SBSTTAの改善 IPBESとの役割分担(4月30日)
開会式は終わり、IPBESとSBSTTAの関係に関する議論に移りました。UNEP(国連環境計画)のネビルアッシュ(元IUCNのスタッフですね)さんが、パナマで開かれたIPBESに関する会合の報告を行ないました。
IPBESとは、 Intergovernmental science-policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Servicesの略で「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォームというのが日本語訳です。生物多様性版のIPCCのような機関として期待されています。
IPBESは、4月にパナマで会合が開かれて設立され(どの段階で正式な(法的な)設立とするかは要確認)、事務局がボンにおかれることが決まりました。手続きや会議体(総会、運営会議、多様な分野からなる専門家パネル)、その他事務的なことが決まったようです。
IPBESは生物多様性条約のためだけの機関ではなく、独立性を持ち、場合によってはワシントン条約や、ラムサール条約といった環境に関する多国間条約のために、科学的な知見から貢献することが予定されています。
他方で、他の条約締約国会議から直接IPBES(あるいはその運営会議ビューロ)に対して「○○の評価しろ」と何らかの要請ができるものなのかどうか、IPBESから色んな条約の締約国会議に対して(何の依頼もなく)勝手に意見を提出できるのか、その手続きを含めて、まだ決まっていません。
IPBESについて(公式サイト)。
以下、各国の発言を聞きつつ、主要な議題・論点を紹介したいと思います。
・IPBES(イプベス派と、アイピーベス派と呼び方が別れています)については、設立を歓迎する声が多数。ただし、SBSTTAが何らかの調査を「要請」できるかどうかはまだ手続き的に決まっていないので、その部分の表現をどうするかというかなり技術的な意見が結構あります。
・地球規模生物多様性概況第4版(2014年のCOP12までに作る予定)に対して、IPBESとのコラボレーションをどうやって行なうか。まだ体制が確立していない段階で、どこまでの要望をするか?
・NGOの懸念。IPBESが独立した科学的な議論を期待されているとして、社会科学的な側面(先住民地域共同体の権利とか)がおざなりにされないか、生命や地球に対する哲学のようなものが軽んじられないか、科学的な結論に対して市民の懸念が伝えられるような機会がIPBESにあるのかなど
・IIFBの発言:先住民地域共同体が有する知識、慣習的な知恵や経験の重要性がパナマのIPBESのサイドイベントでも認識された。先住民地域共同体の役割やその知恵/知識の尊重。キャパシティービルディングの活動にも参加の機会を開いてほしい。
補足解説
これまで私が参加したSBSTTAは、これをやるべきではという事務局が用意した文章が、政府として受け入れられるかという検討をし、表現を弱める(「合意する」を、「留意する」に変えたり)ことをしてきました。つまり、ある科学的調査で出てきた結論を、政府がどう捉えるべきかというのを議論する、別の言い方では、政府がCOPで受け入れ可能かをためす準備会議みたいなものでした。
もしかりに、IPBESから科学的な助言が行なわれるようになるとSBSTTAの存在意義がなくなってしまうという問題があります。日本政府他の指摘は大事で、IPBESとSBSTTAの重複をなくす、相乗効果を高める、SBSTTAとしてやるべきことを絞り込む必要を発言しました。
理想としては、自然環境などの科学的事実(例えば、海洋漁業資源の状態)が政治的意図で歪められないようにしつつ(IPBESの役割)、そのためにとるべき政策や政策分析などをする(SBSTTAの仕事)というのを基軸に、相乗的な仕方で愛知目標達成につなげると良いのではないかと思います。
報告者 (財)日本自然保護協会 IUCN-J事務局主担当 道家哲平