GBFを通じてサンゴ礁を救うための3つの方法

国際サンゴ礁イニシアティブのGBFへの寄与

国際サンゴ礁イニシアティブ(International Coral Reef Initiative(ICRI))は、サンゴ礁の持続的利用と保全に関わる国・研究機関・NGOなどの全ての関係者が対等な協力関係のもとで集い議論することができる、ユニークな環境国際パートナーシップです。日本を含む8か国により1994年に設立され、現在93メンバーまで拡大しています。

ICRIメンバー国

ICRIメンバー国

ICRIはGBFの検討プロセスに参画しています。GBF第一草案の行動目標・指標に関する提言書を発行するだけでなく、これまでOEWGなどの会議にも参加し、提言に基づく発言をしてきました。今回、3/16に表記タイトルでサイドイベントを主催しています。その目的は、GBFへの提言内容を紹介し、ダイアログを行うことです。

ICRIサイドイベント案内

ICRIサイドイベント案内

サイドイベント「GBFを通じてサンゴ礁を救うための3つの方法」

会場となった部屋は、本会議/コンタクトグループのメイン会場に入れない人のための第二会場でした。午前中から開催されていたOEWG3 CG2が30分延長されたため、再度イベントは15分遅れの開始となりました。

サイドイベントでは、準備が進んでいる間にICRIでGBFへの提言に関わられた方々を紹介したビデオが流されました。開始後にも、最初に現在のICRI事務局を担っている米国の海洋国際環境科学局の次官補であるモニカ・メディナさん、そしてモルディブの環境・気候変動・技術大臣であるアブドゥラ・ナセル博士からのビデオメッセージが配信されました。

米国 海洋国際環境科学局メディナ次官補

米国 海洋国際環境科学局メディナ次官補

モルディブのナセル環境・気候変動・技術大臣

モルディブのナセル環境・気候変動・技術大臣

その後、提言書を中心的に検討してきた野生生物保全協会(WCS)の国際政策担当副社長であるスーザン・リーバーマン博士、沿岸海洋の研究開発–インド洋(CORDIO)東アフリカの創設ディレクターのデビッド・オブラ博士が司会進行、WCSのサンゴ礁保全ディレクターのエミリー・ダーリング博士のサポートでダイアログが進められました。

左から、オブラ博士・リーバーマン博士・ダーリング博士

左から、オブラ博士・リーバーマン博士・ダーリング博士

まず、参加者にICRI提言書が配布され、ゴールA・行動目標1~3&7およびそれらの指標に対する提言内容が説明されました。例えば行動目標1に関しては、文末に[and reducing pressures on the most vulnerable ecosystems(そして最も脆弱な生態系に対する圧力を低減する)]を追加することが提言されています。これは、愛知目標10では「2015年までに、気候変動又は海洋酸性化により影響を受けるサンゴ礁その他の脆弱な生態系について、その生態系を悪化させる複合的な人為的圧力が最小化され、その健全性と機能が維持される。」とサンゴ礁について具体的に記載されていたのに、GBFでは明記されていないことに対応するものです。

参加者からは、実際にサンゴ礁保全に関わっているコスタリカとインドネシアの方から以下のようなコメントがありました。

・GBFをいかに実施していくかが鍵。指標に関してモニタリングしていくためには、ダイビング機材などの資材を購入するための資金、そしてモニタリング方法に関する能力開発の提供が必須である。

・海に潜れる人は多くない。そのため、資源動員するためにサンゴ礁に関する普及啓発が重要である。そのため、ユースに焦点を当てて教育・啓発を行っている。特に小さい子供が強い関心を持ってくれている。

これに対し、他の参加者および司会から以下のようなアドバイスがありました。

・保護区の管理の経験から、地域での資源動員に向けては、①地域住民へのサンゴ礁の価値の普及、②地域ガバナンスへの組込み、が重要である。

・ブルーカーボンの動きをサンゴ礁にも適用するため、サンゴ礁生態系全体のバイオマスによる炭素吸収効果を評価し、炭素吸収源となりうるか評価してはどうか?サンゴそのものには炭素貯蔵効果は無いという研究結果だが、他も含めた研究が必要だと考える。

・地域ごとに優先保全区域を決め、コスト対効果が出せるように設計することが重要である。

GBFを反映すべき日本のサンゴ礁保全計画

日本では環境省が「サンゴ礁生態系保全行動計画」をこれまで2回策定・実施してきました。次の「サンゴ礁生態系保全行動計画2022-2030」も検討が進んでおり、ちょうど今週の3/17にパブリックコンサルテーションの結果が発表されています。この中にはGBFを含む国際動向や次期生物多様性国家戦略を踏まえて見直しが行われることが記載されています。

実は私は別の団体の立場でこの計画の検討会で委員を務めました。本来であればGBFが採択され、それを踏まえて次期生物多様性国家戦略、そしてこの行動計画が策定されるのが筋なのですが、前行動計画が2020年で終了しており、サンゴ礁生態系の危機的状況を鑑みると、策定を延ばさず、GBFは見直しの際に組み込むのが良い、という議論になりました。

国内のサンゴ礁生態系は、気候変動のようなグローバルな影響から、赤土の海への流入や直接的な開発行為などのローカルの影響まで、様々なレベルでストレスを受けています。行動計画により、日本でのサンゴ礁保全が加速することに期待しています。

宮本育昌
(国連生物多様性の10年市民ネットワーク)