NGO戦略会合の報告

CBDアライアンスがコーディネーションをする形で、重要な会議の前日の日曜日にCBD参加者の関心事項や共同アクションの可能性を模索するため「戦略会合」というものを開催します。

日本人が多いのですが、海外NGOとしては、フレンズオブジアース、ETC、グローバルフォレストコアリシン、ナチュラルジャスティス、USCカナダなどの団体が集まっています。日本からは、国立環境研究所、IUCN-J、NACS-J、CEPAジャパン、UNDBジャパンなどが参加。多分明日からはもっと増えていくと思います。

まずは、ECOの紹介がありました。
これは市民団体(Civil Society Organization))の主張をニュースのような形で発行し、配るものです。水曜日は農業に特化したものを、木曜日はカルタヘナ議定書(今年10周年を迎える)の評価記事を出そうという提案がされています。

次に、SBSTTAの進行について議論となりました。

3日間のプレゼンテーションの後、SBSTTAの成果文書に着いて交渉が二日間しか行われないのですが、それについての意見交換を行いました。

SBSTTAが政治的な議論に偏っていたことへの改革案として今回のような進行が試されるものですが、懸念としてあげられていたものが、愛知目標3のように政治的手法に関するものが、ちゃんと議論できないのではないか、また、キースピーカーの選出方法が不透明(恣意的に選ばれることにならないか)ではないか、

今回のプロセスでは、発展途上国の代表団の負担が大きいのではないか、なぜなら代表団が1−2名しかおらず、交渉の始まる木曜朝に何ページも及ぶ合意文書案が事務局から出されても、全部を読み込んでチェックするのは非常に困難になるからです。

市民から途上国をサポートする必要があるという意見が出されました。交渉会議が同時にいくつも立ち上がり、途上国にとって、通訳がつかない会合になったり、代表団が1−2人しかいないので対応できないということがいつも問題になっていますが、今回はそれに拍車をかけるような進行になるのではないかという意見が出されました。注目してほしいポイントを積極的に政府にインプットしようということです。

 

議論の中に、戦略目標Eが入っていないことについての意見交換もしました。

戦略目標Eについては、科学者の議論の範囲から外れるからないのではという意見がある一方、しかし、IPBESの持つ政府と科学のインターフェースの関係がよくわからなくなるという意見。SBSTTAの決定が十分な時間をとって議論できないというのは、実施につながらない決議が行われて弱体化につながるのではないかという懸念も出されました。

 

戦略計画の中でどの項目に関心があるかということも議論しました。

参加者から出されたキーワードは以下の通りです。

キャパシティビルディング、森林、ICCA、新規の緊急課題、implementationにつながる議論となるか?先住民の参加が確保されるかなど。ほかにも、ユース、科学者の役割、ネコニコチノイド、自然資本やグリーン復興支援、企業による貢献、生態系サービスアセスメント、愛知ターゲットの実施、放射能汚染の課題。遺伝資源の課題(農業や持続可能な利用=愛知目標7)何ど非常に関心事項は多岐に渡ることがわかりました。

 

<愛知目標に対する意見共有>

戦略目標A

例えば、生態系サービスの価値を把握する取り組みの研究を進めようということも「研究のための研究」ではなくて、「政策に対応し、政策の重点を生物多様性に動かす研究を求めないと駄目だよねといった話。

GEO-BONという会合では、生物多様性の観測もそれを政治的決定に活かせないといけないということが指摘されています。生物多様性の評価が、安易な生物多様性オフセットにつながらないようにという懸念をも指摘されました。

目標3については、WWFが漁業への補助金と、それが違法漁業(IUU)につながっているのではという指摘、それから、バイオ燃料(特に、大規模バイオマス)に関する農業補助金の問題も指摘したいという意見をあげました。

目標4(消費と生産)では、生物多様性認証についての注目に対して、量と質のチェックを忘れてはならない。第3者評価が取り入れられていない認証基準とか緩い認証基準、多くの企業が取り入れられるように基準を緩くする事例などがあるかもしれないので注意しようということです。

また、消費と生産と言ったときにグローバルな取引への注目にならないようにしようという議論。いわゆる流通にのらない小規模な生産や取引,non-manetory tradeへの注目し、経済の形にも多様性(地域共同体の交換を基本とした非貨幣経済)というものも強調できるのではないかという提案です。

経済と一頃で言っても多様で、いわゆるお金のやり取りが発生しない地域経済がちゃんとあり、持続可能性の高い経済の仕組みにもっと注目してもらうチャンスにできるのではないかという提案でした。

戦略目標B

目標6(過剰漁獲)。この議題にふさわしいか分からないが、海藻を養殖(という表現で良いのかな?)して、それをバイオマス発電の原料にしようという議論があるそうでそれについては問題提起したいという意見がありました。

目標7(農林水産業の持続性)。ターミネーターテクノロジー、遺伝子組み換え作物や養殖業の問題提起もしてはどうかという指摘(会議参加者もこの議題の中で話すのが良いか分からないようで議論しながら進めています)。にじゅうまるメンバーの一つラムサールネットワーク日本が、愛知目標にそって水田目標と行動計画をつくって行動していることを紹介しました.次のSBSTTAでは英語にして紹介できるといいなと思います。

http://www.ramnet-j.org/2013/04/report/1695.html

目標9(外来種)。 GISP(Global Invasive Species Program)というのが大きな役割を演じている。また、国内でいかに規制を強化しようと思ってもWTOのルールが障害になっていることが指摘されました

目標10 地球工学と海洋施肥のモラトリアムという決議があることをリマインドするべきという意見がでました。

戦略目標C

目標11(保護地域)。ICCA (Indigenous and Local communities Protected Area)の重要性を提起したいという声(先住民グループの関心も高いので支援しようという意図も)。

それから、equitable managementとconnected system というのも大事なキーワードで、保護地域管理への地域住民の参加やコリドー・バッファーゾーンの取り組みへも強調したいという意見です。

目標12(種の保全)。構成生物学の分野で、絶滅した種を復活させるため技術開発があるらしい(ETCグループの指摘、欧米の研究ですすんでいるのかな?)。生態系の復元とも関係が深く、ウォッチドッグ(監視)としての役割を果たして行こうという指摘がありました

目標13(遺伝資源の多様性):遺伝的多様性を「誰のために」守るのかという指摘をちゃんとしようと。大規模な種苗会社のためではなく、農業者の権利を守るための取り組みであるということ。

戦略目標D 

目標14(生態学的復元)。生態学的復元については、色々な立場があるよう。生態学的復元だけではなく、社会的視点での復元の重要性を指摘してはどうか。目標14は生態系サービスという概念によって「生きもの」視点だけでなく、社会的な視点をCBDにもたらした。水とか重要なサービスと書かれており、文化的なサービスとか地域住民にとって大事なサービスがなおざりにされないように注意しようという指摘も。生態系復元がいわゆる絶滅危惧種のためのものではないということを知ってもらうことができる目標だね、という声です。

目標15(レジリエンス):目標14と同じ関心。劣化した土壌の復元が安易なモノカルチャーなどにつながらないようにすることが重要

目標16(ABS):名古屋議定書の多くの文言の解釈が割れており、交渉がまだ行われているという意味ではまだ最終版となっていないと言える。EUでは、企業や研究者だけを対象としており、市民の方を向いていない。

戦略目標E

戦略目標Eを議論しない理由が話されました。革新的資金メカニズムについての議論を再燃させたくない、GEFによる資金供出の議論が終わっていない。WGRIがふさわしいという理由からではないかと分析されました。

このようにそれぞれの視点や考えを共有しながら一週間の会議に臨む準備をしました。

(公財)日本自然保護協会 道家哲平 生物多様性わかものネットワーク 村西真梨子