ポスト2020作業部会 初日の紹介
初日の進行
UNEP本部事務所で始まったポスト2020作業部会の初日は、フランソワ・オグワル共同議長の挨拶、CBD-COP議長(エジプト環境大臣ヤスミン氏)の代理のムハメッド氏の挨拶、クリスティアーナCBD事務局長の挨拶、インガー・アンダーセンUNEP事務局長(5月まで、IUCNの事務局長だった方で、昨年10月にインガー事務局長を招いてのシンポジウムも企画しました)などの挨拶がありました。
続けて各地域ブロック代表・先住民地域共同体・女性・ユース・NGO・IUCNなどが開会にあたっての会議への期待や意見を述べる時間が設けられました。最近のCOP準備会合(SBSTTAなど)やCOP本体でも地域ブロックからの挨拶を省略することがあり、丁寧な意見表明の機会というのを大事にしていることが、議長の采配からも伝わってきます。
続いて、地域コンサルテーションの結果文書の紹介、名古屋議定書とポスト2020、カルタヘナ議定書とポスト2020、主流化に関する助言機関の活動報告、IPBESグローバルアセスメントレポートの結果共有など、ポスト2020に関する交渉に必要な様々な情報の共有が行われました。
これらの意見をまとめて、ポスト2020作業部会共同議長のフランソワ氏とバーゼル氏から、会議の進め方の提案、ポスト2020の構造と検討すべき要素の第一次とりまとめ案(2種類のNon-Paper)について説明が行われ、各国やNGOからの意見表明が行われました。
ランチの時間は、通常いくつものサイドイベントが開かれるのですが、初日はプレナリー会場で一つだけ行われる形でした。内容としては、戦略的に目標を設定するために、どんな目標設定と指標設定とモニタリング枠組みの構築が可能かなどの話題提供をするもので、サイドイベントについても、ポスト2020を考えることに特化した内容となっており、従来の準備会合との違いを感じました。
午後には、議長のペーパーをもとに、意見表明が行われました。意見は、議長ペーパーに対する全体的なコメント、「ビジョンやミッション、構造について」の意見というテーマで、2ラウンド行われました。意見表明は、二日目(28日)も継続する予定です。
開会あいさつの概要
(以下、会議中のメモをもとにまとめたため、発言の全部を追っているものではありません)
CBD議長代理ムハメッド氏からの開会あいさつ要旨
・ポスト2020と、意欲的な目標設定の重要性を強調。
・IPBESや今後編纂されるGBO5からのレポートの指摘をしっかり受け止め、変革的変化(Transformative Change)を進めることが重要。
・新枠組は、進捗報告の改善、実践的な枠組み、Nature Based Solutionの要素が大事。
・エジプトは、シャルムエルシェイクー昆明アジェンダを通じた、様々な立場のCBDへのかかわりを進めるボトムアップと、国連Nature Summitを2020年9月に開催を支援するという、トップダウン両面で、引き続き、CBDに貢献していく
クリスティアナCBD事務局長のメッセージ要旨
・新しいポリシーが未来の地球と人々を救うことを期待する。成立までは非常に長い困難な旅になると思われるが、一緒に歩んでいきたい。アフリカという人権と自然が深くかかわりあうこの場で開催されることをうれしく思う。この会合を支援してくれたUNEP、政府、CBD事務局の貢献に感謝。
・新しい目標は、多くの関係者の行動を引き起こす必要がある。ホスト国である中国でも普及啓発に力を入れてくれると思う。
・今回の会議に、500人近い参加登録があったことからも、注目の高さが伺える。
・IPBESのレポートが提起する、5つのレバレッジポイントの視点や、土地劣化に関するレポートなどの成果も活用しつつ、行動の加速を促すことが引続きの重要だ。
・トロンハイム会合やその他の会合の成果を生かして議論をすることが重要。なぜなら、ポスト2020は、SDGsだけでなく、あらゆる生物多様性に関する課題にとって重要な議論となるからである。この議論は、各国の行政内での複雑な交渉やお金をめぐる議論を伴うことが避けられないだろうが、締約国の交渉の成功を祈っている。
インガー事務局長のメッセージ要旨
・長く、複雑な交渉であるが、その成果が意味することは非常に大きい。ありとあらゆるレポート、GEO6、Global Resources Outlookなどから、これまでに経験したことのない危機に人類が直面していることが分かっている。26年のCBDの歴史は、その事実から見たら不成功。愛知ターゲットも多くの行動を生み出したのに、未達という状況であり、なぜそうなったのかを考える必要がある。
・どうすれば我々の社会と自然を正しい方向に持っていけるか、いくつかの視点を提案したい。
1.間違いからちゃんと学ぶ必要。愛知目標は、多くのステークホルダーがかかわった素晴らしい目標だったが、指標がない、目標となる量的な値がないという課題もあったと思う
2.非常に高い意欲度のもとに作られた。その思いを大事にしつつ、各国が責任をもてる明確な目標の設定が重要ではないか。
3.保護地域については、17%という面積目標が設定されているが、視野を広げる必要がある。地球全体を守る必要があり、都市や農地やインフラにおいても、生物多様性のための場にする必要がある
4.自然保護や保護地域の質の向上も重要
5.環境省や環境セクター以外のセクターを巻き込む必要がある。ランドスケープレベルでの取り組みがカギ。他省庁を解決策の一つ(パートオブソリューション)に変えていく必要がある。
6.Science Based Targetが必要。気候変動の2度目標のようなターゲットを考え、地球規模、地域規模、国規模の、政府や民間の多様な取り組みを“積み重ねていける目標”設定が重要。土地所有者や先住民の管理している地域などを組み込んだ発想にするべき。
7.APEXターゲットを得ることが重要。1.5度目標のような設定が重要だ。多くの関係者のインスピレーションを引き出すことが大事。
8.目標には、ソリューションが必要。生物多様性の保全やその取り組みが経済的にも意味のある形で、貧困撲滅や農業、野生生物管理に貢献することを示すことが重要。生物多様性が気候変動にもポジティブに貢献することをもっと社会に示す必要がある。
・世界市民は、政府やUNEP等が、どう行動するかを注目している。交渉の成功を期待している。
道家哲平(日本自然保護協会/IUCN-J事務局長)
*今回の情報収集は、環境再生保全機構地球環境基金の助成を受けて実施します。