【ユースレポート】文書内の言葉選びの重要性

OEWG4も5日目となり、終わりが近づいてきました。コンタクトグループ1では、2050年のゴールとなるA~Dの4つについて、交渉が行われています。この議題では2日目の最初の3時間でわずかGoal Aの数行のみしか進んでおらず、4日時点での進捗状況の概要は写真の通りです。議長からは「みんなCompromiseしてね」、「10分前まではよかったのに、またOEWG3のクリスマスツリーみたいになっちゃうよ」と笑いを誘う場面も見られました。なぜわずか数行に数時間も費やすことになるのか、この理由の一つとして、各国それぞれの状況や立場によって文章内で使いたい単語・目標等が大きく異なるから、と言うことを国際会議に参加することで学ぶことができました。

4日時点の2050年ゴールの進捗状況

4日時点の2050年ゴールの進捗状況

例えば、特に時間をかけていた「生態系のコネクティビティ・完全性・回復力(レジリエンス)を2030年までに少なくとも5%~する」という文章について注目してみます。First Draftでは「高める(enhanced)」という言葉が使われていましたが、ブラケットで「保持する(maintained)もしくは高める(enhanced)」が提案され、今回のコンタクトグループでは最終的に「保持する(maintained)、元に戻す(restored)もしくは高める(enhanced)」に変更されました。国によって「生態系のコネクティビティ・完全性・回復力(レジリエンス)を2030年までに少なくとも5%」という目標の達成レベル感は全く異なります。高める(enhanced)と言う言葉だけでは、既にこれらの多くが失われ、マイナスから5%まで引き上げる必要がある国もあれば、既に5%に達し、これ以上上げる必要のない国もあります。国際的な目標とは言え、自国にとって実現することが難しい目標を掲げることは、どの国も避けたいはずです。このような積み重ねが議論を長引かせる要因の一つになっているようでした。

置かれている状況が全く異なる国々が全員納得するように、ひとつの目標を作り上げるのがいかに難しいかを今回の会議に参加することで直接感じることができました。しかしCOP15が12月に決定し、OEWG4も残すところあと2日となり、費やすことができる時間も限られています。議題によってはまだまだ道のりが長く、順調とは言えないスピードで議論が進んでいますが、最終的に完成したポスト2020枠組みはとても素晴らしいものになるのではないでしょうか。

一般社団法人Change Our Next Decade

髙田 健司