SBSTTA23初日の進行

第23回科学技術助言補助機関会合が2019年11月25日、カナダ・モントリオールのICAOを会場に始まりました。

本会合(Plenary)は、COP14の際に、SBSTTA議長に選出されたメキシコのヘジキオ氏が進行しました。議題の解説や採択、運営に関する事項(例えば、ラヴィ―(モロッコ)氏が、書記に任命。)などの議題がテンポよく進みました。

Elizabeth Maruma Mrema(CBD暫定事務局長)の開会あいさつでは、オーストリア、カナダ、ドイツ、NZ、スイス、スウェーデン、UK、EUに対し、多様な参加を可能とする資金援助に感謝の言葉が述べられました。これらの支援を受け、登録ベースで、118カ国かおよそ500名が参加予定であることが報告されました。

エリザベス氏は、「IPBESの成果などを踏まえると、生物多様性にとっても生物多様性条約にとっても重要な機会となっている。私たちが、経済、文化、暮らし、健康、よりよい生活に必要な自然の危機と、同時に、その解決策も分かっている」として、様々な会合からのインプットを踏まえ、建設的な議論への期待が述べられました。

生物多様性条約事務局からは、今回会合から、参加者向けバッジもプラスチックから紙に変更したり、会場で使えるプリンターのインクカートリッジ、ケータリング会社へのリユース可能なお皿などの変更を行ったことが報告されました。そのうえで、SBSTTA参加者にも、フライヤーなども極力紙を減らしてほしいなどの環境配慮の取組について紹介しました。

紙製の参加者バッジ

紙製の参加者バッジ

議題3 ポスト2020枠組みへの科学的技術的インプット

この議題は、様々な報告書のインプットが行われ、その後GBO5中心に意見表明が行われました。

IPBESアセスメントからのインプット

・IPBESが5月に発表したグローバルアセスメントは、50年間の推移や状況をレビューした。
・そこでは貿易や世界経済の劇的な変化、75%の鳥類の減少、66%の海洋地域が累積的な影響を受けていること、85%以上の湿地が失われたことなどが明らかになった。
・生態系、生物種の個体群サイズ、あらゆる数値が劣化の状況で、18の自然がもたらすもの(NCP:Nature Contribution to People)を見ると3つの物的NCP以外は、劣化。これらの劣化は不平等な形で広がっている。
・生物多様性に関する取組でいえば、普及啓発、認証、管理、生物多様性国家戦略(NBSAP)、名古屋議定書、農業生物多様性再生、モニタリング、外来種に進んだ点もあるが、同時に課題とチャレンジもまとめられた。この規模の評価では初めて、先住民地域共同体(IPLC:Indigenous people and Local community)の貢献の大きさも明らかにされ、IPLCの貢献の認識が重要である。
・可能性のあるシナリオとして、経済発展シナリオ(BaU)、地域競争、地球規模の持続可能性の3つのシナリオを描いた。今のままでは80%のSDGsが失敗する。いずれのシナリオでも、土地利用が非常に大きな影響をもつ。根源的な変化が必要。短期でも長期でも、地域でも地球規模でも確固とした行動とコミットメントが必要。
・5つのメインドライバーへの理解が重要。地域によってその影響や作用の仕方が異なることを理解する必要→社会的な価値が背景にあるため。
・保護地域やICCA。→保護地域の限界もIPBESレポートで言及。これまでの保護地域の取組をベースに発展させる必要がある。インフラの計画や実施、生息域内外保全。→ランドスケープレベルの取り組みが必要。多様な汚染への対処、気候変動の検討。
・これらには、セクター横断型の取り組みなどが必要。IPBESでは、これの課題についての持続可能な筋道なども検討している。
・同時に、背景要因へのアプローチが重要。環境規律や価値、貿易やマーケットとのInteraction(外部性の克服やテレカップリング対策、消費財や認証、地域経済圏の強化)。政府の政策やPPI(負の補助金への対策、インフラ政策への対応、不平等)、気候変動対策などが同時並行的に実施する必要がある。

第9回トロンハイム会合からのインプット

・7月にノルウェー政府主催で開催された。400名が参加し、ポスト2020枠組みで検討するべき最新の情報共有やディスカッションなどが行われた。変革の重要性や、自然を基盤とした解決策(Nature Based Solution)の協調、インセンティブの改革、効率性や効果の拡大などを検討。
・COP10からの経験に基づく必要。生物多様性国家戦略(NBSAP)の改良の重要性なども指摘したい。

GBO5の検討状況からのインプット

・GBO3やGBO4について説明。GBO5が最終評価文書(最初のドラフトを検討中)
・IPBESのアセスメントや、第6次国別報告書、BIPからの指標に関する情報、その他の報告(植物保全レポートやローカルアウトルック)などを元に作成。
・導入(Introduction):持続可能な開発は、生物多様性を主流化すること、気候変動や市民の関心を得ることが重要。
・第2章では、各目標毎の評価を行う予定。第6次国別報告書の成果などを踏まえる予定。
多くの目標がネガティブになりそうだが、外来種のネガリスト作りや、島しょでの撲滅事例などの成功事例も紹介する計画
・第3章では、生物多様性の損失カーブを回復に向けて押し上げる(ベンディングカーブ)ための選択肢を紹介する予定。持続可能な未来のための道筋を描く予定。保全や再生の必要、気候変動、直接的な影響への対策の重要性、食料やエネルギーや淡水に関する変革の重要性などを取り組み、その他、必要なTransitionの特徴やその課題などを整理する予定。
・例えば、持続可能な漁業では違法漁獲への対策の事例を紹介したり、そのほか、持続可能な農業(29%の農家が持続可能な農業に向けて取り組み始めていること)などもハイライトする予定。現在、1月6日までのピアレビュー中。

ローカルバイオダイバーシティアウトルック2版からのインプット

・IIFBによるLBOの発表@COP13が行われた。UK,フィンランド、Swebio、クリステンセン財団などの支援を受けて、LBO2の準備を行っている。UNDBの間の進展を評価。
・また、戦略計画の関連目標毎にレビューを実施。戦略目標毎にポスト2020に向けた示唆などをまとめている。先住民地域共同体の多様な知識や経験を組み込むための→ 先住民地域共同体と生物多様性の関係性を具体的に分かりやすくしている情報となっている。
・2030アジェンダやポスト2020に向けた示唆や、条件整備などについてまとめられている。最後に、人と自然の共生する社会に向けた移行(Transition)の在り方について結論がまとめられている。
・現在LBO2のドラフトが公開されていて、コメントとピアレビューを行い、SBSTTA24にGBO5と同時に公開予定である。

植物保全戦略(GSPC:Global Strategy for Plant Conservation)報告からのインプット

・愛知ターゲットにも基づきながら、5つの目標のもと16のターゲットを設定して取り組みが展開された。ブラジル、EU、中国、インドネシア等が植物保全戦略を策定し、植物保全戦略も組み込んだNBSAPを作った国もある。16の目標毎に実施状況をダッシュボードなどで評価している。目標達成のために、あたらしいツールなどもできているGTA。植物レッドリストのためのネットワークやアライアンスなども出来上がった。
・成果:SMARTな目標設定の重要性、データの入手可能性、愛知目標との連動、キャパビルも実施に重要。
・GSPCでは、時期目標設定を検討中で、16-18の目標設定 plant2020.net に掲載中。中国が植物保全戦略を立案したことがアピールされた。

GO5ワークショップの成果の共有

・11月23日、SBSTTAに先駆けて開催されたGBO5ワークショップの紹介も行われた。
・IPBESの著者のインプットやGBO5の現状、LBO2、植物戦略報告などのインプットを受け、議論を行った。エビデンスベースのポスト2020のための議論を行った。
・変革の具体的な形や、将来の方向性、気候変動へのインプットなどを議論した。プレゼンテーションもオンラインで公開予定。

 

数多くのインプットが行われた後、各国・各団体からコメントが行われました。まず、GO5関連のコメントが行われ(午後5時くらいまで続き)、その後、ポスト2020枠組みに反映させるべき要素のコメントが行われました。

GBO5については、多くの国が、変革(Transformative Change)の重要性、IPBESが特定した生物多様性の損失の5つのドライバーをGBO5でも強調することが重要であるとしつつ、様々な視点でのアイディアや強調などがなされました。例えば、SDGsの持続可能な都市とポスト愛知ターゲットとの連動、コミュニケーション、国別レポートの詳細な分析や国別レポートが集まらない場合はその原因を含めた分析、企業などの産業との関係性、キャパビルの必要性、ランドスケープアプローチの重要性、多様な主体の参加、変革を引き出すポスト戦略の重要性などがありました。

オブザーバーからは、ジェンダー(参画の確保や能力養成、)、ユース(人権アプローチの重要性)、NGO(産業の課題や、大規模農業産業の課題、種子の多様性)、Biodiversity International(愛知目標7関連の表現を広げる必要。食料安全保障や栄養源の持続性確保など)などの視点での発言がありました。

議題3のうちの、ポスト2020枠組みへの示唆は、二日目午前とまとめて明日報告したいと思います。

 

国際自然保護連合日本委員会事務局長 道家哲平(日本自然保護協会)