合成生物学、GMOリスク評価と管理、塩基配列の電子情報-SBSTTA1日目

SBSTTA22の初日は、カルタヘナ議定書・名古屋議定書に関係する3分野について議論が行われました。

どの課題も分子生物学・遺伝子組み換え技術に関するもので、かつ、生物多様性条約(1992年)やカルタヘナ議定書(2001年)ができる際にあまり想定されていなかった技術の取り扱いが話題となっています。言葉の定義・議論の対象範囲の絞り込みと既存ツールとのギャップ、世界レベルで何が必要か、各国レベルで何が必要かを話し合うため、とても専門的な議論になっています。

NGOがとりわけ問題視しているのは、Gene Drive(*)という技術です。

* Gene Drive とは、特定の遺伝子の変異等の拡散を促進する技術であり、一定地域に生息する対象となる生物種集団全体の遺伝的性質を改変する潜在的能力があります。また、GeneDrive は、ゲノム編集技術の一つである CRISPR/Cas9 と組み合わさることで技術的に容易になり、その利用範囲も広がりを見せています。今後、基礎研究の他、感染症媒介生物や外来生物駆除等に関する研究を対象として、研究者が Gene Drive を利用することが予想されます。全国大学等遺伝子研究支援施設連絡協議会「Gene Driveの取り扱いに関する声明」より引用

NGOの主張としては、これまで閉じた環境下(農地も人の管理下であるという整理)で遺伝子組み換え生物を利用するときのルールや配慮事項を検討してきたカルタヘナ議定書のこれまでの仕事と比べると、この技術は大きく異なる応用を想定していることから、生物多様性条約の下での慎重な検討と規制とコミュニケーションが必要という立場で、現在の技術開発の進み方について懸念を表明しています。

NGO/ユースによるNo-gene-driveを訴えるアクション

NGO/ユースによるNo-gene-driveを訴えるアクション

SBSTTA初日には急遽国際会議場(ICAOビル)の前で、バナーアクション(紙を張り出して、NGOの主張を提案する取り組み)が行われました。

 

道家哲平(日本自然保護協会/IUCN-J事務局長)

*今回の情報収集は、環境再生保全機構地球環境基金の助成を受けて実施します。