ポスト2020の実施のカギを握るテーマの一つ 指標

ポスト2020枠組みの検討(第1回作業部会)でよく聞かれる言葉に、「目標と一緒に指標を採択するべき」という意見があります。SBSTTA23の初日のお昼に、指標に関するサイドイベントに出席し、現状について聞いてきました。

指標サイドイベントの様子サイドイベントの様子

愛知ターゲットの20の目標が採択された時に、実は指標は採択されず、COP11の検討や、指標に関する専門家会合(AHTEG)などを重ね、いくつかの“推奨される”指標がまとまっています。しかし、その活用についてはあいまいなままです。

 

UNEP-WCCMからの指標に関する全体的なレビュー

・ポスト2020枠組みの成功のためにも、良い指標と目標のトラッキングの方法などが重要になる。
・資料については、量的で、科学ベース、アウトカムの把握、世界レベルの指標と国内指標の連動、追跡可能性、更新可能性、分割―累積可能性(Scalability)などが課題となっている。

 

ネイチャーサーブの調査

・指標の活用状況、生物多様性の豊かさや、財政的豊かさで指標の活用度が異なるのではないかなどの仮定も設定してNature Serveという団体が調査を実施。
・非常に多数の国内指標(グローバルで設定されたものの10倍以上の種類)の存在を確認
・先進国途上国に限らず戦略目標A,D,Eについては指標がない。グローバル指標が余り活用されていない、すなわち、指標に関する専門家会合(AHTEG)の作業と各国の活動がリンクしていないことが判明
・締約国が、専門家グループの指標を使いこなせていない(いくつかの目標はSMARTではないことも原因)。国内の指標とグローバルレベルの指標の専門家の連動が重要。同時に、ポスト2020枠組みでも、指標についてさらに連動を深める必要がある。
・一方、BIPのダッシュボードの活用の様子については、第6次国別報告書において、21か国中14カ国が活用している実態も見えてきた。引き続き調査を進めたい
・BIPダッシュボードの改良点:Bioclimateの指標など追加しているものがある
・GBO4の際には55の指標が活用され、IPBESグローバルアセスメントは68の指標を採用。愛知目標の54の要素のうち35%が指標が存在しない。指標の入手可能性についてギャップと傾向がある、例えば、戦略目標Eなどは少ない。現在100程度の指標の可能性などを検討。
・BIPでは、これまでの活動でいくつもの指標が存在しないというギャップを埋めてきた。

検討するべきこととしては、
・世界指標はどれだけ活用するべきか(5年に1度の評価?)、目標のトラッカーなどが必要か
・指標のステータスはどうあるべきか。SDGsのように指標が設定されて(固定されている)仕方と、CBDのように緩やかな枠組みとしての指標が存在する仕方とどちらが良いか。
・国レベル目標の指標と、世界指標との関係性
・測定可能性を確保した、目標のワーディングのありかた
定義が明確な言葉だけで目標を設定するとか、あいまいな用語をさけるとか、

このような状況に対して、ポスト2020枠組みのために、「ターゲットトラッカー(仮称)」という新しいツールを作るアイディアが紹介された。
・解決するべき課題=ポスト2020枠組みのフォローアップ、生物多様性コミットメントの追加性を担保する指標、時宜を得た情報提供の課題、報告システムの重複や無駄の解消
・ポスト2020ターゲットトラッカーの開発の提案を行っている。
・3回にわたる、Global User Panelとのウェビナーを実施して、コンセプトなどを検討。遅いインターネットでも使える、複雑で扱いにくい指標よりもシンプルなものに維持、中立性の維持や、目標との連動性の確保などが議論。
・ターゲットトラッカーは、目標の下に位置づく指標の状況を分かりやすく表示したり、国ごとの指標をみられるようにしたり、生物多様性コミットメントのトラックなどができるようにするアイディアも存在。
・スケジュールなども披露

ターゲットトラッカーの開発計画ターゲットトラッカーの開発計画

 

質疑応答

・指標を作り上げるプロセスがどうなっているのか
・戦略計画では、COP13でも指標案が議論されていた。既存の指標の活用もありうる。COP10の時は交渉で目標が何度も更新され、指標の議論ができなかった。今回はうまくいくのではないか(という楽観論もあるし)
・検討中の、ボランタリーコミットメントの追加性をどう確保するか。
・OECDでは、ターゲットと指標やその測定可能性についての事業を実施。ワークショップを2月に行い、議論する機会を得た。
・多くの国がターゲットと指標を同時並行で議論する声が上がっていたことに驚き。Headline Indicatorという名称で、主要な指標をカバーするのはどうかという意見がでた。
・SBSTTAは、指標について追加的な仕事をSBSTTA24か、3rdOEWGの前にするように指示を出すべきであると思う。

 

パネルディスカッションで出された意見

・実施の確保の優先度が高い。実施を支える指標であり、指標先行で目標が検討されてはいけない。指標が、取り組みの累積を適切に反映するものかどうかが大事。指標から、実施についての学びを得られる形、指標から、評価後に何をするべきかという情報が引き出せることが大事。

・ポスト2020枠組みについてのイニシアティブは常に「実施の加速につながるかどうか」を重視したい。指標をみて、何か次のアクションをどうすればよいかがわかることが重要。効果的な枠組み(報告も含めて)につながることが大事。ポスト2020枠組みは、外務省だけではなくて、CONABIO(生物多様性委員会)を巻き込もうとしている。市民社会やIPLCを巻き込みたい。過去の戦略計画から学びがある。目標と指標がセットで「何をするべきか」という意味が作られる。愛知目標が、ステータスだったり、プロセスだったりして、何を国別報告書で出すべきか非常に悩んだという経験。また、指標がバラバラだと各国と比べることもできないという課題がある。CBDのオンラインツールも改善が必要。Non-stake actor contributionをカバーする指標の可能性も検討してほしい

・タイミング、情報の存在が国によってバラバラ(国別報告書)。IUCNのガイドライン(保護地域カテゴリーやKBA)なども違いがあり、単純な比較も危険。協議プロセスの課題。
コミュニケーションのしやすさ、Surrogate指標も有用、広域のレポートの可能性。ASEANレポート
たくさんのネットワークやプラットフォームが存在し、それが混乱させることもある。
リポートとトラッカーと、オーバービューを知るということのフェーズの違いを理解する必要。

保護地域の管理の質や、公正な管理などは、グリーンリスト基準を作ることで解決できるのではないかと思う。よく構造化された目標の設定が、議論されている。→質的要素の把握は、難しいけれど保護地域などは進めている。

ポジティブな指標が多かったけれど、ネガティブなもの(汚染)などをトラックするものがあるだろうか。→目標のトラックが多いので、ポジティブなものが多いが、検討するべき視点だろう。

 

 国際自然保護連合日本委員会事務局長 道家哲平(日本自然保護協会)