SBSTTA-18 GBO4の紹介と、各国からの意見

SBSTTAは人数も多いので、大きな会場です。

SBSTTA初日午前の議題は、 地球規模生物多様性概況第4版(GBO4)についてです。

まず、パリ大学のポール・リドリーさんがGBO4の紹介が行われました。

議題案はこちら

この文書は未確定のものなので(これからその評価の妥当性などを議論)なので、取り扱いは注意

ポール先生による紹介

・愛知ターゲットの中間評価という非常に大きな視点を簡略に話したい。まずは、このアセスメントに関わった多くの人とに感謝。

・GBO4は、愛知ターゲットの達成状況、どうすれば達成するか、持続可能な開発との関係性など。4つの疑問に答える形で作成された。

・シナリオ分析、50以上の数値に基づく生物多様性指標、第5次国別報告書、科学者からのインプット、専門会合、資源動員ハイレベル会合、EBSAなどをベースにテクニカルレポートを作り、メインレポートを作り、総括文書とキーメッセージを作る予定。

・愛知ターゲットの実施状況に関するダッシュボードで、主な結論を解説。目標から遠ざかっている、進展なし、進展あるが目標に届かない、目標達成の見込み、目標を超える場合などに分けて表現している

・目標全体を評価するのではなく、目標の中に入っている、いくつもの要素を分解して、目標達成の状況を評価。例えば、外来種(目標9)は、4つに目標を分解して評価。

・GBO4は、国家戦略にどのように書かれているかというのも参照している。その意味では、ペーパーNBSAPではダメなのです.国家戦略がちゃんと実施されていることが重要だと思います。

・そして、最大の特徴は科学者の視点から、どういう行動が必要かというのもまとめてあること。

・指標についてみると、生物多様性の状況(State)は減少劣化、生物多様性へのプレッシャー(pressure 劣化の圧力)は上昇、生物多様性への対応(response)は上昇。という状況。NBSAPをまとめると、愛知ターゲット10や補助金への国の対応が少ないことが分かる。

・ダッシュボードを見ると、ほとんど、進展があるけど目標達成に届かない、というのがほとんど。good but not enoughという状況。良い評価が名古屋議定書と国家戦略の領域。

・サンゴ礁、種の保全、貧困層への生態系サービスの提供、持続可能な消費生産などは、むしろ目標から遠ざかっている。

・GBO4には、各国での成功事例を紹介し、国レベルでの取り組み状況、良い活動などを紹介している。

・持続可能な開発目標との関係や2050年ビジョンとのリンクについて。グローバルテクノロジーの道、分権化による解決策、消費と生産の変更による解決策というシナリオごとに分析している、

・GBO4は7月9日までにコメント募集、10月6日までに発表という予定。

次は、トーマスラブジョイさんによる、GBO4ワークショップ(私も参加)の報告。

トーマスラブジョイ:非常に有意義な会合であった。GBO4について総合的に評価。生物多様性の損失を食い止めるためには、このコミュニティーだけは無く、より多くの人々に、統合的に管理していくことについて伝えていく必要がある。生物多様性は障害ではなく、持続可能開発目標の中核を占めなければならない。このGBO4の成果を国や、主体毎に分けて、必要なメッセージを伝えていく必要がある。GBO4を使って盛り上げていく必要がある。

<質疑応答>

東ティモール:愛知ターゲットに進展が無い部分があり、次のステップでその分野に積極的取り組む必要があるのでは。

ザンビア:3つのシナリオのうち、どれがもっともよいシナリオなのか?

EU:このGBO4の作業は、EUなどの地域レベルでもそのシチュエーションに合わせて検討する必要がある。GBO4の手法やモデルなどは、締約国に利用可能なのか、そして、地域や国レベルでの取り組みを進めていくことができると思います。

コスタリカ:GBO4の成果をどのように地域レベルに解釈し、活用していくか?

パキスタン:目標12、種の回復について。レッドリストの改定が非常に重要。

<回答>

GBO4の中には、愛知ターゲット事に取り組むべき行動があるので、それに注目してほしい。それらは非常に全般的なことが書かれているので、国毎でより詳細にしていく必要がある。

シナリオについては、比較用につくったもので、どれが良いというものではないがが、技術アプローチは、農業効率のもっともっと改善し行動にしていく。先進国では、食肉需要が減る傾向があり、途上国では向上傾向がある。農業や食のありかたが非常に大きなインパクトを持っている。

リージョナルアセスメントについて、多くのマップを地域レベルでブレークダウンして伝えることができる。これは世界レベルのでアセスメントなので、IPBESでのアセスメントとの協働が必要。IPBESでも地域アセスメントを行うそうなので、地域分析がますます重要。

この文書に関わったものは、「何がおこっているかを知ることが、行動をとるために重要」ということを考えている。

GBO4についての専門家によるプレゼント質疑応答が終了。次に条約事務局による、議題と議題関連文書の説明にはいりました。その後、各国からのステートメントがなされるのだと思います。

GBO4への意見表明

コスタリカ:過剰捕獲の課題や、コーラルリーフの再生等の事例など、第5次国別報告書から、GBO4に提案すべき内容がある。森林のカバーの向上と、一方で分断化などの課題がある。

メキシコ:保護地域の面積目標や、生態系復元、国家戦略などの進展があるが、他方で、絶滅危惧種や、ジェンダーなどの分野での後退などが紹介されている。これらの解決のために必要な資源なども議論するべき。指標にいくつかは各国の取り組みなどに依存。先週話した、オンラインレポーティングシステムが非常に重要なツールになる。ピョンチャンロードマップは、各国からの積極的な資金も含めた意思があれば、非常に重要なツールになる。7月9日に各国が積極的にコメントするのが重要。

韓国:GBO4の成果を歓迎。土曜日のワークショップが非常に良い学びの機会となった。SBSTTAで、アセスメントだけではなく、どういう行動が必要かというところをもっと強調するべき。GBO4は、愛知ターゲットが達成”可能”なのだというメッセージを出すべきだと思う。

マレーシア:主要な成果に注目。ターゲットごとの分析があるのがとても良い。ダッシュボードが見やすくてよい。各国の取り組み強化につながるものになってほしい。

中米カリブ海(コロンビア):GBO4を歓迎。懸念として、GBO4では愛知ターゲットの達成が不十分で、途上国では多くの国が資源動員が不十分である。また、IPBESとのリンクを図ることも難しい。途上国の、科学的、技術的課題として抱えている問題にも取り組んでほしい

日本:GBO4の専門家に感謝と歓迎の意。ピアレビューは愛知目標20を入れていないし、文書の締め切りが短すぎるので、もう数週間長くしてほしい。最近の第5次国別報告書の成果を極力入れてほしい。各国からの事例の組み込み。特定の目標(愛知ターゲットの3や16)などについてもさらに詳細分析が必要。また、この成果をどのように広報していくか、日本語に直して、コミュニケートするつもりである。そういう取り組みを奨励する文言が提言に必要

:第5次国別報告書の内容がもっとはいるべきだし、ピアレビューをもっと奨励する必要がある。確固たる科学的基盤に基づいたGBO4の成果が重要。主要成果をまとめることについては、SDGsも視野に議論をしていくべき。また、成果を資源動員ともリンクさせたい。COPでの決議案が必要。

ロードマップについて、行動へのコミットメントを行っていて、可能性のある行動をもっと絞り込んで優先度を明確にするべき。また、主体毎へのメッセージをまとめるべきではないか。資源や能力育成にもつなげていくべきであるが、先週の会合との重複は問題IPBESとの調整や、次回GBOに行かしていくための議論が必要。

スイス:第5次国別レポートがまだ考慮されていない。GBO4とアクションとの関係について、どこまで書き込むかまだ判定が難しいのではないか。目標10についてのアクションにもっと優先度。ピョンチャンロードマップについて、WGRIでの議論を組み込んだ提言が必要。SBSTTA17の決議を補完する形で提言をまとめた方が良い。

キューバ:コロンビアを支持。目標の一部に成果があったけれど、多くが進展が不十分であったことに懸念。SDGsなどの、健康や持続可能なエネルギーや水などといった社会の大きな議論にも貢献していき、単独ではなく、協働で達成に向けて行動するべき。資金や人的、物的支援が無いと、難しい。近年の資源を巡る議論をみると、ほとんど実質的に増えていないことに問題を感じる。新規の追加的で、予測可能な資源が求められている。

ベルギー:GBO4のコメントはまだ全部終わっていない。文書のタイミングが遅かった。事務局長は、「3ヶ月前」までに文書を準備するというルールを配慮してほしい。GBO4のワークショップも通知がギリギリだったので参加できなかった。

タイ:GBO4の「とるべきアクション」を各国、関係者が十分考慮することを提案

インド:ピアレビューが重要。GBO4がまだこれから新たな情報を組み込めると思うが、文書のより活用に向けた取り組みがある。NBSAPの更新とうはこれからも続くので、その成果をどう入れ込んでいくかが重要。この成果をUNファミリー全体で活用する必要がある。この成果を広く社会に伝えていくためのツールが必要。GBO4はCOP12の他の議題にも影響をおよぼすので、統一のとれたCOP12決議ができるように工夫が必要。

カナダ:コミュニケーションプロダクツが必要。とりうるアクションについて重要だが、もっと詳細にしていくべきである。ITTOやFAOなどの指標の捉え方などの見直し。テクニカルレポートへの最初のコメント機会が短すぎたことに懸念。資源動員についての情報が不十分。北極地域での取り組みなども入れこんでいきたい。地域評価について、北極会議がノルウェーで開催されることを紹介。

中国:愛知ターゲットを実現させるためにGBO4が有効。各国のシチュエーションに合わせて、取り組むが必要。マイルストーンなどについても、基本的に良いものであることと理解。決議案も歓迎。どのように決議を具体的な行動に変えていく必要がある。各国に行動をとるよう呼びかける文章がCOP12で必要。GBO4はシンプルな表現ではなせることが普及啓発には重要。

ノルウェー:報告は、最近の傾向と、愛知ターゲットの実施状況の評価がなされているが、COPでの決議案をSBSTTAとして作ることが重要。政府は追加的な行動が必要であることを認識するべき。また成果をSDGにつなげる。この成果を、生物多様性ファミリー以外に伝えることの重要。コンタクトグループを作って、ピョンチャンロードマップでも議論することが重要。FAOのデータについて最新のものに更新する必要がある

EU:特に、進んでいない部分、4、8、10、14の目標について次のステップをどうするかしっかり議論した方が良い。目標10については2015年までの目標なので、強調をしなければならない。2015年までの目標10は失敗といわざるをえない。ピョンチャンロードマップについては、多くの活動が含まれすぎているので、再パッケージ化が必要.ピョンチャンロードマップとSDGSとの連携について。

マリ:レビュー時間の短さに懸念。80程度の第5次国別報告書で十分な評価と一定良いかどうか疑問。

ブラジル:保全と持続可能な利用の推進、愛知ターゲットの推進はまだまだ。資源動員や愛知目標3、消費清算パターンの変革などが取り組み不十分。GBO4はもっと多様なフォーラムで扱われるべき。生物多様性のコミュニティーは、もっとどのようにコミュニケーションをとるべきか考える必要。ブラジルでは、20の目標をつくり、一部は、愛知目標を超えた。アマゾンは30%を保護区にする。2015年までに、生物多様性の特定(分類)など、絶滅危惧ゼロのシナリオの採択など。100名以上のステークホルダーと作った。ポールリドリー博士のプレゼンなども資料に組み込んでほしい。

エジプト:既存のサマリーは、それぞれの議題に合わせて、政策決定者にメッセージを出せるようにしたい。ケーススタディーをもっと活用したいので、第5次国別報告書を各国に提出したい。愛知ターゲットの実施のための、名古屋議定書と資源動員の実施も重要

ボリビア:マザーアース、人と自然の共生する社会という新しいパラダイムに向けて取組中。マーケットベースだけでない、市民レベルの取り組みもしっかり反映させていくべき。

アルゼンチン:ナチュラルキャピタルなどは、国際的な用語になっていないので、修正が必要。バイオエネルギーについては、生物多様性への影響を考えていく必要がある。

ウガンダ:GBO4の生物多様性の損失が続いていることと、いくつかの目標は後退しているというのが大きなメッセージ。大きな問題は資源の不足である。キャパビルの重要性と、実施の手法に関する文章が必要。

ニジェール:GBO4での評価を資金提供者や政策決定者に伝えていく必要。

ブキナファソ:GBO4は、大きく次のステップをとるために重要。戦略目標のE(実施の強化)が重要。社会、経済的、文化的価値観が行動の変化(Behavior Change)に必須。

ILC(UN先住民フォーラム):先住民、女性、ユースなどの役割を高め、参加を奨励する文言の提案。先住民や、女性、ユースの参加を、適切な資金支援のもと推進するべき。

DIVERSITAS:この技術文書のチェックを各国によびかけ。モニタリングの重要性に関して、GEO-BONが支援準備を整えている。生物多様性と生態系サービスに関するあらたな取り組みも有効。今後も協力を続ける。

UN先住民フォーラム:生物多様性と先住民の関係は、マザーアースという思想とも一致し、社会と経済的なバランスの中で、生物多様性の保全や持続可能な利用に貢献。循環的な暮らしなど。それらの営みが、ガスやオイル開発など、様々な活動によって影響を受けている先住民が移民、居住地からの移動を強制される事例はまだあり、伝統的な価値や言語や知識が失われている。先住民の参加が重要。

IUCN:愛知ターゲットの採択は、世界の生物多様性の取り組みを一つのものに変えた。WGRIでも緊急の行動が重要であるとされた。IUCNのノレッジプロダクツの活用も。自国の活動と愛知ターゲットの関係マップをしっかり作るべき。また、各国の目標は、愛知ターゲットの目標を超えていかないと、世界全体として達成しない。世界公園会議でも保護地域を通じて、生物多様性が社会の多くのセクターに利益があることをみせていく。「我々は、生物多様性の損失を止めるための、効果的緊急の行動をとっているだろうか?」を常に問いかけ続けるべき。

事務局からのレスポンス:GBO4は極力早く配れるように取り組みたいし、国家戦略は少ないが、各国の第5次国別報告書も十分に考慮している。81の国別報告と、31のアドバンスバージョンの国別報告を活用していきたい。

コンタクトグループの設立が宣言、コロンビアのブリジットさんが共同議長として指名されました。

(公財)日本自然保護協会 道家哲平