SBSTTA19決議その1 愛知ターゲット関連

生物多様性条約第19回科学技術助言補助機関会合の成果をご紹介します。

*本内容は、文法・法律上の精査を受ける前の会議で用いられたL(Limited Circulation)文書をもとに要約しました。表現の強弱については厳密さを欠いている点ご留意ください。

その1では、生物多様性戦略計画2011−2020および愛知ターゲットに関して、中間評価を受けて何が必要か、戦略計画の実施(=愛知ターゲットの達成)に必要な政策の評価や科学的技術的ニーズとその対応、戦略計画の実施状況を把握する指標についてが、話題となりました。

SBSTTA決定は、大まかに言うと、「SBSTTAとしての決定」と、「COP13で採択(検討)すべき事項の提案」という大きく二つのパートからなり、それぞれ一般的な事項、締約国への奨励事項、事務局への要請事項という構成になっています。SBSTTAとしての決定はすぐに効力を発揮する内容、COP13で採択すべき事項は、COP13の決定後に効力を発揮するものです。

3.1 GBO4の成果を受けた詳細な検討と特に主流化に関して

科学技術助言補助機関として、GBO4の成果と、(*日本の提案ですが普及啓発と主流化が密接に関わることから)UNDBに関するCOP12決定第2を想起し、更なる取り組み(特に国家戦略の活用)の重要性を意識しつつ、メキシコ政府の主流化を進めるという取り組み(今月ワークショップを開催予定)を歓迎しました。締約国には、既存のツールを活用や主流化支援のためのオープンデータアクセスの促進を奨励しました。

事務局に対しては、GBO4の成果の一部を次のSBSTTAやSBIに活かすとともに、農業、林業、漁業が愛知ターゲット達成にどのように貢献するかをまとめた参考文献(Info Document4,15,17)をピアレビューやFAOの協力でさらに充実させ次のSBSTTAとSBIに提出すること、メキシコでの主流化ワークショップの成果を共有すること、主流化に関するガイダンスを作成すること、生態系復元に関する短期的アクションプランの主要要素を準備すること、主流化に関する第5次国別報告書(各国の事例)の整理、SBIでの検討のためどのように他のセクターが生物多様性を統合を推進に関わるかに関して指針を準備し、優良事例をまとめることを要請しました。

COP13の決議案として

- 締約国は、持続可能な開発に関する2030アジェンダと仙台防災枠組みを歓迎し、生物多様性を他のセクターに組み込むための政策枠組みを作ること、公的部門や民間部門も含め、第1次産業部門も巻き込んだネットワーク活動を奨励するという内容をまとめました。

- 事務局への要請事項としては、FAOとの協働、ECOSOCのもとにある持続可能な開発目標に関するハイレベル政治フォーラムでの対話に関わること、先住民地域共同の参加を継続し、主流化の観点から作業計画の更なる実施に関する選択肢を検討し、COP14の前のSBSTTAに提出すること
という文章をまとめました

3.2 条約の実施に重要な科学的、技術的ニーズ

COP13の決議案として

締約国や関連機関に対し、情報のオープンアクセスを推進するとともに、付属書(下記)に掲げるガイダンスを考慮すること、

条約事務局に対して、(i)政策支援ツールや手法へのアクセス推進のためのIPBES等との協力の継続、(ii)戦略実施を支援するツール(特に態度変容、社会マーケティング戦略、エンゲージメント技術、参加プロセスのための課題や動機を評価する手法)などに関する情報の取りまとめに向けた関連機関との協力、(iii)技術移転に関する情報提供を締約国に呼びかけること、(iv)条約の活動を支持する協働枠組みを強化する活動の作成と、愛知ターゲット12の達成に向けた締約国を支援すること、(v)COP14の前のSBSTTAに報告すること を要請する文案をまとめました。

あわせて、締約国に対して、モニタリングやアセスメント、研究のニーズを特定すること、条約や国際協力との連携についてコミュニケーションをすること、生物多様性モニタリングへの資金提供を行なうこと、研究プログラムの推進に対する国、地域、世界規模の取り組みを拡大することなどを呼びかける文章案をまとめました。

付属書 生物多様性に関するデータや情報のアクセシビリティ改善のための自発的指針

1.政策的インセンティブの推進、2.データの基準統一の推進、3.自然史関連コレクションのデジタル化への投資、4.国内の生物多様性情報ファシリティーの設立、5.生物多様性情報学における国内の能力を強化する、6.市民科学ネットワークを通じて生物多様性の観測への広い参加を促進する、7.民間部門からの情報共有を奨励する、8.データの発見、可視化、利用のための国内プラットフォームを作ること、9.新しいデータを作り出すことを優先度を与えるようなデータや情報のギャップを分析すること、10.情報創出やアクセスのための地域や世界ネットワークに参画し支援すること

の10項目が、データアクセスの改善に必要として、付属文書として整理されました。

3.3 戦略計画実施の政策の有効性を評価するツール

愛知ターゲット達成のための政策の有効性を評価することの重要性と、その情報がIPBESの地域・世界アセスメントに組み込まれることが期待されていることを考慮し、

COP13の決議案として

締約国に対して戦略計画実施のための各種政策の有効性を評価し、第6次国別報告書を通じて提出することを求めるとともに、事務局に対して、それらの情報を取りまとめ、必要に応じて、(COP13以降の?)SBSTTA、SBIの検討素材にすることを求める案をまとめました。

3.4 戦略計画の指標について

指標を様々な目的(政策決定に情報と影響を与える、愛知ターゲットのコミュニケーション、愛知ターゲットの主流化、締約国による報告、COPによる愛知ターゲットのレビュー、将来のCBDの行動計画の情報源)で活用することを確認するとともに、SDGs(持続可能な開発目標)の文脈で作られた指標も含めて将来さらに指標を検討すること、生物多様性指標パートナーシップ(BiodiversityIndicator Partnership)に対して指標に関する技術的ガイダンスを作ることと、また、指標作成に関係する諸機関に対して情報への自由なアクセシビリティを推進することを奨励しました。
事務局に対しては、愛知ターゲットの評価に関するシナジーを高めるため、SDGSに関する専門家グループ、国連砂漠化防止条約、IPBES、他の条約、IIFBなどとの連携を継続すること、指標のピアレビューを実施し、更新すること、国レベルの指標活用に関するガイダンスをBIPとの協働で作り、共有すること、を求めました。