありました。
それらに加え、生きた種の貿易に関する侵略的外来種の意図しない侵入を避ける自主的指針を活用すること、国内規制の情報と同様に地域の規制と侵略的外来種のリストも共有すること、愛知目標9達成のための活動を促進する新たな機会を探るために事業部門(business sector)と共同すること、データ動員の促進をすることなどを奨励しました。
事務局に対して、侵略的外来種に関連する生物多様性の危機またはリスクをもたらす生物についての国連経済社会理事会事務局、WCOはじめとする国際協定などと調整し、他の規定と調和のとれた外来種の分類やラベルの仕組みが可能かどうか模索し、その進捗についてCOP15の前に開催されるSBSTTAに報告することを求めました。
生物多様性わかものネットワーク 矢動丸琴子
(千葉大学大学院/園芸学研究科/環境健康学領域/博士後期1年)