COP15-8日目(12月14日)の進行
2週目の二日、明日から閣僚級会合の開催を控えたCOP15は、行政担当官による交渉の佳境を迎えました。周辺では、生物多様性条約締約国会議史上初めて金融に特化した「金融デー」と銘打ったイベント群が開かれ、各種サイドイベント、リオ3条約パビリオン、プラスケベックでは先住民地域共同体デーなど、様々なイベントが展開されています。
第1作業部会関連では、能力養成のコンタクトグループと、指標のFoC会合、午後には、ポスト2020枠組みの行動目標10、19、3、16の議論、DSI、資源動員のコンタクトグループなどが開かれました。第2作業部会では、健康と生物多様性、気候変動、合成生物学のコンタクトグループが開催されました。
交渉の勝者と敗者
少しずつL文書が揃ってきました。締約国の中には、自国の主張を勝ち取った、あるいは、勝ち取れなかったということも出てきているところでしょう。
NGOの視点から言えば、出身国の主張が通るのも大事かもしれませんが、勝ち取れなかった敗者は誰かということを考えたいと思います。
国際条約というのは、条約に加盟することで、自国の主権を一部国際ルールに委ねるという意味で、自国の自由の制限を受け入れることになります。しかし、そうしででも加盟するのは、もっと大きな利益である国際社会や地球全体の利益、地球益とも呼べる成果が、長期に翻って自国の国民や、自国の将来世代にとって価値があるからだと思います。この交渉の場面は、生物多様性という自然が持つ変動に合わせて変化できる力(変異性=Variability)を世界各国がそれぞれ保ち、そこから恵みを受け続けられるようにするという地球全体の利益と、自国の利益も得る(あるいは、不利益を避ける)ための調整・交渉とも言い換えられます。
交渉が過熱すると、国益対国益の戦いに陥っているように思えるシーンが見られます。その行きつく先は、それぞれの国益が優先されて、地球益がなおざりにされ、生物多様性の損失が続き、回復への道筋が遠ざかることです。
明日15日から、閣僚級会合が始まり、閣僚レベル(国民が選挙で選んだ人々)の交渉が行われます。自国の意向を国際社会で通せた政治家を評価することはやめて、地球益を生物多様性の危機的現状を「交渉の敗者」にしない決断を下す政治家こそ評価することが大事だと思います。引き続き、交渉の様子をお伝えしたいと思います
国際自然保護連合日本委員会 事務局長 道家哲平(日本自然保護協会)