第1回作業部会の成果

成果文書は、「第1回作業部会の結論」というタイトルで、今後の進め方に関する合意事項をまとめつつ、その中に、付属書1として「ポスト2020枠組みに関する議長テキスト(=合意文書ではないが、第1回会合における参加者の意見を反映)」を、付属書2として「ポスト2020枠組みに関する会合リスト」を組み込む形となっています。

コンタクトグループの最後に締約国から示されたロジック構造イメージ

コンタクトグループの最後に締約国から示されたロジック構造イメージ

今後の進め方では、今後続く会合リストを考慮しつつ、ポスト2020枠組みを構築していくこと、科学技術補助機関会合(SBSTTA)や条約の実施に関する補助機関(SBI)、伝統的知識の保護に関する8(J)関連作業部会と連動すること、今回会合でまとめられた付属1などをもとに、第2回ポスト2020作業部会の6週間前にゼロドラフトの作成を共同議長と事務局に求めることとなりました。ゼロドラフトの前に、11月24日に行われる8(J)やSBSTTAの前に非公式な説明(Informal Briefing)を議長から行うことも決まりました。

また、ポスト2020の構造について、9月15日を締め切りとした、パブリックコメントの機会を作るよう事務局長に要請しました。

テーマ別協議については、テーマ設定の仕方が、保全に寄っており、途上国の関心である持続可能な利用やABSをカバーしていないという声が上がり、お昼に急遽、フレンズオフチェア会合が開かれる事態となりました。最終的には、現在のポスト2020関連会合リストを暫定のものと明記し、テーマ別会合のコンセプトや役割等をCBDの目的にバランスよくカバーするように、COPビューロと共に、OEWG議長と事務局に対して、見直していくよう求めました。

また当初意見が分かれたのですが、11月のSBSTTAや8(J)、主流化に関する助言グループ会合のそれぞれに求める検討事項も整理しました。

Annex1(付属文書1)は、Non-paper 1 version 2として提出された文書です。たとえて言うと、書類を書く際のプロットのようなもので、「目次と各章の文書を書くときに、表現すべきこと、書く際に気を付けること」という指針の役割のようなものと考えられます。今後のポスト2020の作られ方としては、この、目次とプロットを意識しつつ、文章案の作成や、テーマ別協議やワークショップが開催されます。

その内容(後述)は、プロットとしては、特に後半に行くほど整理されていないように見えますが、その理由の一つは、ポスト2020枠組みの論理的整合性を重視したためです。

今後、各種会合の成果(合意事項ではなく、アイディアとして)を、ターゲットや実施メカニズムといった各章の具体的な文言や内容へと組み込んだ“ゼロドラフト”が作成され、第2回・第3回と続く、ポスト2020作業部会で「交渉」されていきます。

ポスト2020枠組みの要素(付属1)概要

以下は付属1を仮訳しながらまとめたものです。(*)がついている要素は、とりわけ様々な意見があった要素です。

1. 戦略計画の背景と対象の中身

生物多様性と生態系サービスの重要性、現状と人への影響、生物多様性が直面する課題に意欲的取り組む必要性、生物多様性の損失の直接要因と背景要因、根本的変化、変化の理論(*)、原則(*)、実施の課題、IPBES等の結果

2.2050年ビジョン
2050年ビジョンの妥当性、2050年ビジョンと続く文章とが連動すること、2050年ビジョンに向けた2030年を超えたタイムフレーム、2050年ビジョンに至る要素(*)

3.2030ミッション、大目標(Apex Goals)およびマイルストーン

2030年の生物多様性の状態に関する表明、望ましい変化に関するAction orientedな状態、マイルストーン(*)、条約の3つの目的と議定書、2050年ビジョンに書かれている要素に基づいて設定(*)、生物多様性の望ましい状態、持続可能な利用、持続可能な消費と生産(*)、持続可能な開発目標(*)、生物多様性の損失に取り組む、気候変動への効果的な適応、「シンプルでコミュニケーションしやすく、行動可能で、測定可能という表現」、(D)PSIRモデル

4.ゴール、ターゲット、サブターゲット、指標(*)

<ゴールに影響与える要素>
条約の3つの目的、議定書、2050年ビジョンに記載されている要素に基づいたゴールなど、IPBESグローバルアセスメントに記載された5つの生物多様性の損失要因(*)、IPBESグローバルアセスメントに記載された背景要因(*)、実施の促進や条件整備(*)、GBO5の結果、実施

<ターゲットに影響与える要素>
愛知ターゲットでカバーしているテーマ(単純化も要検討)、SMARTなターゲット、他の環境条約やプロセスと一貫し、まとまりのある形で、互換性があり、相互支援となるターゲット、他のプロセスと重複しないターゲット、GBO5の成果を踏まえる

<サブターゲットに影響与える要素(*)>
ターゲットのより具体的な要素に取り組むもの

<指標に影響与える要素>
・COP決定で特定された指標や、SDGs、IPBESアセスメントで用いられた指標、および生物多様性指標パートナーシップ(BIP)で特定された指標、その他の関連プロセスで特定された指標。
・指標は、ポスト2020枠組みのターゲットと同時に特定されるべき。また、指標やベースラインは必要な修正のために、ポスト2020枠組み合意後にレビューする旨の記述

5.実施の手段と条件整備(*)

資源動員、資金の提供、資金メカニズム、能力養成、伝統的知識や慣習的持続可能な利用、科学や教訓、科学的技術的協力や技術移転、知識創出・管理・情報共有、コミュニケーションと普及啓発、他の環境協定との相乗効果の促進、先住民地域共同体等のステークホルダーのさらなる参画、科学に基づく標準化された手法・自然資本会計(*)・自然の価値に関する全体的アプローチ、環境ガバナンスの強化や政策プロセス(*)、生態系に基づく管理、生物多様性国家戦略および行動計画、根本的な変革のレバー

6.横断的課題と横断的アプローチ(*)

主流化、ジェンダー平等・女性の支援(Empowerment)・ジェンダー課題に応答するアプローチ(Gender responsive Approach)、先住民地域共同体、権利ベースアプローチ、パートナーシップ、世代間公平(Intergenerational equity)、連結性(Connectivity)

7.透明性のある実施、モニタリング、報告メカニズム

主要なメカニズムとしての生物多様性国家戦略の活用と強化、生物多様性国家戦略に関するガイダンスの強化、国別報告書の活用と仕組みの強化、生物多様性国家戦略と国別報告書の互換性や質の改善、他の環境条約の報告プロセスとの一貫性と相乗効果の改善、他の環境条約の教訓を活かす、共通の報告枠組みや報告システムのモジュール化に向けた条約間連携の改善、モニタリング、ボランタリーコミットメント(*)、遵守メカニズムと透明性(*)、「測定・報告・レビュー・確認の仕組み、透明性のある地球規模での生物多様性の取り組みの累積(Global Stock Take)、反復的で同調的で調整されたレビュープロセス、ラチェットメカニズム(後戻りしない仕組み)(*)」、ピアレビューなどの既存の仕組み、ガイダンス

8.アウトリーチ、普及啓発、理解の向上

一貫性のある、包括的で、革新的なGBFのコミュニケーション戦略、他の国際プロセスや戦略と整合をとるためのポスト2020枠組みに関する普及啓発

道家哲平(日本自然保護協会/IUCN-J事務局長)

*今回の情報収集は、環境再生保全機構地球環境基金の助成を受けて実施します。