ビジネス関連サイドイベント その2

前回のブログ「ビジネス関連サイドイベント その1」では、ビジネス関連の動向とキーワードについてお伝えしました。今回は興味深かったサイドイベントについてご紹介します。

eDNAによる生物モニタリングを提供するベンチャー「NATURE METRICS

前回の記事で金融・企業に対して自然に関する情報開示を求める動きがあることをお伝えしました。そのためにはビジネス活動がどのように自然と関係しているかというデータが必要になります。その一つとして操業地や原材料調達地やその周辺にどのような生物(特に希少種)がいるかという情報が必要です。それを簡便に行うことができるとして近年注目が集まっているのがeDNAです。

イギリスに本社があるNATURE METRICSは、世界中からサンプルを集め、分析をしています。会場外で行われたセミナーにおいては、絶滅危惧種の淡水魚が、以前に知られていた場所(保護区)の外にも分布していることが見出されるなどの成果が報告されました。ブースも出展しており、長期間の生物種データの推移を見ることができるダッシュボードのデモ版などが紹介されていました。

保護区外で希少生物の分布を確認

保護区外で希少生物の分布を確認

NATURE METRICSのブース

NATURE METRICSのブース

Transformative business action towards nature-positive from national to global scale

世界経済人会議(WBCSD)とBusiness for Natureが、CDP、UEBT、Textile Exchange、DHI Malaysia、Endangered Wildlife Trust、Forética、CEBEDESと共に主催しました。

この中では、WEF「ネイチャーポジティブに取り組むことはビジネスリスクを緩和する」、CDP「企業の取り組みについては、透明性とトラッキングが重要である」、CEBEDS「これからの企業の生物多様性の取り組みにおいては、協働・野心・行動が必要である」、DHI Malaysia「マレーシアの企業はGBF行動目標15にmandatoryが記載されるのを歓迎している」、などの発言が興味深かったです。

CDPの発言の元には、2022年度に気候変動質問書に初めて組み入れた生物多様性に関する企業の取り組みの結果(以下写真参照)を踏まえてのことですが、CDPのプレスリリースにはグラフが掲載されていなかったので、このデータは有難かったです。

CDPによる企業の生物多様性の取り組み調査結果_コミットメント

CDPによる企業の生物多様性の取り組み調査結果_コミットメント

CDPによる企業の生物多様性の取り組み調査結果_バリューチェーンへの影響

CDPによる企業の生物多様性の取り組み調査結果_バリューチェーンへの影響

アルファベットスープから掬い取れるもの

ビジネス系サイドイベントでは、時々「アルファベットスープ」という言葉が聞かれます。これは、多種多様な単語・略語があり分かりにくい、という文脈で使われます。

これらは団体名やイニシアチブの略称、ツールや評価手法の略称・名称であり、世界中を見渡すとビジネスと生物多様性に関連するものだけでも星の数ほどあります。

その中でも、今回繰り返し出てくるものは限られています。前回ご紹介したTNFDはもちろん、他にもCDP、SBTN、ISSB、ENCORE、IBAT、Traseなどが多かったという印象を私は持っています。これらはいわゆるデファクトスタンダードになり得るものであり、今後もその動向に注視していきます。

宮本育昌
(NPO法人アースデイ・エブリデイ)