5月5日 ポスト2020コンタクトグループ

SBSTTA24のコンタクトグループが、2021年5月6日午前1時(日本時間)に開かれました。SBSTTA24のポスト2020枠組み検討における役割(マンデート)は、ポスト2020枠組みに関する科学的、技術的妥当性や説明を明確化することとされています。そこで、これまでの議論やゼロドラフトの、科学的背景や目標の背景、指標の考え方についてまとめられた資料(CBD/SBSTTA/24/3/Add.2/Rev.1)の記述をもとに、欠けている視点や、さらに明確にすべき点などについて各国の意見をまとめることになりました。

もちろん、現在のゼロドラフトはあくまで案なので、ゴールやマイルストーン、目標の記述そのもの課題も存在します。要は、説明が悪い場合と、目標そのものが悪い場合と、両方を同時に検討しなければならないという意味で複雑な議論となります。ただし、目標の表現そのものは、第3回ポスト2020作業部会(OEWG3rd)の役割とされています。

3時間のコンタクトグループは、「文書全般および2050ゴール、2030マイルストーン、2030行動目標の相関について」について意見共有の後、休憩を挟んだ後、「2050ゴール」の意見を行いました。時間の関係か全般的に、中南米諸国や欧州各国は意見を出せていますが、アフリカ、アジア、オセアニアの発言が少ないように感じました。

5月7日1時より開始予定の次のコンタクトグループでは、各目標に関する意見出しが行われる予定です

「文書全般および2050ゴール、2030マイルストーン、2030行動目標の相関について」で、出された意見

・自然に根ざした解決策(NbS)については、IUCNによって定義が明確で重要なコンセプトとする欧州と、国際的に合意や理解が不十分で濫用のリスクがあるとする途上国やNGOの見解で分かれていた。

・生物多様性のNo Net Loss(総喪失をゼロ)やNet Positive(総じてプラス)については、NGOが、生物多様性の損失を正当化することにならないかという懸念を表明したほか、途上国を中心に、共通理解が足りていないという意見がある一方、目標の意欲度を高める意図で支持する意見が存在。

・全体の相関については、条約の3つの目的をバランスよくカバーするべきという意見や、マイルストーンと行動目標に重複感があり、行動目標と達成目標についてさらに整合を図る必要性を訴える意見

・海洋、淡水、気候変動、遺伝的多様性、先住民地域共同体に関する要素(8(j)作業部会での検討されている)、資源動員、能力養成、技術移転、ABSなどに関する記述の弱さ

・ゴール/マイルストーン/目標の意欲度を高めることの重要性。特に、一部の行動目標が、愛知目標の意欲度よりも低い表記があり、修正が必要という意見(欧州中心)

・実施状況を定期的にチェックできることを意識したゴール/マイルストーン/行動目標の設定の重要性

・多様な利害関係者の参画が必要として、ジェンダー、ユース、民間の参画の視点の強化の指摘。

・NGOからは、Leaders for Nature Pleadgeで84カ国が意欲的な目標を支持しており、現在のミッションの記述を、より意欲的なものにするべきという意見も出た。

・世代間公正の観点を全体的に入れていくべき

「ゴール」について

ゴールA

・行動目標に非常に多くの視点を含むため、ヘッドライン指標の改善の必要性

・遺伝的多様性については、多様性の維持しか書かれていないが、強化の視点を必要な場合に入れるべき

・生態学的連続性の要素や記述が弱い。

・脆弱な生態系(サンゴ礁)に対する記述の強化が必要。

・種の部分は、2030年までにレッドリストインデックスを減少から回復に反転させること

・復元だけではなく、減少の回避や生態系の完全性の維持なども同時にアプローチするべき

ゴールB

・持続可能な利用の実現に必要な要素に関するゴールの設定が必要。また、主流化の議論を入れるべき。

・マイルストーンや、指標の改善が必要。持続可能なサプライチェーンや金融セクターの行動をカバーするべき

・気候変動や気候変動へのレジリエンスの記述を入れる必要

・生物多様性と健康のテーマを入れていく必要

・海洋生態系の健全性

・マテリアルベネフィットの追求が他のNCPのロスにつながるので、表現に注意

ゴールC

・マイルストーンC-1や、C-2はベースラインや測定方法に疑問があり、非現実的になっている意見と、目標として重要なため残すべきという意見。

・ABSに関する情報へのアクセスも含めて、検証方法に懸念の声(主に、欧州)

・ABSの利益配分については、資金的なものと非資金的なものがあることから、両方をカバーするべき。

ゴールD

・非常に視点が限定的である。民間や補助金の課題などもカバーするべき。マイルストーンも再検討が必要ではないか。

・あらゆる財政フローを考慮に入れるべき

・多様な資源や、能力養成、技術の進展、技術移転。実施手法に関する包括的な情報が欠けており、更なる精査が必要。

 

道家哲平(IUCN-J事務局長/日本自然保護協会)