二日目(22日)の動き

第4回ポスト2020作業部会の二日目は、会場を二つに分けてコンタクトグループでの議論が重ねられました。午前には、CG2にて目標7(汚染)と、CG3にて目標13(気候変動)が協議されました。一目標に対して3時間かかる場合もあるということになります。
午後は、CG1にて2050ゴールAが、CG4にて目標20(知識)、目標21(参画)、新目標(ジェンダー参画)が協議されました。
夜(19時半から10時半)は、CG5にてDSIの議論を、CG6にてBbis(基本原則)についての意見出しが成されました。

 

先住民地域共同体への連帯を示すバナーアクション

先住民地域共同体への連帯を示すバナーアクション

ターゲット7(汚染)

2030年までの行動目標である、ターゲット7は「環境中に放出される栄養素を半分以上、農薬を3分の2以上削減し、プラスチック廃棄物の排出をなくすなど、あらゆる発生源からの汚染を、生物多様性や生態系の機能、人間の健康に害を与えないレベルまで削減する。」といった原文の内容になっています。

この目標は、具体的汚染源(肥料等の栄養塩、農薬、プラスチック)の削減目標と、全般的な汚染削減の目標で構成されるため、共同進行は、全般的な汚染削減目標と、具体の数字の双方を分けて検討する進行を提示し、その通りに進みました

全般的な汚染削減目標の論点:
・動詞の選び方:汚染源の特定と評価/削減/コントロール
・動詞の目的語の選び方:排出、環境への蓄積(deposit)、汚染のリスク
・削減する汚染源の記述の仕方:あらゆる汚染源/栄養塩、化学物質、農薬、プラスチックなど具体化するか/騒音や光害などの新しい要素を入れるか
・減少の数値目標(半減あるいは大きく削減)を設定するか、個々の汚染源ごとに設定するか。
・目標の書き方:生物多様性に悪影響を出さない水準とするか、人の健康に悪影響を出さない水準も含めるか
・配慮事項:累積的影響や相互作用、農薬などの化学物資の減少に関する食料安全保障や暮らしへの配慮などを記述するか

また、汚染の範囲や汚染リスクについて、用語集で解決してはどうかという本文を短くするための建設的な意見も出ました

具体的汚染源の数値目標の是非については、栄養塩(肥料)と、化学物質と、プラスチックを分けて検討されました
・量ではなく、栄養塩の不均衡(imbalance)への対策といった言い方で各国の事情に合わせられるのではないか
・個別の汚染源の議論ではなく、優良実践の促進や、管理のための適切な枠組みの構築というアクションを入れては合意を図るのはどうか
・過剰(excess)栄養塩と栄養塩のどちらで目標値を設定するか
・化学物質か、環境に逸出される化学物質か
・化学物質への数値目標と、生物多様性に悪影響のある農薬とで数値目標を分ける案

ポイントとして、この目標は、食料安全保障上も重要な農業とも密接に関わりますし、栄養塩の環境流出対策は、国によってかなり状況が異なります。栄養塩の数値目標がそのまま自国の数値目標になることへの懸念があり発言してくる国も目立ちます。「GBFは、世界全体の目標であり、各国は、単純に国内目標設定を同じ数値(割合)で求められるものではない。既に良い取り組みが実施されている国の政策に影響は及ぼさない」といった発言で、世界レベルの意欲的な目標へと誘導しようという発言もありました。

ターゲット20(知識)

原案は、「先住民地域共同体の自由、事前、および十分な情報に基づく同意と共に得られる彼らの伝統的な知識、技術革新、慣習を含む、関連知識が、モニタリングを可能としながら、生物多様性の効果的な管理のためや、啓発、教育、研究の促進による意思決定の指針となる。」というものになります

知識の意思決定の活用というのがメインの目標なのですが、意思決定のために、先住民地域共同体の知識等を勝手に用いられることが無いようにという配慮の言葉の選び方に多くの時間を割きました。

論点としては、
・先住民地域共同体の知識を入手可能にする際の表記に、PIC/FPIC/承認や関与/MAT/国内法に従って、などどのような言葉を使うか、
・知識について、入手可能な最善/質の高いといった形容詞を付与するか
・知識を作り上げるための基礎データ(研究)の重要性を指摘するため、Dataという言葉をどこに入れるか
などが話し合われました

ターゲット21(参画)

原文は「土地、領土、資源に関する彼らの権利を尊重し、先住民や地域社会、女性や少女、若者による生物多様性に関連する意思決定(および司法へのアクセス)への完全、衡平、効果的かつ性別に応じた参加を確保する(同時にすべての関係者の関与を強化する)」という目標です

主な論点は、
・司法アクセスの確保という言葉を入れて良いかどうか(原案ではカギカッコがついている)、その組み込み方や、誰の司法アクセスを確保するかという表現手法の検討
・先住民地域共同体の権利に関する国連宣言や国際人権法への言及をするか、国内法や国際的な仕組みに従ってなどの広い表現とするか
・尊重respectingに加えて、認識recognizingという表現もいれるか
・「同時にすべての関係者の参加を強化する」という目標の射程を拡げることの是非:賛成、基本原則の章で扱うので不要、指標がないので不要などの意見。

ポイントとして、この参画促進という目標の射程を、脆弱な人々、先住民とするかなどで意見が分かれています。

新規目標(ジェンダー目標?)

ターゲット21と連動する形で検討されたのが「女性と女児が生物多様性の保全と持続可能な利用から公平なアクセスと恩恵を受けること、ならびに生物多様性に関連するあらゆるレベルの政策と意思決定における女性と女児の情報に基づいた効果的な参加を確保する。」という新規目標案です。

共同進行は、取りまとめる・文章や目標数をシンプルにするという視点から、21に要素を加える形で合意を図ろうとしましたが、多くの国から、ジェンダーに関する個別目標設定を求める声が上がりました。
他方、協議を進めると、内容が、ターゲット21と重なりつつ、司法アクセス等の記述がない分「弱い目標」のように読めてしまい、21と整合を図りながらどのようにまとめるか、協議に苦慮する様子が見られました。もう少し議論を重ねる必要がありそうです。

基本原則(Bbis)

基本原則は、目的の後に続く、新たなセクションとして、GBF実現のための基本原則をまとめるセクションとして想定されています。しかし、ジュネーブ会合での議論のなかで各国から出された案は、冗長だったり、重複があり、4つのクラスターに分けて、意見出しをするような形となりました。明日以降、共同進行によるとりまとめ(Non-Paper)が出されるものと思います。

協議されている基本原則は、下記のようなものがあります
・ジェンダー、先住民地域共同体への配慮
・あらゆる社会、あらゆる政府の参画(Whole-society Approach,Whole-government Approach)
・主流化
・権利ベースアプローチ
・世代間公正
・条約間連携
・国‐自治体の縦の連携と、自治体間の横の連携
・自然に根差した解決策
・資源動員
・社会変革、社会変革のための教育、最新科学の活用

(公財)日本自然保護協会・国際自然保護連合日本委員会
道家哲平